149話 会見準備が進む中での官邸内の焦燥
官邸内、夜。
緊急記者会見の準備が進む一方で、地下の作戦室は焦燥と緊張で満ちていた。
「時間は押している。映像の最終確認は完了か?」
情報班長が声を上げる。
「はい、首相用の資料、ジャック登場時の映像、念話での補足指示もすべて準備済みです」
ただ、その映像は一目見ただけで体に重くのしかかる。
本人が映る人々、災害の現場、そして予想される大津波。
誰もが、ショッキングであることを理解していた。
「飛行機、船舶、漁船への通達は?」
防災担当が答える。
「6月23日までは通常運航ですが、それ以降は結界を張る予定です。それまでに移動を済ませるよう事前に呼びかけます」
「了解。間に合うか?」
「可能です。官邸、各都道府県、航空会社、海運関係にはすでに周知済みです」
会見準備の手は休まらない。
全局が同時に映像を流すため、カメラや照明の微調整、ネット配信班のチェックも並行で行われる。
首相会見の段取り、ジャック登場のタイミング、映像再生の秒単位調整――すべてが緻密に組まれていた。
閣僚たちはそれぞれの思惑を胸に秘める。
「国民のパニックは最小限に抑えるべき」
「しかし、命を救うためには正確に伝えるしかない」
意見が交錯するが、結論はひとつ。
“時間が迫っている”
首相は地下の会議室で資料を見直しながら呟いた。
「全ての準備は整った。あとは実行するのみだ」
ジャックは別室で、映像の最終確認を終えた。
「これなら防げる」
彼の口元は固く引き結ばれている。
だが、映像に映る人々の姿を思えば、安堵の影も一瞬で消える。
残り数時間。
会見開始までは、官邸内での調整、各省庁との最終確認、報道関係者との段取り、念話のタイミング。
全てが一度でも狂えば、被害は最小限に収まらない。
「この国民に、まだ選択肢はある」
首相が静かに言った。
「しかし、時間は刻一刻と迫る」
夜明け前、官邸の空気は異様な緊張に包まれる。
誰も寝てはいない。
全ての決断は、今夜から明日、つまり6月24日午後13時40分にかけての短い時間に集約される。
外の街は、まだ眠っている。
誰も、明日起こるかもしれないことを知らない。
しかし官邸の中では、命を守るための時計が無慈悲に刻まれていた。
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