そして、二度目の転移をする
「1年間、ありがとうございました!」
ズビッと鼻をすすって異世界の神ドゥーチェと、地球の神、アースデイにお礼を言う。
1年という月日は意外にもあっという間で、ドゥーチェに魔法を教えてもらい、アースデイに剣を教えてもらった。
魔法は徐々に体に馴染ませていったので、はじめは小さな魔法しか使えなかったが、今では以前転生した時よりも大きな魔法が使えるようになった。
剣の腕もかなり磨かれたと思う。ドゥーチェは優しい魔法指導をしてくれたが、地球の神アースデイは何しろスパルタだった。
はじめは瞬間移動並に早いアースデイと剣を打ち合うこと自体ができなかったが、今では勝てそうな手応えも感じるようになった。
まぁ結局最後まで1度たりとも勝たせてもらえなかったのだが、打ち合いしている時にアースデイが少し切羽詰まったような表情をするのが何よりの成長の証拠だ。
「1年間、メキメキ成長していくリンちゃんを見守るの楽しかったわ。」
「ワシらにとって1年なんぞ息を吸うような短い時間じゃが、こんなに楽しい1年は初めてじゃった」
うるっと目をうるますドゥーチェ爺さん。
本当に優しいお爺さんとお姉さんだった。神に直々に指導してもらえたラッキーガールなんて私ぐらいのものだろう。
「本当に本当に厚かましいですが…2人のこと、ちょっと家族みたいな気持ちです」
口うるさい姉に、優しいお爺ちゃん。
神々に不敬かもしれないが、私の中ではそんなイメージだ。
「リンちゃん……っ」
感極まったようなアースデイにぎゅっと抱きしめられる。
「リン…本当はこんなもの渡す予定ではなかったんじゃが…ワシら2人は素直で頑張り屋さんなお主が可愛くて仕方ないのじゃよ。これを受け取ってくれ。」
ドゥーチェからスっと出されたのは5ミリほどの宝石がついているネックレスだ。
どちらの世界でも見た事のない宝石で、見た事虹色に輝いている。
「綺麗……」
「私達2人の加護をこめたの。肌身離さず着けておいて。」
アースデイがドゥーチェからネックレスを受け取り、そのまま私の首へと着けてくれる。
ネックレスならどんな姿でいる時も着けやすいし、ずっと着けていようと心に決める。
「これで、準備はバッチリね…。名残惜しいけど、行ってらっしゃいリンちゃん」
今度は私からアースデイにぎゅっと抱き着く。
「幸せになるのじゃぞ、リン」
ドゥーチェにもぎゅっと抱き着いた後、ボウッと私の体が光り始めた。
転移が開始する。
今度こそ、私の体で転移だ。
「行ってきます」
その瞬間に意識が遠のいて行った。
もう転移は2回もされてるけど、スッキリした気持ちでの転移は初めてだ。