131話 夜、涼香の独り思考
ジャックが深い眠りに落ちた後、部屋の灯りを落とし、涼香はベッドの端に腰掛けた。
窓の外には、街の明かりが静かに瞬いている。
心の中で、自然と考えが巡る。
「ジャックは……本当にお人好しすぎる」
命の瀬戸際にいる人を見れば、きっと手を差し伸べてしまう。
それは、彼の優しさであり、使命感であり――
でも、あまりに無制限すぎる行動は、いつか危険にも繋がる。
涼香はそっと手を握る。
「私たちにできることは何か、ある程度の線引きが必要」
誰を救うか、どう助けるか――
ジャックに全てを任せっぱなしでは、世界の秩序も、二人の生活も、守れない。
彼の眠る顔をそっと見下ろす。
「明日になったら、話そう……でも、責めるんじゃない。二人で決めるんだ」
心の中で静かに決意を固める涼香。
夜は深く、静寂が二人の部屋を包んでいた。
頭の中で、未来の“誰かを助けるための線引き”が少しずつ形を取り始める――
翌晩、ジャックはリビングのソファに座っていた。
涼香は静かに隣に腰を下ろす。
日中は仕事で疲れているはずなのに、ジャックは眠そうな目を開け、涼香の様子を気にかける。
「……何か考えてるね?」
涼香の言葉に、ジャックは微笑むが、すぐに真剣な表情に切り替える。
「君の顔を見ると、察せるんだ」
涼香は深呼吸し、意を決して話し始める。
「ジャック、あなたの優しさは知ってる。
でも、命の瀬戸際にいる人を無制限に助けるのは、危険すぎる。
だから、ある程度の線引きが必要なの」
ジャックは頷く。
「うん、わかってる。制限は必要だ。でも、どうする?」
涼香は紙にペンを走らせるように、頭の中で整理する。
「まず……命の危険度を優先順位にする。
急を要する小児や若年性の重病は最優先。
誰にもバレないこと。それが絶対条件」
ジャックは微笑む。
「全部守るよ。僕たちだけの秘密だ」
「でも、もし僕が迷ったら?」
涼香は手を握る。
「その時は……私に必ず報告すること。
どんな状況だったのか、どんな子なのか、全部。
それで一緒に判断する」
ジャックは深く頷き、手を重ねる。
「わかった。僕は、君の判断を信じる」
二人の間に、静かな合意が生まれる。
世界には何も残さず、命だけを救う。
それは、誰も知らない二人だけのルール――
夜の静寂が、二人の決意を包み込んだ。
それは、ジャックと涼香だけの秘密のルールとなるはずだった。
後書きという名のお願い
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