日記20
愚連隊追放
大震災があった。
連日ニュースが流れ、とんでもない数の死者が出た。
災害派遣法に則り、最高司令官である内閣総理大臣からの出撃命令が自衛隊に下った。
クソみたいな内閣総理大臣で、兵站などお構いなしに、全ての予備役を含める自衛官が投入された。
武官、文官、全く関係無かった。
私は震災が起きる前の、選挙前にネットで「あいつら嘘つきだぞ!あいつらが言ってる事は根拠も財源も全くない!危険だ!」などとネット中継で小物を作りながら言っていた。
「ネトウヨ乙」
「今のクソみたいな現実を変えるんだ」
「お前の頭がおかしい」
「今の政権にお灸をすえてやる」
こんな事をチャットで言われて、イライラしていた。
そんな中で起こった大震災。
防波堤を築くための、工事の予算を政府が削り、建設されなかった場所に津波が押し寄せ、大惨事となった。
小物作りの予約は大量にあった。
大震災の後、予約をしてくれていた人の、数人が連絡が取れなくなった。
そんな中で私に電話が掛かってきた。
「国家存亡の一大事に、貴方の力を貸して頂けませんか。」
電話の相手は防衛省職員だった。
「分かりました。行きます。いえ、行かせてください。微力ながら協力します。」
本心だった。
電話の相手は本当に申し訳なさそうに、謝りながら電話を切った。
私は小物作りの予約先に、自分が予備自衛官であることを明かし、もう帰って来れないかもしれない事を伝え、全ての予約をキャンセルした。
私の所属している愚連隊にも通知が来て、出撃は2ヶ月後になる事が原隊から伝えられた。
「これで私の人生も被爆しておしまいか。まあいいや、これも民意って奴だ。」
私に暴言、暴力、罵声、様々な嫌がらせをしてきた日本国民たち。
そんな連中を助けて死ぬ。
それで私の人生はおしまい。
私は変に乾いた笑いが出て、床の布団に転がった。
2週間後に出撃するぞという時に「出撃中止」の命令が来た。
内閣総理大臣、最高司令官からの命令だった。
理由は「これ以上の支援は必要ない」というものだったが、災害派遣による自衛隊の社会的な地位が上がったという、政治的な理由もあったと思う。
「ふざけんな!こっちは仕事キャンセルして!死にに行くつもりで用意してたんだぞ!自営業者の損害保障あんのか!」
私は上官に食って掛かった。
他の愚連隊所属の多くの自営の人も同じだった。
保障など無かった。
私は大損害を被った。
しかも何一つも保障は無かった。
これが民意かと思うと、政治に対して無頓着な日本国民と、それを煽るメディアに対して、ひどく苛立っていた事を思い出す。
その後、予備自衛官、即応予備自衛官の存在が広く世間様に認知され、訓練は常備自衛官以上の過酷なものになった。
そしてある出頭日、私は訓練中に、人生最悪の怪我をした。
何度もやったぎっくり腰、しかも破滅型のぎっくり腰を起こした。
10日間立ち上がれず、右脚に後遺症が出た。
その怪我で、私は訓練に参加出来なくなり、出頭不可能による除隊となった。
後遺症の保障など何一つ出なかった。
私はまた居場所を失い、更に健康も失ったのだ。
2017.7.29 土曜日 平成29年




