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後悔ばかりの男の逆転人生  作者: れんれん


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第10話 小さな冒険と、知らぬ意味

辺境伯領の森は、子供が足を踏み入れていい場所ではない。

 それは、屋敷の者なら誰でも知っている常識だった。

 強力な魔獣が徘徊する危険地帯。

 兵ですら、単独行動は避ける。

 ――だからこそ、確かめたくなった。

(俺は、どこまで“異常”なのか)

 昼前、見張りの交代時間。

 死角を利用し、俺は屋敷を抜け出した。

 三歳の体。

 だが、空間操作で足音は消せる。

 小さな冒険は、あっさり始まった。

森の空気

 木々は濃く、魔力が澱んでいる。

 呼吸するだけで、屋敷とは違う圧を感じた。

(ここは……戦場だ)

 森そのものが、弱者を拒絶している。

 だが恐怖はなかった。

 退路も、常に確保している。

ガサリ、という音

 昼を少し過ぎた頃だった。

 背後の藪が揺れた。

 ガサッ――

 即座に身構える。

(来た)

 姿を現したのは、二メートルを優に超える影。

 緑がかった皮膚。

 隆起した筋肉。

 鈍く光る棍棒。

 オーガ。

(……強さは、分からない)

 知識はある。

 だが、実測したことはない。

 逃げる選択肢は――ある。

 だが。

(試すなら、今だ)

空間断絶

 詠唱なし。

 動作なし。

 意識だけを、空間へ滑り込ませる。

 派生魔法――空間断絶。

 オーガと俺の間に、一本の“線”を引いた。

 それは刃ではない。

 圧でもない。

 「つながり」を断つ現象だ。

 次の瞬間。

 オーガの上半身と下半身が、ずれて落ちた。

 血が噴き出すことはなかった。

 音も、悲鳴もない。

 ただ、分離した現実がそこにあった。

あまりにも、簡単に

 俺は立ち尽くした。

(……え?)

 抵抗もない。

 反撃もない。

 魔力消費は、驚くほど少ない。

(これ、そんなに強い魔獣だったのか?)

 オーガが辺境伯領に現れる意味。

 兵が警戒する理由。

 それらが、実感として結びつかない。

 俺にとっては、あまりにも――

 簡単すぎた。

知らないということ

(……これは、まずいな)

 ようやく、違和感の正体に気づく。

 俺は、基準を知らない。

 どれほどの強さなのか。

 どれほどの異常なのか。

 それを測る物差しが、俺にはない。

 オーガの死体を、イベントリーに収納する。

(後で、研究対象だ)

 そう判断できてしまうこと自体が、異常だと――

 この時の俺は、まだ理解していなかった。

 夕方になる前に、屋敷へ戻る。

 何事もなかった顔で。

 誰にも気づかれず。

 誰にも報告せず。

 だが、この一件は確実に示していた。

 俺は、もう「子供」ではない。

 そしてこの力が、

 世界にとって何を意味するのか――

 それを知る日は、

 必ず、やって来る。

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