最終話 ハルタンとご主人様
最後にクタレスだけはケジメをつけさせてもらう……
俺は最後に『念写の術』で、クタレスの失禁した情けない姿を紙に念写し、クタレスに見せつけ言い放った。
「エリス・フォンティーヌに、これまでの行いを謝罪し反省するのであれば、この場から去ろう。ただし謝罪も反省もせず、また同じことを繰り返せば、次は無いと思え! これが出回れば、お前は貴族としての人生は終わりだ! どうだ恥ずかしいだろう? 俺だったらもう恥ずかしくて表も歩けないな。特にその年でおもらしだなんて!」
クタレスは絶望と涙でグシャグシャになった顔をして言葉を発せずに、ただ頷くだけだった…… 明らかに脅迫である。
そして、俺はその場を離れた……
これでは、甘過ぎて『ざまぁ』にならないだろうがっ! とお叱りは受けるだろうが、これで良いのだ! もしご主人様だったら、反省し謝罪して貰えたら最終的には、すべてを許すのだろう……
そういう方なのだ! 俺のご主人様は……
因みに、俺は屋敷を一切壊してはいなし、死傷者も出していない。ヤツらの暴走した魔法攻撃で屋敷を全壊させ、ケガ人を出したのだ。
自業自得だ…… 俺はご主人様と同様、慈悲に満ちた『たぬき』なのだ!
しかし、たった一軒目なのに体力と魔力の減少が激しいが、ご主人様の笑顔の為、息災と幸福、健やかな成長の為に、ヤモリを齧りながら次の屋敷へと向かった……
◇
朝焼けまでにはクラス全員の屋敷を回り終わった……
大量にあったヤモリ、イモリ、ヘビの干物にポーションも全部無くなっていた。もう、体力、魔力、気力も底を付き、いつ倒れてもおかしくない状態だった。
疲れ果てボロボロになった俺は、路地裏に体を丸め呟いた……
『これだけやったんだ… 後は当主のセトリック様とマリーヌ様に任せよう… 最後に…… ご主人様にモフモフされたいなぁ……』
そして、俺は…… 静かに目を閉じた…… 心地の良い闇が俺を包んだ…
――ハルターン! ハルターン!……
どこからともなくご主人様が俺を呼ぶ声が聞こえた……
俺は目を開け、――もう一度だけ ――一目だけでも ご主人様に会いたい!
との想いが、心底疲れ果て、ボロボロになった体を引き摺り、ご主人様が待っている屋敷へと向かわせた――
屋敷の門に着いた頃には、もう意識が朦朧としていた。
『やっと着いた…… もう一歩も体が動かねぇ…… ああ、ご主人様に……会 い た か っ た……』
そうして、俺は、深い闇へとご主人様の笑顔を思い浮かべながら落ちていった――
――その後の話をしよう。
ご主人様をいじめていたヤツらは両親に伴われて公爵家へ謝罪に訪れた。また、学園長はじめ幹部連中も謝罪に訪れた。公爵夫婦はまさか自分たちの娘がいじめにあっているとは思わず怒り心頭だった。その話しは王族まで届き、国王の逆鱗に触れた、学園関係者、いじめに加担した者の実家の爵位返上のうえ財産没収となるのだが、そこは心優しい俺のご主人様は、ヤツらの謝罪を受け取り許した――
そして、ご主人様は王族に、いじめの関係者全員の許しを働きかけた――
国王はご主人様の気高く崇高な態度を称賛し、いじめ関係者全員を許した。
ロッシュウ・ルーン・アルパトスはご主人様のいじめ問題が解決すると、ご主人様の前で、
「良かった! 本当に良かった! エリス~!」
と泣いてご主人様に抱きついた。
次期国王としての態度なら失格だと思うが、アイツはご主人様の体型とか魔法が使えないとか全然気にも留めずに、ご主人様をずっと見続けて来た。
多分、アイツはご主人様を好きなんだろう。ご主人様もアイツに抱きつかれて顔を真っ赤にしてアイツの事が好きなのかな?
――そして…… ご主人様は魔力の循環の効果で、ほっそりとした美しく可憐な公爵令嬢となった。そして王族の強い希望で、ロッシュウ・ルーン・アルパトス王太子との婚約が決まった。
アイツとなら外見も内面もイケメンだから、俺もご主人様との結婚を許してやる!
――そして今も、ご主人様は魔法の特訓にも余念がない!
いつか、俺の言っていた『1000年に一人の大賢者』をめざして!――
◇
「暖丹、そろそろ行くぞ」
「あぁ、じいさん神様」
「何がじいさん神様だ! いつも天地創造の神・ネキザアニウスと言えと言っておるじゃろ!」
「器の小さい、じいさん神様だ…… 自分のペットをもっと大事にしろよ!」
ご主人様、短い間だったけど、俺は最高に幸せだったぜ!
ありがとう さようなら ご主人様――
――今、俺はじいさん神様のとなりで、ご主人様を見守っている……
―― 完 ――
お読みいただきありがとうございました。
物語は、世代を超えて『モブ王子は魔境の森の魔女さんと仲良くなりました♡ ~世界最強の魔女さんは世界で一番可愛い魔女さん~』へ続く……
お読みいただき誠にありがとうございます。
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