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第6話 満員プールの一幕(2)

 結果から言うと、例年通りの混雑具合だった。

 犬も歩けば棒に当たるレベルの。

 あれ、それって言い回し違うかも?

 という訳で僕は防水性に富んだクリアポーチに携帯と財布含めた貴重品を入れて、海パン姿でビーチに立っていた。サンビーチ刑部は普通のプールもあるけれど、流れるプールだってある。人工的に波を立てたプールだってある。刑部で生まれ育った人間は、海で波を知るよりも先にサンビーチ刑部で波を知る――なんて話があるぐらいだ。まあ、実際そうではあったのだけれど。


「それにしても……遅いな」


 何故僕は一人でここに居るのか――答えは簡単。嘉神シスターズの着替えを待っているのだ。更衣室はそれなりに混雑していたと思うが、見てみると女性が多い気がする。男性更衣室でもまあまあ混雑していたのに、この感じからするに女性更衣室はもっと混雑しているに違いない。


「いやあ、待った?」


 今来たばかりだよ――なんて声をかけようと振り返ったら、眩しい白い水着姿の嘉神シスターズが、僕の視界に飛び込んできた。

 もじもじとしているのぞみに対し、仁王立ちしているひかり。二人は対比していることが多い。ほんとうに双子なのかと考えたくなるぐらいだ。でも、人間の仕組み的に同じ年に生まれるのは、双子しか有り得ない。


「どうかな。水着は? ……確か、この水着を着るのは、今年初めてのことだったと記憶しているけれど?」

「……うう、やっぱり恥ずかしいよお姉ちゃん」

「何を今更! ここに来ると言うことはそれなりに人に見られるってことは十二分に理解していたんじゃないの?」

「そりゃそうだけれどぉ……」


 いや、しかし。

 恥ずかしげがあるのも、僕は良いと思うぞ。

 そんなことを口にしたら、一生ひかりから茶化されてしまいそうではあるが。


「まあ、良いじゃないか。とにかく、遊ぶことにしようぜ。プールは混んでいるけれど、別にぎゅうぎゅう詰めでもない訳だしさ。今から遊べばまだなんとか……」

「あれ? この前の少年じゃないか」


 声を聞いて、僕は辺りを見渡した。聞いたことはあるけれど、誰だったっけ? というか、僕のことを少年と呼ぶ人間なんて、そう多くない。ってか、一人しか居ない。

 そう思っていたら、急に視界が暗くなった。――決して僕の視力が唐突に零になった訳ではなく、誰かに目を覆われたのだと思った。何故ならどこか温かい感覚があるし。


「だーれだっ? さあさあ、誰か分かるかな、少年には。当てることが出来たら、三十ポイントあげちゃうよ」


 そのポイントは、いったいどういう基準なんだ……!


「……ええと、確かあれですよね。自動販売機で出会った、あの……」


 そういえば。

 僕、あのお姉さんに名前を聞いた覚えがない。

 きっと嘉神シスターズも突然の第三者に驚きを書く仕切れていないのだろう。見てはいないけれど、イメージは容易に出来る。のぞみは慌てふためいていて、ひかりは呆気にとられている。大方そんな感じなのだろうと思う。


「……ああ、そうだったよね。名前、言っていなかったよね。だから及第点で正解にしようか」


 そうして、僕の視界は元に戻った。

 すると、僕の視界に入ってきたのは、あの黒ギャルだった。

 黒ギャルの水着は――嘉神シスターズのそれとは違い、明らかに布面積が小さく見えた。マイクロビキニって言うのか? それぐらいの布面積だったと思う。のぞみも、結構冒険してあの布面積に落ち着いたのだろうけれど、黒ギャルの水着を見ると霞んでしまう。それぐらいに、布面積が小さかった。

 


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