第二十五話 カフェ会議
「よし、じゃあ会議を……」
「あ、私はこれが飲んでみたいのです! えーっと、とーるばにあそいあ……?」
「あーそれ名前長いんだよね〜。じゃあ私はこれにしよっかなー。……クドウくんは?」
……うん、まずは頼んでからだな。
と、言うわけで日を改め、俺達はなるべく近場にあったカフェに来ていた。
なんだか長くてよくわからん名前がズラっと並んだメニューを渡され、俺はタジタジになる。えーっと、どれが商品名だこれ。
何か一つ必殺技の名前でも混じっていそうで心配である。
それを見て、カシワギさんはえ、と首を傾げた。
「……もしかして来るの初めて?」
「俺がこんなオシャレな店に、一人で入ると思うか?」
「私も、あんまりひとりじゃ行かないけど……」
「カオル様、勇者様は友達がいらっしゃらないので、しょうがないのです」
ほっとけ。
だいたい俺の周りの人間に、まともなやつは居なかったのだから、俺は悪くない。周りが悪い。
それを聞いたカシワギさんが、じゃあ、と、少し恥ずかしそうに言った。
「彼女とか……も居たことないの?」
「えっ、な、無いけど」
居るわけないだろ!――と叫びたくなるなるのを抑えた。
今まで彼女どころか、妹以外の女性と話したことがまず稀だ。
と、言うわけで、女の子しかも二人とカフェに入ることなど初めてなので、緊張しまくりである。
「へぇー、以外!」
そう言う彼女はなんだか楽しそうだ。
いやぁそれにしても、気分転換に外で会議なんてするんじゃなかったなぁ。
「勇者様、恋愛が出来るのは人間だけなのですよ? それをやらないなんて勿体ないのです」
「んな事言ったって、相手がいないんだから仕方がないだろ」
それよりも、早く注文して会議である。
俺は早急に注文を済ませ、そして落ち着いたところでゴホンと喉を整えた。
「えー、で、会議の内容は、『カシワギさんの魔法』についてだ」
「私の魔法がどうかしたの?」
「カシワギさんの魔法は、使うにはちょっと威力が強すぎる。だから、制御するための練習が必要だと思うんだ」
「でも、練習って言ったって、前公園でやった時はクレーターになっちゃったし、そこら辺じゃ出来ないんだけど……」
ああ、それも分かってる。
「だからどこか、山の奥とかに行ってみないか? 人目の気にならないところへ」
「 も、森の奥っ!? じゃ、じゃあキャンプとかやってみたいのです!!」
「いや、やらないし……、行くとしたら電車で日帰りできる所だ」
俺がそういうと、カシワギさんはスマホを操作し始めた。
「じゃあ、こことか?」
そして、俺に画面を見せてくる。
画面に映っていたのは、川城や俺の最寄り駅がある路線の、終電の駅だった。
確かにここなら、山も森も近い。
「お待たせしました〜」
――と、ここでさっき注文したコーヒーやらが来た。
名前の割に見た目は普通だな……。
俺はその付近の地図を粗方見て、頷いた。
「ここが丁度いいな。ナタリーも、それでいいか?」
「おいひいのです〜」
……ナタリーは夢中で乗っているソフトクリームを味わっていた。
まあ、言われてもわからないだろうし、いいんだけどね?
◇◇
――翌朝、俺とナタリーは駅に集まっていた。
「勇者様とカオル様と遠足……楽しみなのです!」
「いや、遠足じゃないって……、練習な練習。いずれカシワギさんの力が必要になるかもしれないし」
そうしていると、電車が来た。
乗り込むと、奥の方の席でカシワギさんがふりふりと手を振っていた。
「わぁー、なんだか前乗ったやつと違う感じがするのです」
それもそうだろう。前乗ったのは両端に長い席があるタイプ。
今回のは二つセットの席がズラっと列になっているタイプだ。
俺はカシワギさんが座っていた席の前を反転させて、向かい合わせ、そしてナタリーと共に座った。
「相変わらず、凄い技術なのです……。異世界の列車はもっと、原始的なのです……」
「あ、列車はあるんだ。どんなやつなの?」
「こっちの世界だと、蒸気機関車が一番見た目が似ているのです」
ナタリーの話を聞く限り、どうやら異世界はこっちで言う古典的なRPGの世界に似ている気がする。
是非一度行ってみたいものだが、そう簡単に移動できるわけでは無いのだとか。
カシワギさんが、ペットボトルのお茶を飲んでから、感嘆するように息を吐いた。
「へぇー、やっぱり異世界見てみたいなぁ。クドウくんもそう思うでしょ?」
「ああ。……モンスターとかいっぱいいそうだけど」
「勿論なのです! モンスターから悪魔、神様、それから亜人まで選り取りみどりなのですよ?」
モンスターと悪魔は要らないかな……、あと神様も邪神とか居そうだし除外で。
そんな会話をしていたら、喉が渇いてきた。
「……なんか買っとけば良かったな、飲み物」
「あ、じゃあ飲む?」
……カシワギさん、貴方それさっき飲んでましたよね……。
と、取っていいのか? 口つけていいのか?
カシワギさんはキョトンとしていた。
いやっ、気づけ!――それとも気にしない派ですか?
「あ、じゃあ私も貰うのです〜」
――と、悶々としているとナタリーが貰って飲み干してしまった。
え、遠慮のないヤツ……。




