運勢割引
「あっと、しまった」
スーパーで買い物をしようとした私は、レジに表示された金額を見て思わずそう声をあげた。いま私の手元にあるよりわずかに高いのだ。
どうしようかと悩んでいる私に、店員が声をかけてくる。
「運勢割引を行いますか?」
「あ、はい。お願いします」
承諾すると同時に店員は私の方へとスキャナーを向けてきた。私は自分の腕に刻まれているバーコードをそこへとかざした。
「はい、それでは運勢割引を適用しましたのでお値段変わりまして……」
運勢というものが科学的に解明され、金銭のようにやりとりができるようになってからしばらくが経った。いまではこのように多くの店で一定量の運勢を支払うことで割引が受けられるようなサービスが展開されている。
私はうっかり財布を忘れたり、手持ち以上のものを買おうとしてしまうことが多いのでこのサービスに助けられることが多い。
だが、と買い物袋を持ってスーパーを出た私は考える。
もしかしたら財布を忘れたりしてしまうのは、サービスで自分の運を使っているからなのではないだろうか?