第22話 王都からの使者、怪物と相対す
王都からの使者が到着したのは、敵軍一万五千を結界に閉じ込めたという報告が正式に王宮へ届いてから、わずか五日後のことだった。
金と白を基調とした王家直属の馬車。
護衛は近衛騎士十名。随行する魔導師が三名。
それだけで、この訪問が「確認」ではなく「判断」を目的としていることは明白だった。
辺境伯フォニアジークは謁見の間で静かに息を吐く。
「……来たか」
妻サリーシャは穏やかな表情を保ちながらも、指先に力が入っていた。
「ジャックを呼ぶのね」
「ああ。もう隠す段階ではない」
やがて扉が開き、金髪の少年が入ってくる。
まだ十歳。
細身で、どこにでもいそうな少年。
だが、その碧眼には揺らぎがなかった。
「ジャック・フォン・キルヒアイス、参りました」
その瞬間、王都監察官レオニス・ヴァルハルトは言葉を失った。
――魔力を感じない。
否、違う。
感じ取れないほど、完全に制御されている。
「……辺境伯。この少年が?」
「我が三男、ジャックだ」
短い返答。
重い沈黙。
ジャックは首を傾げた。
「問題って、あの結界のことですか?」
随行の魔導師が声を荒げる。
「少年! 一万五千の兵を単独で封じたという報告が事実だと言うのか!」
「数は正確に数えてませんけど……そのくらいでした」
魔導師が絶句する。
レオニスは慎重に問いかけた。
「その結界は、今も維持されているのか?」
「はい。逃げられませんし、外部干渉も遮断してます。
酸素と水は最低限に調整してますけど」
それは戦闘ではない。
完全な管理だった。
レオニスは悟る。
(王都が恐れているのは辺境伯ではない。この少年だ)
「……ジャック殿。陛下はあなたにお会いしたがっている」
その言葉に両親の表情が強張る。
だがジャックはあっさり言った。
「今すぐは無理ですね」
「理由を聞いても?」
「薬の研究が途中ですし、
結界の中の人たち、放っておくと死にますから」
沈黙。
王都の理屈も、政治も、この少年の前では後回しだった。
レオニスは深く息を吐く。
(なるほど……)
この少年は王国の希望でも切り札でもない。
ただ、自分の理屈で世界を動かす存在だ。
フォニアジークは胸中で誓った。
――この子を、政治の道具にはさせぬ。
辺境伯として。
そして、父として。
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