150話 緊急記者会見
午後12時15分。
官邸内、緊急記者会見室は既に報道陣で埋まっていた。昼休み時間帯に合わせたため、テレビ局のカメラも、ネット中継班もすぐに対応できる体制だ。職員たちは慌ただしく資料をまとめ、モニターをチェックする。
首相は演壇に立ち、静かに深呼吸する。
「皆様、本日は緊急の会見にご参加いただき、ありがとうございます。
この時間帯に設定したのは、全国の皆様に確実に情報を届けるためです。
今から説明する内容は、極めて重大であり、私たち政府として全力で対応してまいります」
会見室の空気は張り詰めている。
記者たちのスマホが一斉に構えられ、メモ帳に手が走る。
閣僚たちは、首相の横で資料を確認しながら、小声で意見を交わす。
首相は説明を続ける。
「政府は、6月24日午後13時40分に関東圏で甚大な被害をもたらす地震が発生する可能性があるとの情報を受けました。
避難先は着々と確保されており、非常食の増産、各都道府県での仮設住宅準備、避難所の整備を指示済みです。
経済活動への影響は避けられませんが、生活の維持に関する支援策も講じております」
閣僚席では、小声のやり取りが交わされる。
「予測は確実なのか?」
「経済的影響はどう評価するか…」
「放送でパニックが起きないか」
首相は少し間を置き、資料を指し示す。
「命を守ることが最優先です。皆様には冷静な行動をお願いしたい」
その言葉が終わるや否や、会見場の扉が開く。
入ってきたのは、ジャック。若い青年。普段通りの服装だが、背筋は伸び、目線は鋭い。
会場の空気が一瞬凍る。
記者たちは目を丸くし、カメラのフラッシュが瞬く。
官邸職員も、首相も、息を呑む。
ジャックは演壇に向かい、落ち着いた足取りで立つ。
声は穏やかだが、言葉の重みは誰もが感じ取る。
「皆さん、私はジャックです」
会場のざわめきがわずかに止む。
「6月24日午後13時40分、関東圏に甚大な被害をもたらす地震が発生します。
これからお見せする映像は、作り物ではありません。現実です。
映像には、家族や本人が流される場面も含まれます。ショッキングな内容になるかもしれません」
報道陣の間に緊張が走る。
首相は横で資料を握り締める。
ジャックは続ける。
「私はその人々と個人的な接点はありません。
しかし、命を守るために、この情報をお伝えします。
会見が終わり次第、関東圏内の方々に直接念話で呼びかけます」
記者たちはスマホを握り締め、ざわめきが増す。
首相はジャックの横で小さくうなずく。
「…冷静に、行動してくれ」
ジャックはカメラを見つめ、視線を外さない。
「映像には、地震の揺れ、建物の崩壊、津波の到来が含まれています。
津波に関しては防ぐ手段があります。しかし、事前の準備が必要です。
念話によって関東圏内の人々に直接呼びかけます」
一瞬の沈黙のあと、会場中に重い緊張が広がる。
ジャックの声は淡々としているが、聴く者すべてが、その強い意志を感じ取る。
「行動するかどうかは、まだ選択できます。命を失ってからでは取り返しがつきません」
報道陣の一人が息を漏らす。
「これは…現実なのか…」
ジャックの視線は揺らがない。
声は冷静だが、その背後には「命を救う」という揺るぎない決意が滲んでいた。
首相は演壇横で、官邸スタッフは背筋を伸ばして、全国に届く放送に集中する。
時間は迫る。6月24日午後13時40分――その瞬間まで、刻一刻と残されている。
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