94話 ジャックの気づき ――「これが、愛するということ」
目を覚ますと、
隣には涼香がいた。
それだけで、胸の奥があたたかくなる。
特別なことは何も起きていない。
ただ、同じ朝を迎えただけなのに、
心が静かに満たされている。
(……ああ)
ジャックは、ようやく理解する。
これが――
人を、愛するということなのか、と。
胸が高鳴るとか、
独占したいとか、
そういう激しいものじゃない。
ただ、
そこにいてくれることが嬉しくて、
呼吸している姿が愛おしくて、
この人の未来に、自然と自分が立っている。
(幸せにしたい)
それは義務でも、見返りでもない。
心の底から、勝手に湧き上がってくる感情。
(守りたい)
強く見せたいわけじゃない。
前に立って盾になる、なんて大げさな話でもない。
ただ、
悲しい顔をさせたくない。
不安な夜を、ひとりで越えさせたくない。
涼香がふと寝返りを打つ。
その小さな動きにさえ、胸が締めつけられる。
(……俺は)
前世で抱えていた劣等感も、
自分には何もないと思っていた時間も、
この瞬間には、もう関係なかった。
誰かを想うことで、
自分がこんなにも静かに、強くなれるなんて。
ジャックは、そっと息を吐く。
(愛って、
こんなにも優しくて、
こんなにも怖くて、
こんなにも――温かいんだな)
隣にいる人の幸せを願うこと。
そのために、自分の人生を重ねたいと思うこと。
それが、
ジャックにとっての「答え」だった。
彼はまだ何も口にしない。
でももう、迷いはなかった。
(俺は、この人を選んだ)
そして心の奥で、静かに誓う。
(必ず、幸せにする)
その想いは、
誰に見せるでもなく、
確かに、ジャックの中で根を張っていた。
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