江頭、出川のどんとこい!!
僕はいつも通りに登校した。
当然、曲がり角で慌ただしい女子とぶつかったが
好みのタイプではなかったので
お互い様と分かりつつも、謝っておいた
教室に着くと、ぶつかった人が驚いていたけど
僕は無視を決め込んだ。
つまらない授業が終わると、何が楽しいのか理解出来ないけど、複数の男子が出川をいじめ始めた。
助けるのは簡単なことだったが、面倒くさかったので放って置いた。
その日は、休み時間の度に、出川はいじめられていた。
特筆することは何もなく、今日も一日が終わった。
帰り道で、可愛い女の子が不良に囲まれていた。
流石に無視は出来なかったので、お巡りさんを呼んであげた。
僕っていいやつだろ。
え、これじゃあ退屈だって?
クールな男を気取っていたけど、、、、、
そうだね、動かないと話がすすまないよね。
君も気になることがあったよね?
実はぼくもだ。
じゃあ、夢見が悪いので早速いくとするよ。
いじめられっ子、出川のうちについたよ。
じゃあ、ちょっぴり格好いいとこ見せちゃうよ。
僕は出川家のインターホンを押した
インターホンを押すと、出川の母親らしき人がでてきた。
年は四十半ばだろうか、美魔女という言葉がぴったりの色気がただよう美人だ。
「ハーイ。あら、のんちゃんのお友達?」
のんちゃんってのはいじめられっ子、出川のことだ。
「いえ、友達ってことはないのですが、、、、、僕は江頭っていいます。出川くんのクラスメイトで今日はどうしても出川くんに伝えなきゃいけないことがありまして、出川くんは帰ってますか?」
「そう、友達じゃないのね。残念、、、、、のんちゃんなら帰ってるわよ。わざわざ来てくれてありがとう。良かったらゆっくりしていってね。」
「はい。じゃあお言葉に甘えて失礼します。」
出川宅にあがるとおばさんが
「のんちゃん。江頭くんがきてくれたわよ。」
とそんなに大きな声じゃなくても聞こえるだろってぐらいの大声で出川を呼んでいた。
出川はおばさんに返事をすると友達でもないのに
まるで僕が友達のように馴れ馴れしく
「来たんだ。まあ部屋にあがれよ。」
と普段の姿とは違う顔を見せた
出川の部屋に入ると出川はすぐに扉を閉めて鍵をかけた。
「おい、おい、なんで鍵をかけんだよ。変なことでもするつもりか?」
「家にまで来るなんてどういうことだ。非道に言われて来たのか?」
あ、非道ってのはいじめっ子の主犯ね。
「おお、いじめられてるだけあって被害妄想がすごいね。そんなんじゃないよお前の力になろうと思ってね。」
「本当に、、、、、いや信じられない。」
「別に信じなくてもししけど、ただ僕は自分のやりたいことをやるだけだ。」
「やりたいこと?」
「何回も言ってんだろ。いじめられないようにしてやる。」
「気持ちは嬉しいけど、、、、、そんなの無料だよ。僕を助けると君までいじめられるよ?」
「あ、お前、思ってたよりも優しい奴なんだな。人の心配が出来ないほど追い詰められてると思ったのに。」
「そんなんじゃないよ。僕は君が決して助けてくれないことを知ってる。けど、わざわざ家にまで来てくれてたんだ。僕がいじめられてることに心を痛めてるんでしょ?良かったらみんながいない所でいいから仲良くしてよ。」
「へえ、頭もいいんだ。助けてくれないならせめて秘密の友達を作ったほうが気がまぎれるってか?」
「そのとうりだけど、そんなにハッキリ言わなくても。」
それから、僕は出川に興味を持って、色々と話を聞いた。
いじめられてる奴なんて暗くて陰険だと思っていたけど、意外と明るくて話しも面白かった。
まあ、いわゆる普通の好青年って奴?
いじめられてるのは単純に運が悪かっただけみたいだ。
そんなことを考えているとおばさんが
「のんちゃん。ご飯よ。せっかくだから江頭くんにも食べていってもらったら?」
「だって。食べていけば?」
「そうか?じゃあお言葉に甘える。」
出川と一緒にリビングに行くと、おばさんは僕にご馳走するつもりだったのかレストランのような
豪華な夕食が用意されていた。
「おお、凄い美味しそうですね。」
「ありがとう。飲み物持って来るからすわって待っててね。」
「はい、待ってます。」
おばさんは飲み物を持って来ると台所のほうへ引っ込んでいった。
「じゃあ、食べようか?」
「二人分しか用意されて無いみたいだけど。おばさんは一緒に食べないのか?」
「気を使ってんだろ。冷めないうちに早く食べよう。」
「ふーん。そういうもんか。」
おばさんが作ってくれたご飯は、驚くほど美味しかった。ステーキは柔らかくて、サラダも新鮮で
特にドレッシングが美味しくて、米も僕の好みの硬めだった。
僕と出川が食べ終わると、見てたかの様なタイミングで食器を片付けてくて、デザートの梨まで持って来てくれた。
ここまでされるとまるで王様にでもなった気分だ。
「ご馳走さまでした。美味しかったです。」
「そう。そういって貰えると作ったかいがあったわ。」
「出川。ご馳走さまって言わないのか?」
僕が不思議そうに言うと出川は恥ずかしそうに
「ああ。ご馳走さま。」
と言った。おばさんは嬉しそうに
「あら、珍しい普段は言わないのに。でもそうよね、今まで当たり前に受け入れてたけど、食べ物と作った人にちゃんと感謝しないと。お父さんにもちゃんと言っていくように言っておくから、これからはのんちゃんもちゃんと言いましょうね」
「幼稚園児かよ。」
「あら、幼稚園児でも出来ることなんだからやって当然でしょ。」
出川は何も言い返す言葉がなくて黙った。
「おばさんの勝ちだな。」
僕の言葉を聞いたおばさんは得意気に
「そのつうり~」
とおどけていた。今まで好印象だったおばさんだが調子に乗られると不思議と腹が立った。
それからおばさんはウザさ全開で積極的に話し掛けてきた。
食事をご馳走してくれたのに積極的に話をしてくるおばさんが何故か気まずかった。
無料に話をする母親が息子に嫌われるのはこういうことかと理解した。
早く家に帰りたくなってきた僕は本題に入った。
「すいません。お父さんは何時帰られますか?」
「江頭、父さんを知ってるのか?」
「いや、知らない。」
僕がそう言うと変な空気が流れた。
おばさんが少し警戒したのか
「今日はおそいわよ。何か用事?」
とさっきまでとは全く違う声の高さになつていた。
「はい。でも遅いならおばさんから伝えてくれれば。」
「お宅の息子さんいじめられてますよ。」