表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後悔ばかりの男の逆転人生  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/181

167話 屋上での再会

屋上の扉は、

思っていたよりも静かに開いた。

金属音はほとんどなく、

ただ風が一瞬、流れを変えただけだった。

涼香は柵のそばに立っていた。

スマートフォンを握ったまま、

画面は暗い。

誰かと連絡を取っていたわけでも、

待ち合わせをしていたわけでもない。

――ただ、

ここに来るべきだと分かっていた。

理由は説明できない。

確信とも違う。

それでも、

胸の奥が「来る」と告げていた。

そして。

背後で、

足音が止まった。

振り返らなくても分かる。

間違えようがない。

視線が重なる

ゆっくりと、

涼香は振り返る。

そこにいたのは、

確かにジャックだった。

病室で見た姿よりも、

少しだけ痩せている。

顔色はまだ万全ではない。

けれど――

目が、完全に戻っている。

あの目だ。

世界を一人で背負うと決めたときの目。

そして、

すべてを終えたあとの目。

涼香の喉が、小さく鳴った。

「……」

名前を呼ぼうとして、

声が出ない。

ジャックも、

何も言わない。

数メートルの距離。

それ以上、

近づかない。

それで十分だった。

風の中で

風が、

二人の間を通り抜ける。

遠くでヘリの音。

下では、復旧作業の機械音。

世界は動いている。

だが、

この屋上だけは、

時間が少し遅れているようだった。

涼香の視線が、

無意識にジャックの胸元へ向かう。

――生きている。

ちゃんと、

ここに立っている。

それだけで、

胸がいっぱいになる。

「……無茶、した顔」

ようやく、

それだけ言えた。

責める言葉でも、

冗談でもない。

ただの、

確認。

ジャックは小さく息を吐いた。

「……そう見える?」

「見える」

即答だった。

言わなくても分かること

涼香は一歩、近づく。

ジャックも、

半歩だけ前に出る。

それ以上は、

詰めない。

触れない距離。

それが、

今の二人にとって必要な間隔だった。

「……」

涼香は、

視線を逸らさずに言う。

「気づいてるでしょ」

疑問形ではない。

ジャックは、

小さく頷いた。

「……うん」

それだけ。

それ以上は、

言わない。

エリクサーという言葉も、

万能薬という説明も、

必要ない。

彼は、

体が覚えている。

戻り方が、

あまりにも完璧すぎることを。

代償が、

不自然なほど消えていることを。

そして何より――

彼女が、

それを使える立場にあったことを。

涼香の表情

涼香は、

少しだけ困ったように笑った。

「……怒られると思った」

「怒ってない」

即答だった。

「でも……」

言葉を選ぶように、

一瞬だけ黙る。

「使わせたくなかった」

涼香の指先が、

わずかに震える。

「……それでも」

そこで、

言葉が詰まった。

声が、

かすれる。

「……いなくなる方が、怖かった」

それだけだった。

理屈も、

正義も、

条件もない。

ただの本音。

ジャックの返答

ジャックは、

ゆっくりと距離を詰めた。

今度は、

一歩。

触れられる距離。

それでも、

触れない。

「……ありがとう」

小さな声。

だが、

はっきりと届く。

「生きてる」

それが、

何よりの証明だった。

涼香の目に、

ようやく涙が滲む。

落ちない。

溢れない。

ただ、

そこにある。

同じ空を見上げる

二人は並んで、

空を見上げた。

雲が流れている。

昨日と同じ空。

でも、

意味はまるで違う。

「……全部、終わった?」

涼香が、

ぽつりと聞く。

ジャックは、

少し考えてから答えた。

「終わったことと、

始まったことがある」

「……そう」

涼香は、

それ以上聞かない。

聞かなくても、

分かっている。

もう、

元の“何も知らない日常”には戻れない。

それでも。

今、

ここに並んで立っている。

それだけで、

十分だった。

屋上の沈黙

風が、

また吹いた。

今度は、

少し優しい風。

世界はまだ不安定で、

問題は山ほどある。

けれど――

この再会は、

確かに“救われた後”の時間だった。

ジャックは、

心の中で一つだけ思う。

――もう、

一人ではやらない。

その決意は、

言葉にしなくても、

きっと彼女には伝わっている。

後書きという名のお願い

下の★マークのタップとブックマークをお願いします。

今後の活動の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ