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157話 運命の日・発生直前
短めです。
音が、消えていた。
風も、遠くの車の走行音も、官邸の地下を満たしていたはずの空調音さえ、どこかで切り取られたように感じられる。
時計の秒針だけが、やけに大きく進む。
一秒。
また一秒。
誰も喋らない。
官邸という「国家の心臓部」は、呼吸を止めた生き物のように沈黙していた。
ジャックは立っていた。
モニターに映る日本列島を見ているが、視線は焦点を結んでいない。
すでに知っている。
予測ではない。
確信だ。
――来る。
家族のことは、もう思い出さない。
避難は完了している。
連絡も遮断した。
ここに立つと決めた時点で、個人としての時間は終わっている。
首相が小さく息を吸う音がした。
誰かが唾を飲み込む。
それすら、やけに大きく響く。
地面の奥深くで、
巨大な何かが、身じろぎをした。
警報は、まだ鳴らない。
だが――
ジャックの中で、すべてのカウントはゼロを指していた。
その瞬間を、
世界はまだ知らない
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