17話 初任務――Fランクとは思えない結果
冒険者登録を終えた翌日。
俺は冒険者ギルドの掲示板の前に立っていた。
並んでいる依頼は、どれも地味なものばかりだ。
・薬草採取
・倉庫の害獣駆除
・街道沿いの巡回補助
いかにもFランク向け、という内容。
(まずは無難にいこう)
俺が選んだのは
「辺境伯領外縁部・薬草採取」。
危険度は低、単独行動可。
――表向きは、だが。
森に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
辺境伯領の森は浅瀬ですら油断できない。
それは、子供の俺でもわかる。
探知を展開しながら、指定された薬草を次々と回収していく。
(この辺で終わりかな)
そう思った、その時だった。
――ズズ……。
地面を擦るような音。
探知に反応が走る。
数、三。
距離、近い。
(……害獣じゃないな)
姿を現したのは、
Eランク以上とされる魔獣――フォレストウルフ。
しかも群れ。
「依頼内容、間違ってない?」
小さく呟きながらも、頭は冷えていた。
逃げることもできる。
だが――
(実戦確認には、ちょうどいい)
俺は一歩、前に出た。
魔力を流す。
使うのは抑えた魔法。
空間操作・簡易圧縮。
狼の足元の空間が、わずかに歪む。
ガンッ!
見えない壁に叩きつけられたように、
フォレストウルフが地面に伏した。
残り二体。
間合いに入る前に――
空間断裂・低出力。
風も音もなく、
魔獣の首元に細い線が走る。
次の瞬間、二体は同時に崩れ落ちた。
静寂。
(……やりすぎたか?)
周囲を確認し、戦闘痕を最小限に整える。
魔石と素材を回収し、薬草も揃え、そのままギルドへ戻った。
「お疲れさま――って、早くない?」
受付嬢が訝しげに言う。
素材袋を確認した瞬間、彼女の表情が固まった。
「……これ、フォレストウルフの牙?」
「三体分」
「……は?」
周囲の冒険者たちの視線が、一斉にこちらへ向く。
「Fランクの依頼よ?」
「出会ったから」
簡潔に答えると、彼女は頭を抱えた。
結果。
・薬草:規定数以上
・追加討伐:Eランク魔獣×3
・負傷:なし
依頼完遂。
だが――
「これは……上に報告します」
受付嬢は、はっきりそう言った。
(あー……目、つけられたな)
俺は内心で苦笑する。
Fランク。
その肩書きは、もう形だけになりつつあった。
――静かに、確実に。
俺の周囲で、世界が動き始めている。




