ヒーローになりたいなら
その日の授業は何一つ手につかなかった。
これでも、成績は良い方なんだけど、
親父の仕事関係者が気になって気になって。
どんな人だろうか?どんな案件なんだろうか?
俺に何ができるんだろうか?
兄貴達みたいにできるだろうか?
期待と不安で不安がやや優勢になってきた時
その日の終了のチャイムが鳴り響いた。
いつもなら、終了のチャイムと同時に教室を飛び出して、ツレ達と遊びに行くか、部活に行くかなのに、
いつもの3倍の時間をかけてモタモタと帰宅準備をしている。
今までずっと憧れてきた。いつか俺も親父や兄貴達みたいって!
ヒーローになるんだ!って。
もだもだしてても、足は家に向かっていて、
もだもだしてる間に家には辿り着いていた。
「ただいま」
「おかえり...」あいつの声だけが返ってきた。
?あれ?
誰もいない?
「親父は?」
「.....ちょちょっと、待ってね.今おやつだすから...」
洗面所から声が聞こえる?手でもあらってんのか?
なんか?声も?
「いいよ。で、親父達は?」
「....お父さんは、お店だよ」
「了解。俺も荷物おいたら、店行ってくるから、
おやつはいいや」
俺はこの時、なんで洗面所まで見にいかなかったのか?
もっとちゃんと、あいつの事考えなかったのかを
後悔することになり、また兄貴達からボコボコにされるとは、思いもしなかったんだ。