表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後悔ばかりの男の逆転人生  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/181

156話 運命の日・前夜

― 官邸会見、首相と共に ―

官邸の会見場は、異様な静けさに包まれていた。

昼の会見とは違い、ざわめきはない。

あるのは、覚悟を測るような沈黙だけだった。

首相が一歩前に出る。

「国民の皆さん。

明日は、その日です。」

短い言葉だったが、会場の空気が一段重くなる。

「明日から、飛行機、船舶、漁船――

すべての操業・運航を禁止します。

避難は、もうお済みでしょうか」

首相は原稿から目を離し、カメラを正面から見据えた。

「政府は、この一か月、

プライドや前例にとらわれず、

国民を一人でも多く助けるため、

できる限りの対応をしてきました」

防災、警察、消防、自衛隊、自治体。

すべてが総動員された事実を、

淡々と、しかし誇張なく語る。

「この未曾有の災害に対し、

政府として出し得る手は、

すべて出し尽くしたと考えています」

そして、首相は一歩下がった。

その瞬間、

会見の重心が切り替わる。

ジャックが前に出る。

「後は――

私の出番です」

声は大きくない。

だが、揺れなかった。

「地震の発生直後から、

津波が発生します」

会場に、息を呑む音が広がる。

「その津波は、防いでみせます。

ですが――」

一拍、間を置く。

「避難していない方が、

もし身近にいたら。

警察関係者、防衛省、

各関係機関の皆さんに、

声をかけていただくしかありません」

自分一人では、救えない命がある。

それを、はっきりと認めた言葉だった。

「もし――

明日、地震が来なければ」

ジャックは一切、視線を逸らさない。

「私の個人資産は、

すべて国に差し出します」

記者席がざわめく。

「そして、

国家騒乱罪、

もしくはそれに準ずる裁きを受けるでしょう」

それは脅しでも、芝居でもなかった。

「覚悟は、できています」

静かに、断言する。

「しかし――

必ず、地震は来ます」

再び、首相を見る。

「首相。

最後のお願いを、

国民にお願いします」

首相は深く一度、うなずいた。

首相の最後の言葉

「国民の皆さん」

声には、疲労と、それ以上の決意が滲んでいた。

「どうか、

パニックにならないでください」

「誰かを押しのける行動は、

誰も救いません」

「冷静に。

静かに。

互いに声を掛け合い、

行動してください」

「政府は、

最後の最後まで、

皆さんと共にあります」

一拍置いて、締めくくる。

「どうか――

命を最優先に」

カメラの赤いランプが消える。

運命の日まで、

残された時間は、あと数時間。

だがこの夜、

日本中が初めて、

同じ方向を向いて静かに息を整えていた。

後書きという名のお願い

下の★マークのタップとブックマークをお願いします。

今後の活動の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ