山門編-初国知らす王の章(10)-騒ぎ立つ木の葉(2)
<これまでのあらすじ>
俳優の少年と黒衣の少女、そして多くの人の活躍と犠牲で厄災を乗り越えた山門は、天孫族を中心とした諸族の新たな秩序を整えていた。
橿原に宮を築いた天孫の磐余彦狭野姫は、磯城族の入彦に特別な想いを抱き、そのことが天孫族に軋轢を生む。
権力の奪取をもくろむ葛城族の太忍は、悪謀を巡らせるが、それを阻んだのは入彦の三人の子供たちだった。
狭野姫の秘かな想いは日毎に大きくなり、彼女を支え続けてきた手研の諫言さえも顧みなくなる。そんな折、狭野姫は巻向への遷都を宣言する。諸族は紛糾し、遷都の吉凶を天神地祇と祖霊に問うため、誓約の馳射が開催されることになった。
大がかりな馬合わせとなる馳射の騎手を選抜する諸族。磯城族でも精鋭の若者が参集されたが、入彦の子の豊城彦は何とかして馬合わせに出場すべく、同母妹の豊鍬姫と異母弟の活人を巻き込み悪知恵を働かせる。
<人物紹介>
豊城彦
俳優の少年・御統と黒衣の少女・豊の生まれ変わり。入彦を父として育つ。自由奔放。
豊鍬姫
俳優の少年・御統と黒衣の少女・豊の生まれ変わり。入彦を父として育つ。呪能に秀でる。
入彦
磯城族の氏上。厄災を乗り越え、一角の人物に成長する。磯城の県主。
美茉姫
入彦の妻。明るい美しさの女性。淑やかであり、闊達でもある。
活人
入彦と美茉姫の子。引っ込み思案で臆病者だが、やるときはやる。いつも兄と姉に翻弄される。
大彦
入彦の伯父で舅。怪力無双。豪放な性格だが、娘の美茉姫には頭が上がらない。
石飛
磯城族の青年。入彦の舎人。
百襲姫
磯城族の斎宮。入彦の大伯母。呪能は無尽蔵。
翠雨
入彦の愛馬。御統の友人。濡れたような深い青色の毛並み。
如虎
黒豹。豊の友人。厄災後は、磯城の三輪山の森の中で静かに暮らしている。
狭野姫
天孫族の氏上。兄から天津彦を継ぐ。今は磐余彦を号している。超絶美女だが、乱暴でわがまま。入彦を慕っている。
手研
狭野姫の年上の甥。常に狭野姫を支えている。狭野姫が唯一甘える人物。
珍彦
狭野姫の忠臣。
道臣
狭野姫の忠臣。
吾曽利
天孫族の有力者。狭野姫に不満を抱いている。
太忍
葛城族の氏上。山門の権力掌握をもくろむ。
剣根
太忍の庶子。自分と母を棄てたも同然の父を見返そうとしている。
山門人の中で、最初に野の馬の背に乗ってみようと思った人物にどのような事情があったのか知れないが、その人は登美族の出自だった。彼の風変わりのおかげで、登美族は馬の有用性と速さの感覚を習得することができた。
馬を飼い慣らし、その背に荷を載せれば物の運搬に便利だという発見もあったが、やはりなんといっても軍事での利用に突出した効用があった。人の数倍の速度で戦場を駆ければ、容易に敵を翻弄し、包囲できる。その背に乗って矛を振るえば、歩兵数名以上の戦力になる。
そういったわけで、登美族は山門の諸族の中で軍事力に突出した。乗馬用の脛当てが騎手の脚を長く見せたことから、登美族の男たちは長髄彦と渾名された。
その長髄彦たちを上手く懐柔したのが、初代の饒速日だ。彼は鵤丘に邑を築いて斑鳩族を立ち上げると共に、登美族と友好関係を結んで山門の盟主となった。
登美族は山門西北部の山間に暮らす狩猟民族で、剽悍ながら土地の獲得にはあまり積極的ではなかったが、饒速日は彼らを巧妙に使役して、山門の諸族を傘下に組み入れていった。
初代の饒速日には、さても剽悍な長髄彦たちを心服させる魅力があったが、代を重ねるにつれて魅力は弱まり、猜疑心が強くなった。代々の饒速日にとって、登美族の軍事力は脅威であった。
そこで何代目かの饒速日が一案を思いついた。
騎馬を諸族にも備えさせてはどうか、というものだ。もちろん、登美族が馬を御すという自らの秘術をおいそれと他族に伝授するはずはなく、そもそも諸族には野の獣の背に乗るという行為を蛮行と捉える嫌悪がある。
このときの饒速日はなかなかの知恵者だったらしく、神事、を持ち出すことで、登美族の拒絶と諸族の忌避を解消した。
つまり、乗馬の技術を天神地祇や祖霊への奉納儀式に組み込んだのだ。騎手同士の模擬戦という形を整え、試合形式にすることで娯楽性も高めた。
神事に野獣を連れ込むとは何事かと憤る声もあるにはあったが、太占は鹿の肩甲骨を用いるし、神々への供え物として鳥獣の生肉が祭壇に並べられることもあったから、それらを馬の姿に変えたところで、大きな障壁とはならなかった。また、騎手の模擬戦を庶人に解放したのも良かった。庶人はすぐにその娯楽性を受入れ、結局、諸族の貴人もその娯楽性に抗えなかった。
諸族は各自に騎馬隊を編制し、修練を積んだ。定期的に他族との交流戦を行い、貴人と庶人を愉しませた。交流戦の中で登美族の技を盗み、互いにその技術を高め合った。その結果、登美族にはまだ一日の長があるものの、隔絶した軍事力の格差は次第に解消された。登美族から分かれた春日族などは、本家に迫る力量を蓄えている。
饒速日の目論見は見事に果たされたが、より以上の効能もあった。それは、山門の国歩を定める重要事に、馬合せが誓約として利用されたことだ。誓約の馬合せに出場する騎手は英雄と称えられ、男児にとっては羨望の存在だった。
そういった経緯があって、狭野姫が言い出した巻向遷都の是非を誓約の馬合せに問う、ということが諸族に受入れられたのだ。
通常の馬合わせは三十人対三十人の諸族対抗で行われる。しかし今回は占う対象が遷都という重大事であることを鑑み、規模を百人対百人に拡大し、各族から選抜して二隊を編成することとなった。二隊のうち、どちらが吉を背負い、どちらが凶を背負うかは秘匿とされた。それは、天孫族の祝者の長である大祝以外は狭野姫にも知らされず、当の大祝を誓約の馬合わせの勝敗が決するまでは斎宮に閉じ込めておく、という徹底ぶりだった。
入彦はさっそく騎手の選定に取りかかった。
磯城族は天孫族と共に戦う。和邇族や平群族なども一緒だ。騎手の割当は族の規模に応じており、磯城族は十名を出す。誓約に掛ける事柄が最重要事項ということもあって、諸族の氏上はよほどの事情がないかぎり出場するようにと通達されている。入彦にはよほどの事情はないから、選定は九名ということになる。
馳射の相手方は葛城族を中心に登美族や春日族が隊を組む。乗馬技術に秀でた登美族と春日族が偏っていることに何らかの恣意を感じるが、諸族の振り分けも占いに拠っている建前のため、誰も不平を口にできない。
磯城族の騎手として、まず石飛は当確だった。かつて登美族との奉納馬合わせにも出場したし、騎手としての技量は磯城族随一だ。
次に大彦を選べば、それ以上の選定作業はする必要もなく、馳射は磯城族方の勝利に終わること疑いない。相手方からすれば大彦の出場は重大な反則行為だ。大彦が一喝すれば、相手方の騎手の半分は落馬し、もう半分は大彦の得物の一振りで吹き飛ばされるだろう。しかし、大彦の選定は許されない。大彦が馳射の馬場への出禁をくらっているわけではなく、馳射の得物は弓と決まっているからだ。大彦は弓が得意ではない。大彦の膂力に耐えうる弓がない。そのため戦場で大彦は銅の棍棒を振り回すのだが、馳射ではそれは禁じられている。そのうえ、大彦の巨体を支えられる馬がない。馳射では落馬すれば失格となるので、大彦は競技開始早々に馬場を去ることになる。
「馬を四、五頭並べて、その上に乗ってみてはどうか」
どうしても誉れある馬合わせに出場したい大彦はそんな提案をしてみたが、その不格好な姿を想像して、自ら却下した。貴重な馬を、そんな気の毒なめにあわせるわけにもいかない。
「伯父上の心意気だけ頂いておきます」
そう言って大彦を慰めた入彦は、磯城族の騎手を集めてその技量を確かめることにした。なお、選定会議が開かれた室の牖から興味津々の眼が覗いたり、小さな手が勇ましく挙げられたりしたが、それらの自薦行為は入彦に全て黙殺された。
地団太を踏んだのは豊城彦だ。彼はどうしても誓約の馳射に騎手として出場したかった。若馬であれば、乗れないことはない豊城彦だ。
豊城彦の瑞籬邑の郊外の野原に、颯爽とした騎手十数騎が集まった。
もちろん、入彦もいる。愛馬は翠雨だ。友人の御統から預かった翠雨は、疾駆すると深い色の毛並みが濡れたように美しく波打つ。もう立派な雄馬だ。
石飛が隣に馬を並べた。彼の馬も雄々しい。
「あのときを思い出しますね」
石飛のいうあのときは、まだ彼らが春日族であったときに、登美族と互いの名誉をかけて馬合わせしたときのことだ。
「あのときは、汝に迷惑をかけた」
入彦は恥ずかしげに詫びたが、その顔は下を向かず、真っ直ぐに石飛を見た。確かにあのとき、入彦は醜態をさらしたが、その事実から逃げることなく、しっかりと己の糧にしている証拠だ。身を挺して主を護った甲斐があったと、石飛は自らを誇るとともに入彦の成長を今更ながらに嬉しく思った。
「いつか主と、祖霊の御前で矢馳馬を競いたいものです」
石飛が挑むように言った。矢馳馬は、馳射における一騎打ちの形式だ。互いに鏃の大きい猟箭を放ち、相手を落馬させるか、相手の冑に付けられた雉の尾羽を射落とせば勝ちだ。
「やめておこう。神前で汝に恥をかかせるのは心苦しい」
「いわれましたな」
愉快さを天空に放つような笑い方を石飛はした。その朗らかな響きが山門の澄明な大気を伝わり、選抜のため参集した磯城族の若者の胸に沁みて彼らの緊張を解した
誓約の馬合わせの騎手の選抜として、競わせたのは馬のさばき方と弓の正確さだ。馬は速く走らせられるに越したことはないが、馬場の広さは決まっている。野末まで駆けていく必要はなく、それよりも細かい動きの制御が必要だ。弓にしても、相手を射殺す必要はないから、勢いのある矢を放つことよりも、矢頃にある相手を正確に射ることのできる技量を重んじた。
そうして、八人の精鋭が選ばれた。彼らに入彦と石飛が加わって、磯城族の選抜隊となる。登美族にも決してひけをとることはない、と入彦は、騎手の面々を見て満足した。
ところで選抜中、招かれてもいない三人組が入彦の視界の端におり、危なっかしい乗馬やそこそこの弓の腕前を披露してくれたが、当然、入彦はその三人組を黙殺した。
「父上は近ごろ、お目を悪くされたのか」
地団駄を踏んだのは豊城彦だ。
「いや、兄上がここにいることが間違っているんだ。怒られなくてよかったんだよ」
と、豊城彦を諭したのは5歳の活人だ。しかし、七歳の兄は負けん気は納得しない。
「本当に何も知らないんだな、活人は。いいか。この度催される誓約の馬合わせは山門始まって以来の大きな馳射になる。これの騎手に選ばれることはとても光栄なことだ。山門諸族数多あれど、男子として生まれながら、これに選ばれないことを望むものがどこにいよう」
豊城彦の興奮はどうしても収まらない。そんな男子はここにいるよ、とも言い出せない活人は、兄を持て余した。
熊鷹の雛のさえずりが聞こえた。喜びの声だ。活人がそちらに目をやると、豊鍬姫が熊鷹の雛に餌を与えていた。干した鹿肉だ。豊城彦と活人のやりとりを耳の端で聞いていた豊鍬姫は、
「梅香る、ただ一挿しの、杏子かな」
と、詠った。活人はきょとんとしたが、ぴんときた豊城彦は、
「なるほど、さすがは吾が同母妹」
と、手を打った。
異母兄と異母姉が合意に達するとろくなことにならないことを経験している活人だが、つまりはこういうことだ。梅と杏子の花はよく似ており、梅林に一挿しの杏子が混じっていても、誰も気が付かない。馳射の騎手に選ばれなくても、こっそりそこに混じればよい。豊鍬姫はそう教えている。その混じり方に一悶着ありそうだ、と活人は嫌な顔をした。ちなみに、梅も杏子も花は可憐だが、果実となると、活人は梅の実よりも杏子の実が好きだ。
「となると、どうやって杏子になりきるかだな」
豊城彦は思案深げに腕を組んだが、すぐにその算段がついた様子だった。こっそりとこの悪巧みの場から逃げ出そうとした活人だったが、兄は逃してくれなかった。
「汝弟よ、頼みたいことがある」
有無を言わせぬ手に首根っこを掴まれた活人が恐る恐る振り返ると、豊城彦の満面の笑みがあった。
拒否は受け付けないと書かれた異母兄の笑みが網膜から消えないうちに、日が暮れた。人々の夜は早い。磯城の瑞籬邑もすっかり寝静まった。
燈火のゆらぎや星のささやきが聞こえそうなほど静かな夜だ。地表を流れてゆく風には春の温かさがある。新月だから、月は見えない。
宮処の建物の影から何者かが秘かに動き出し、別の建物の影に融けた。物怪や怪士の類いではない。
活人だ。豊城彦から今年一度のお願いとして頼み込まれたから、いやいやながら宮処の神倉にこっそり入り、あの白銅鏡を失敬するのだ。
「いや、ふつう一生に一度とかじゃない」
夜陰のなかでふてくされるようには、豊城彦の前で悪態がつけない活人だ。豊城彦と豊鍬姫の悪戯に巻き込まれ、何かととばっちりを受けることの多い活人だが、二人とはなるべく距離を取ろうと思う反面、二人がやらかすことに興味津々でもある。今年一度のお願いが、あと何度あるのか空恐ろしいが、なんとなく楽しみでもある。
「杏子に化けて梅林に潜り込むために、あの白銅鏡がいるんだ」
と、活人の首根っこを掴んだ豊城彦は言った。どういうことかといえば、豊城彦は騎手の一人に化けるのだ。化粧の呪術を用いることでそれは可能となるが、術を施す者にそれなりの呪能が要求される。豊鍬姫は優れた呪能者だが、まだ年若く、その醸成は十分でない。その不足を補うのが白銅鏡というわけだ。
もちろん、ここは磯城族の氏上の宮処だから、白銅鏡でなくとも、豊かな呪力を備えた鏡はいくつもある。だが、化粧の術者となる豊鍬姫は白銅鏡にこだわった。百襲姫が鋳させたという白銅鏡には、百襲姫の無尽蔵の呪力が秘められている。一刻も早く、その鏡を使い慣れておきたい。理由は説明できないが、そうしなければならない焦燥感が、豊鍬姫にはある。
では、当の豊鍬姫が神倉の失敬役を務めればよいではないか、というのは、活人が当然抱く不満だ。だが、あの夜と同じように、豊鍬姫の呪能に反応して、白銅鏡がまたどんな誤作動を起こすか知れない。次にそんなことがあれば、白銅鏡は霊殿に安置されることになるだろう。百襲姫のいる霊殿には、たとえ天神地祇であっても秘かに忍び込むことなど不可能だ。
それなら、豊城彦がいるではないか。そもそもの根本だ。だが、豊城彦には豊城彦の仕事があるという。そういった次第で、活人は家守のように夜陰の建物に貼り付いている。
邑は寝静まっているが、起きている者もいる。そのうちの一人が活人で、そのうちの何人かが夜番の御火焼だ。御火焼のうちの二人が、神倉の夜番をしている。
少し前に、神倉に侵入した不埒な三人組がいたため、神倉の夜番には屈強な男が就くようになった。肉体的な屈強さではなく、精神的な強さだ。眠り草ごときでは眠りこけない。
豊鍬姫のような言霊の術は使えず、豊城彦のような悪知恵も働かない活人としては頭の悩ませどころだ。
考え抜いた活人は、物音で夜番の気を引くことにした。
神倉の近くに高床の建物があり、そこの剥き出しの垂木に小石を詰めた嚢を仕掛けた。この日の昼間の作業だ。紐を引けば嚢が開き、小石が落ちる。その紐は床下を通って、建物の反対側にまで続いている。そこの夜陰に、いま活人は潜んでいる。紐の端は、活人の手に握られている。
活人は強く紐を引いた。仕掛け通り石が落下し、建物の反対側で派手な音を立てた。御火焼たちの顔がそちらに向き、顔を見合わせたあと二人は音のした方へ駆け出した。活人の思惑通りだ。これで二人の邪魔者は見当違いの場所で、いるはずもない不埒者を探索することになる。活人は夜陰を飛び出した。が、急停止した。見当違いの方向へ走ったはずの御火焼が待ち構えているではないか。
「お、お役目ごくろうさまです」
絡まる舌で、活人は何とかそう言った。
「痛み入ります、公子。なかなかお考えになられたようですが、次はもう少し微かな物音になさるべきです。あまり派手な音では、かえって罠を疑われますぞ」
氏上の息子に対する御火焼たちの言葉は恭しいが、目元は決して和やかではない。二人のたくましい四本の腕が迫ってくる。
「なるほど、そうだとは思ったんだ。でも、眠気覚ましには派手な音の方がいいかなと思って」
しらを切ろうとして、無理だと判断した活人は脱兎も驚きの素早さで逃げ出した。御火焼は猛然と追いかけた。入彦から、不埒者が何者だろうと容赦ない折檻を、と命じられている。
神倉の周辺には、ただ篝火の燃える音だけが残された。不埒者が容赦ない折檻をくらうのは間もなくのことだが、実はもうひとり不埒者がいた。それは、神倉の側に立つ銀杏の木からするすると降りてきた。
「悪いな、汝弟」
そう言って、活人が逃げていった方に頭を下げたのは、豊城彦だった。
豊城彦は懐から小振りの鏡を取り出した。解除の鏡だ。祝者や巫であれば誰でも所持している類の鏡だから、懇意の祝者に酒でも飲ませれば、豊城彦には簡単に失敬することができる。
神倉の扉に施された呪飾に鏡面を向け、文様をなぞるように動かしてゆく。呪飾に秘められた呪力は、鏡によって反射され、自らを解除してゆく。
篝火の灯りが届かない神倉の暗闇に、豊城彦は身を差し入れた。白銅鏡の安置場所は見当がついている。すばやく動き、手際よく済ませた。
仕事を終えた豊城彦が何食わぬ顔で自分の房に帰ったころ、活人へのきつい説教を終えた御火焼二人が持ち場に帰った。そこでは篝火が静かに燃えており、何の違和感もなかった。まさかもう一人の不埒者が仕事を終えたとは思わぬ御火焼は、神倉の扉の呪飾が解除されているとはつゆにも知らず、朝まで番を務めた。
無事に白銅鏡を手に入れた豊城彦。誓約の馬合わせに紛れ込むための画策を進めていきます。




