表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/30

20 「悪女」と呼ばれる未来を夢見る

 翌日は髪を下ろしたまま学院へ向かった。

 正直、この青白い髪を見るたびに、人形のような顔を思い出すのはいただけなかった。でも、下ろしたといっても背中にかかっているだけで、四六時中視界の中にあるわけでもなし、そのうち慣れると思う。多分だけど。

 しかし、いつもと違う髪型をした、というだけで異常な緊張を感じるのはなんでだろう。

 やたらみんなに見られてるような気がするのは気のせいかな?

 こういうのは、自分が気にするほど他の人はどうとも思ってないもんだよね?


 例え、現状でヒソヒソ話をされていても。

 このヒソヒソもいい加減なれてきたしな。もう好きなだけヒソヒソしてくれ。

 てか、むしろ面と向かって言いたいこと言ってくれ。

 ヴァネッサのように。

 昨日は、動揺しすぎてダメだったけど、今ならもう少しちゃんと彼女の言い分を聞いて、彼女との意見の違いも説明できる。

 このヒソヒソ嬢たちよりもヴァネッサの方が断然好感が持てるよね。


 中等部の建物に入ると、すぐにメル君がいて、目があった。

 私を見て驚いていたようだったけど、こちらとしても昨日怒らせたばかりなので、ちょい気まずい。結局あいさつもできずに、お互いに視線をそらしてしまった。

 その後同じ方向に歩くのだから、やっぱり普通に挨拶しておけば良かったと、激しく後悔したけど。


 昼休憩は中庭ランチ会だったのに、明らかに人が減った。ヴァネッサとその取り巻き? にあからさまに避けられているようだった。

 まぁ、しゃーない。異質を嫌うのは小さな社会であればあるほど顕著なものかもしれない。年齢的にもね。

 貴族令嬢らしからぬものを好むというだけでも、受け入れられない人もいるのかもしれないね。

 食事が終わると、オリヴィーがそばに来て深く膝を曲げる。


「レスティア様、昨日は私のせいで嫌な思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした」


 あれはオリヴィーのせいではないのに、なんていい子だろう。


「いいえ、昨日の件はどなたが悪いわけではないので、気になさらないで」


 そう言うが、オリヴィーは首を横に振る。

 なんか、えらく怖がっているような? そんなに怖い人だと思われてるの?

 とりあえず、まっすぐ立つように彼女の肩に手を乗せる。


「わたくしはずっと家にいたので、皆様が当たり前だと思っていることすらわかっていませんでした」


 教養科目なんて、真っ先に選択肢から消えた。最初に父母に相談するべきだったのかもしれない。それで結果が変わったかは微妙だけど。


「もっと皆様のお話を聞いていたら、皆様と同じ選択をしたのかもしれませんが、結局のところわたくしはわたくしの選択を後悔はしていないので、わたくしの責任でしょう」


 マナーなんてモナのような平民の学生のための救済授業だと思っていた。まさか貴族の娘たちがこぞって受けるようなものだと思ってなかったしなぁ。


「ですから、オリヴィー様のせいではないのですよ」


 それでもなかなか納得がいかないようだ。よく見れば彼女の目の周りは赤くなっているし、昼食のときもずっと黙り込んでいた。

 困ったね。


「では、一つお願いを聞いてもらっていいですか? それをしてくださるなら、あなたの謝罪を受け入れますし、許します」


 わざとらしくちょと勿体ぶって言ってみた。私の内容の判らない言葉を飲み込むことで、彼女の中である種のケジメができることを期待して。


「……わかりました」


 オリヴィーが随分青い顔をしている。少し脅かし過ぎた?

 緊張でつばを飲み込む彼女を前に私は頷いた。


「わたくしからのお願いは、今後もわたくしに楽しい話題を提供してくださることです。おいしいお菓子のことや街にできた新しいお店のお話。流行りの服や話題の本も」


 ずっと田舎の引きこもりで友達ゼロ人だった私には貴重な情報源だ。


「わたくしは知らないことばかりなので、いろんなお話を聞かせてくださいませ」


 オリヴィーは一瞬笑ってから、泣いてしまった。

 ありゃ、困ったね。


「わたくしも! わたくしもオリヴィーと一緒にお話します!」

「わたくしもです!」


 オリヴィーを囲むように二人の女の子が立つ。

 オリヴィーを中心としたカシマシ3人組の誕生だ。

 3人は肩を抱き合って泣いている。

 えーと、私、虐めてる?

 違うよね? これはきっとユニット結成を決意した青春の涙だよね? 心の汗だよね?


「さぁ、皆様、そろそろ午後の授業に参りましょう」


 委員長リリアナの号令でその場は解散になったが、なんかカシマシ娘以外にも涙ぐんでる子がいるけど、ご令嬢は青春に飢えてるの?


 ロッカールームから私は気持ちだけ全力ダッシュだ。

 令嬢枠から外れた授業のせいか、教室が遠いんだよー。

 走りたい! 誰も見てないかしら? と思ってキョロキョロと見回したら、前方の廊下の影にいた女の子と目があって思わず足を止めてしまった。

 誰、だっけ? うーん?

 今、私を見て、不愉快そうな顔になったよね。

 そういえば、どこかでぶつかったような気がするな。そりゃ不愉快だよね。

 私は軽く膝を曲げてから、彼女の前を通り過ぎた。

 今日はちゃんと端っこ歩いてたと思うけど、ご不快、ですかね?


 ……はっ、遅刻するー!!

 ロッティ夫人ごめんなさい。今だけは「もう一度」は勘弁してー!!

 教室に滑り込んだのは、予鈴もすっかり鳴り終わり、席について一息ついた途端に本鈴が鳴るというのギリギリのタイミングだった。

 危なかった。ホントに。

 

 


 授業を終えて、今日もみっちり埋まったノートを再確認しながら、感嘆の息が漏れる。この先生は見てきたかのように話してくれるのがホントに面白い。

 そのノートに影がかかる。

 この至福の時間を邪魔するいつぞやのデジャヴュは……。


「レスティア、ちょっといいかな?」


 王子、極上の爽やかな笑顔で怒りを表すなんて、器用ですね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ