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第4章 ハルナside




「それじゃハルナちゃん、気を付けてね」



「はい。

お邪魔しました」



「また来てくれると嬉しいわ。

カイも喜ぶと思うから」



「はい、ありがとうございます」






カイくんによく似た美人なお母さんに別れを告げ、


あたしはカイくんの家を出た。







カイくんはカップケーキを平らげてくれた。


味見はしていないけど…美味しくないカップケーキを。


しかも嫌そうにではなく嬉しそうにだから、あたしまで嬉しくなってしまう。


優しくてかっこいい、紳士的な自慢の彼氏だ。





「さーて、編み物しなくちゃ!」





カイくんの家に行く途中で買った、

編み物の本や毛糸たち。


悩みに悩んで、カイくんに似合う色を見つけ購入した。


大きな出費はなく、良いお買い物が出来たと自己満足する。






「カイくん、喜んでくれるかなぁ」





周りの目を気にせず独り言を言いながら帰宅する。


カイくんの嬉しそうな顔を想像するだけで嬉しくなっちゃう。



早めに帰らなくちゃ!





課題は出されていないので、

夕ご飯を食べ終えたあたしは早速編み物に取り掛かる。



まずは買ってきたテキストを見て学ぶ。


初心者でも出来る、と表紙に書いてあり、

尚且つ評判が良いって書店員さんも聞いたら言っていたし。


信頼出来るテキストだ。






「ハルナー?また課題?」



「ううん、違うよ」





部屋に入ってきたお母さんにテキストを見ながら答える。


お母さんは覗き込んで声を上げた。





「ハルナが編み物なんて珍しいわね。出来るの?」



「なんとか頑張ってみる」



「何を編むのか知らないけど、血まみれにしないのねー」



「ホラーなこと言わないでよ…」





まぁ不器用なあたしだから、

血まみれのマフラーってのもあり得ない話じゃない。


…ちゃんとテキスト読み込まないと。






「誰に編むの?カイくん?」



「うん。

クリスマスプレゼントにするつもりなんだ」



「何を編むの?」



「マフラー。


今日風邪引いて早退しちゃったから、

これ以上冷やさないようにしなくちゃいけないなって」



「そう。

じゃあ頑張るのよ。


ハルナこそ風邪引かないようにね」



「うん!

ありがとう、お母さん」







あたしはテキストを見て必死に編み始める。


最初は難しかったけど、慣れたらサクサク編めた。






「よーし!一気に編んじゃおうっと」






誰かに向かって宣誓したあたしは、


テキストを閉じて編み始めた。


隙間なく…ピッチリ…綺麗に。





心を込め、編んだ。





そして編み続けること5時間。


深夜2時。






「でーきたっ!」





あたしは編み終えたマフラーを掲げた。


我ながら綺麗に編み込めたかも。


初めての経験だったけど、上出来。





自分を褒め称えた後は。





テキストや毛糸と同時に買ってきたラッピング袋に、

綺麗に畳んで詰める。


ここでグシャグシャにしたら全てパア。


何度も畳み直しながら、綺麗に詰めて、リボンで結んだ。





それを潰れないよう丁寧に、通学鞄に仕舞う。


仕舞うために教科書をロッカーに置いてきた甲斐があった。


筆箱や財布、明日のお弁当などしか入らないことになっている鞄に、

カイくん宛てにプレゼントを詰め込んだ。





クリスマスまで日にちはあるけど。


その間に風邪引かれても困るので。


早めにあげることにした。





カイくん驚いて喜んでくれるかな?


何せサプライズだから。


驚くだろうなぁカイくん。





仕舞い終えたあたしは、


お風呂などに急いではいり、そのまま眠りについた。





次の日。


朝5時起きしたあたしは、急いで朝ご飯を食べる。






「ハルナ早起きねぇ」



「早めに学校行きたいからね」






お弁当を包んでくれるお母さんが笑う。


あたしも一緒に笑い返した。





カイくんは登校時間が早い。


いつも1番最初に到着している。


それよりもあたしが早く行き、誰もいない教室でプレゼントを渡すのが、

あたしの早起きの目的。





いつもより丁寧に髪の毛を梳かし、目立たない黒いリボンをつけてみた。


お化粧は校則で禁止されているから諦める。


だけど丁寧にリップクリームを塗り、プレゼントの入った袋を持った。






「行ってきまーす!」



「行ってらっしゃい、気を付けて」





お母さんに手を振り返し、あたしは学校への道を歩き出す。


早く、早く着かないと。


自然と小走りになる。






会いたいよ、カイくん―――。






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