僕のパパとママ
ユニオが戻って来ると、洗い物を済ませてマグカップでミルクコーヒーを飲んでいたユーコが顔を上げた。
「ユニくん、コーヒー飲む?」
「水がいい。喉乾いちゃった」
ユニオの銀色の髪のてっぺんが、動物の耳のようにぱたぱたと動いた。
「地下で何してたの?」
そう聞くユーコに、大きなコップの水をこくこくと飲み干すと、ユニオは可笑しそうに答えた。
「秘密だよ」
ゼンゾーが上がって来た。
「優子、おれにもコーヒー」
「自分で淹れてください」
いじけたように自分でインスタントコーヒーを作り、食卓に座ると、ゼンゾーはユニオに言った。
「ユニ。アーミティアスを探しに行く。お前も来い」
「アーミを?」
ユニオが困ったような顔で固まった。
「お前の鼻でないとアイツは探せん。悔しいが、おれの鼻は騙される。おれはアイツがすぐ側にいたとしても気づかん。悔しいが……」
「アーミはもう、探せないよ」
ユニオが弱々しい声で言った。
「なんでだ?」
ゼンゾーが怪訝そうに聞く。
「だって……。教えたらゼンゾーが殺されてしまう」
「おれが!?」
ハッと笑い飛ばすようにゼンゾーが声を上げた。
「心配ねーよ。おれが殺されるんなら誰でも殺される。アーミティアスが無敵なわけねーだろ。戦うんだ、アイツと……。おれは」
「それよりどこか遊びに行こうよ」
ユニオが必死になる。
「僕、またちろくんとドッグランで遊びたい。いいでしょ? パパとママも仲良くさ?」
「パパ……?」
ゼンゾーが赤面した。
「パパと……ママ?」
ユーコが嫌そうな顔をした。
スティーブとゴゴが並んで上がって来た。ゴゴは空腹が収まったようで大人しくなっている。
「行って来なよ、アイタガヤ」
スティーブが疲れたような顔で言った。
「ユニくんが言う通り、キミとユーコさん、全然いい関係に見えないよ。関係、育てておいでよ。それに外に出れば遊びながらでも捜索はできるでしょ」
「まぁ……。捜してない時に限って見つかるもんだしな」
ゼンゾーは考えながら、言った。
「それに確かにおれらにはデートが必要だ」
「ママはお留守番してるから」
すかさずユーコがユニオに言った。
「2人で行って来なさい。ね? ママとちろくんはお留守番してるから」
「なんで?」
ユニオが不満そうに首を横に振る。
「お出かけって家族揃ってするものじゃないの? パパとママって、仲悪いの?」
「これからとても仲良しになるんだよ」
ゼンゾーが笑う。
「パパじゃないから。ゼンゾーさんはユニくんの……」
ユーコがかわそうとする。
「パパとママでしょ?」
ユニオが口を尖らせた。
「僕、2人がパパとママだったらすごく幸せだよ? 2人とも大好きだから」
うっ、とユーコが声を詰まらせた。
「よし、そうと決まったらドライブだ!」
ゼンゾーが張り切る。
「ドライブしながら、アーミティアスの匂いを嗅ぎつけたら知らせるんだぞ? よし、行こう! おいスティーブ! 高級ピクニック・ランチセットを宅配で頼んでくれ!」




