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後悔ばかりの男の逆転人生  作者: れんれん


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111話 ウィンディーネが称号を聞いて微笑む

夕暮れ、領内の清流。

昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、水面は茜色の空を映して揺れていた。

涼香は川辺に腰を下ろし、そっと手を水に浸していた。

冷たすぎず、柔らかな感触。

この世界に来てから、水に触れるたびに感じる“応答”が、今も確かにあった。

「……生活魔法士、か」

昼に呼ばれた称号を、まだ少し照れくさそうに口にする。

そのとき、川の流れがふっと止まった。

正確には、止まったように見えた。

水面が鏡のように静まり、淡い青の光が立ち上る。

次の瞬間、水の中から優雅に現れたのは――

水の妖精王・ウィンディーネだった。

「ふふ……面白い名をもらったようだな、涼香」

涼香は驚きながらも、すぐに立ち上がり一礼する。

「ウィンディーネ様……」

ウィンディーネは首を横に振り、穏やかに微笑んだ。

「堅苦しいのはよせ。

今日は、礼を言いに来ただけだ」

「……礼、ですか?」

ウィンディーネは川面を指でなぞる。

水が小さく波打ち、霧となって漂う。

「“リフレッシュ”……良い魔法だ。

水を“命令”せず、役割を与え、丁寧に使っている」

涼香は少し戸惑いながら言う。

「戦いの魔法じゃないので……」

「だから良い」

ウィンディーネは即座に言い切った。

「水は、洗い、癒し、巡らせるもの。

破壊のためだけに使われるのは、本来の姿ではない」

彼女は、涼香をまっすぐ見つめる。

「生活魔法士――その称号、私は気に入った」

涼香の胸が、きゅっと温かくなる。

「……本当ですか?」

「本当だ」

ウィンディーネは楽しそうに笑った。

「神々や精霊はな、英雄よりも、

“毎日を続けさせる者”を高く評価する」

水の粒子が集まり、涼香の周囲をやさしく包む。

冷たさはなく、心が落ち着く感覚だけが残る。

「私は、お前を

水の恵みを正しく編む者として認めよう」

それは宣言ではなく、自然な了承だった。

「今後、お前が構築する生活魔法は、

水属性において“暴走”しにくくなる。

使用者にも、周囲にも、害を及ぼしにくい補正がかかる」

涼香は目を見開く。

「そんな……そこまで……」

「当然だ」

ウィンディーネは肩をすくめる。

「水を大切にする者を、水が見捨てるわけがない」

そのとき、少し離れた場所で見守っていたジャックが歩み寄る。

「……やっぱり、来てたか」

ウィンディーネはちらりとジャックを見る。

「使徒よ。

良い伴侶を選んだな」

ジャックは苦笑しながらも、どこか誇らしげだった。

「そうだろ」

ウィンディーネは再び涼香へ視線を戻す。

「覚えておけ。

生活魔法は、世界の根を太くする。

お前は派手には語られぬが、必ず残る」

「……はい」

涼香は深く頷いた。

その答えに満足したのか、ウィンディーネの姿は水に溶けるように消えていく。

最後に、柔らかな声だけが残った。

「必要な時は、いつでも水に呼びかけよ。

私は、生活魔法士の味方だ」

川の流れが元に戻り、夕暮れの音が帰ってくる。

涼香は胸に手を当て、静かに息を吐いた。

戦わなくてもいい。

目立たなくてもいい。

それでも――

この世界に、確かに居場所がある。

そう思えた夜だった。

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