表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/45

第十五話 新たなる一日

「じゃ、言ってくるよ」

「はいっ! 行ってらっしゃいませなのですっ!」


 欠伸をしながら、俺は家を出た。

 空は朝のせいか、特に寒い。しかし、空は快晴だった。


 あれから、もう数日が経った。

 俺は日課として、毎日家を出る前に庭にあるジャッキーのお墓に手を合わせている。

 あの後、ちゃんと頭もここに埋めてあげた。


 本当に、ジャッキーには悪い事をした。

 元はと言えば、俺への恨みから来たものが原因だった。

 それに――、ジャッキーに感謝しなくてはならない。

 母が無事だったのは、きっとジャッキーが守ってくれたからだ。


 ジャッキーが居なかったら、奴らは母に手を出していたに違いなかった。


「じゃ、行ってくる」


 俺は今度こそ出発した。

 ジャッキーと、――サツキが消えた家は、何処か少し寂しげに見えた。



 ◇◇



 学校は、なんだか前よりもマシになっているに思えた。

 学校を仕切っていた不良グループが、一斉に退学したせいだろう。


 教室は、三分の一の生徒がいなくなったのでガラガラだった。

 俺は、落書きのない、新しい机に座った。

 さんざん滅茶苦茶にされていた前の机は、勢い余って叩き壊してしまったので、新しいのを持ってきてもらうことに成功した。


 俺は突っ伏して寝たふりをすることもなく、適当に小説でも開いた。

 前は本なんか読もうものなら、すぐに取り上げられてトイレにでも捨てられた。


 だが、奴らはもういない。

 俺はもう、自由なんだ。



 ――とは言っても、俺への視線が止むことは無かった。

 しかし、前のように嘲るような視線ではない。

 なんだかむず痒くなる様な、そんな視線だった。


『やっぱアイツ、一人でキジマたち病院送りにしたん?』

『知らねー、でもそれだったらマジ凄いよね〜』


 ――ひそひそ話をしているつもりらしいが、聞こえてきてしまう。

 どうしてそんか噂が流れたのか分からないが……、いや、当たり前か。


 俺がキジマ達に旧校舎に呼び出されたのは、クラス中が目撃している。

 その翌日にキジマ達が退学なんて事になったら、誰でもそう考えるだろう。


 と、言うわけで俺は相変わらず好奇の目に晒されていた。

 でも、前よりはずっとマシだった。





「……はい、では今日の授業は終わりです」


 授業は、未だかつて無いほど正常に進んでいた。

 騒ぎ立てる奴らが全く居ないからだ。

 心無しか先生も、少し声が大きかった気がする。


 授業が終わった教室は、またガヤガヤと騒ぎを取り戻した。


 俺は、カバンを担いで教室を出る。

 無闇にここに残っていても、好奇の目に晒され続けるだけだ。



 外に出ると、冷たい風が吹いていた。


 ――今夜も、寒くなりそうだ。

 あれから毎晩、俺とナタリーは夜中に歩き回り、見つけ次第悪魔退治を繰り返してきた。

 しかし、俺達が全部倒しきれるはずも無く……最近世間では、猟奇的連続通り魔殺人事件だなんだと騒がれてしまっている。


 おかげで夜の警官の数が急増し、動きにくいったらありゃしない。


 でも、やめる訳にはいかない。

 ぐいっと伸びをして、家へと歩き始めた。



 ◇◇



「えいっ、えいっなのですっ!!」


 ――なにやってんのこの子。


 家に帰ってきた俺を出迎えたのは、ヘッドホンをつけてテレビゲームを嗜むナタリーだった。

 コントローラーを無茶苦茶に動かし、操作する度に身体まで傾かせている。


「おーい、ナタリー?」

「ちくしょうなのです! コイツ、生意気なのですっ!」


 聞こえてないようだ。

 それに、なんかいつもより言葉使い悪いな……。

 ナタリーって、ゲームとかやったら熱くなりすぎるタイプなのだろうか?


 と言うか、服装まで何だかラフになっている。

 下はスウェットに、上は白いパーカーを前を開けて着ていた。

 完全に普通の女の子の部屋着である。(普通の女の子の部屋着知らないけど)


 ちなみに耳や羽はちゃんとあるので、人間に変装している訳では無い。

 って事はやっぱりただのおしゃれだよな。

 凄い便利だなエルフの変身能力……。世界中の女性が欲しがりそうだ。




「あぁぁぁっ!! ま、負けたのです……この私がっ……」

「お、やっと終わったか」

「……って、勇者様っ! いつの間にっ!」


 ナタリーは一瞬で顔を真っ赤にして振り向いた。

 俺はズズズと、入れてきたお茶を飲見ながら言う。


「『コイツ、生意気なのですっ!』……からかな」

「え〜? 私そんなこと言ってないのですよ〜?」


 ぴゅーぴゅーと口笛を吹くナタリー。

 いや、言ってたよ。なんなら『死ねっ』とかも言ってたよナタリー……。


「そのゲーム、初心者には難しいよ。対戦系ゲームだし。……こっちの、二人協力系やらない?」


 俺は、テレビ横のゲーム置き場から、ソフトを一本取り出してナタリーに見せた。

 ナタリーはブンブンと首を縦に振った。

 どうやらゲームにハマったらしい。



 そんなこんなで、俺達はゲームやらなんやらで、時間を潰した。

 冬は、夜になるのがとても早い。

 ちょっと遊んだだけなのに、もう外は真っ暗になっていた。



 ◇◇



 すっかり深夜になった頃に、俺達は家を出た。

 外は凍えるように寒い。

 これで雪でも降ってくれればまだ景色的に綺麗なのかもしれないが、降ってないので、ただただ寒いだけだった。


 しかし、横で歩くナタリーは平気そうだ。

 ナタリーはまた新しい、可愛らしくて暖かそうな白い服を着ていた。

 ナタリーは白い髪なのでそれはもう真っ白だ。

 いや、似合ってるんだけど、目立たないそれ?


 そんな俺の心配を気にもせず、ナタリーはニヤニヤ笑いながら俺を小突いた。


「勇者様……自分で誘った割には、結構下手だったのです」

「しょ、しょうがないだろ? 俺だってそこまでやりこんでた訳じゃないし」


 とは言え、自分のミスでゲームオーバーになってしまったのは少々申し訳なかった。

 と言うかナタリー、上達早くないか?

 後半は完全に俺が足を引っ張っていた。


 ファッションも完全に現代世界に馴染んでいるし、どうやら適応力がずば抜けているらしい。





 ――と、そんなふわふわな空気で歩いていたが、ナタリーが突然立ち止まった。


「見つけたか?」

「はい、なのですが……、なんか、おかしいのです」

「……? おかしいって、何が?」


 ナタリーがなにか言おうとした、その時、



 ――ドガァァァァァァァァァァン!!



 ――と、落雷が真上に落ちたような、そんな音がした。


 空が、昼のように一瞬明るくなった。

 ナタリーが耳を塞いで縮こまる。

 何か、力の渦のようなものが吹き荒れている――、そんな感覚が肌に伝わってくるのを感じた。


「ナタリー、これは何だっ?」

「わ、分からないのですが、とにかくすごい魔力なのですっ!!」


 魔力? そんなものあるのか……、知らなかった。

 まあ名前からして魔法に関係していそうだ。

 ――じゃあこの爆発みたいな光と音は、なにか強力な魔法が発動されたってことか?



 そうしていると、光はすぐに納まった。

 俺はナタリーの元に駆け寄った。


「耳がぐわんぐわんするのです……」

「ナタリー、早速で悪いがそこに案内できるか?」

「はいなのですっ」


 ナタリーは、服はそのままでエルフの姿に戻り、ふわっと飛び上がって空から俺を先導し始めた。

 俺はジャンプして、建物の屋根やらを足場にしてそれを追った。






 ――暫く移動した先に待っていたのは、まるで爆弾が爆発した跡のような、小さなクレーターだった。


「……なんだこりゃ、悪魔が何かやったのか?」

「多分、強力な魔法が暴発した跡……のように見えなくもないのです。普通こうはならないのですが……」


 クレーターは、ちょうど住宅街の中にある公園にできていたので、公園のグラウンドが使用不能になったこと以外に被害は無かった。


 それから俺達は周りを探し回ったが、悪魔の姿は見当たらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ