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第2章 ハルナside




あたしの彼氏・今村魁くんと


その親友のカネっちが笑い合っているのを見て、


あたしは笑みを漏らした。





そういうあたしも、


さっさと課題を終わらせないと。






「本当に助かったよリナ!」



「お安い御用だよハルナ。

ハルナにはいつも助けてもらっているもん!」



「ありがとう!」





あたしの親友で、カネっちの彼女であるリナが笑う。





一時あたしは、

このクラスで空気のような存在だった。



いじめられているわけではない。



ただ必要とされていないだけ。





原因はあたしにあった。





あたしは話すのが大好きだけど下手で、


「ハルナの話はつまらない」と


リナに言われたことがきっかけで、


一時期憂鬱な気分で学校生活を送っていた。




そんなあたしは、

ある時居眠り運転をしていた車にぶつかられて。


足を骨折し入院となった。


そこで出会ったのが――カイくん。





カイくんはあたしが話すと、

いつも好奇心旺盛な瞳で聞いてくれた。



病室から滅多に出て来なかった彼は、

外の世界を知らなくて。



知っているあたしの話を聞くのが凄く楽しかったみたいで。



あたしは好奇心旺盛な瞳が嬉しくて、

いっぱいいっぱいカイくんに話してあげた。





そして今では、

彼氏彼女――恋人の関係にまでなった。



もっと沢山話が出来るよう、

あたしは上手く話せる方法を学び。



今ではリナに


「ハルナの話は面白い」と


言ってもらえるまであたしの話す技術は上がった。





カイくんのお蔭で、

あたしは多くのことを学んだ。



生きてさえいれば、

誰しも幸せになれるということも。



大事な人のために、

人はいつでも変われるんだと言うことを。






あたしは大事な彼氏に


そう教えてもらった。





今ではリナの彼氏のカネっちと


楽しげに話している。


明るいムードメーカー的存在のカネっちと


冷静で突っ込みの上手いイマっちことカイくんは


とても良いコンビだと思う。






にしても最近寒いなぁ。


さっきカイくんも咳していたけど。


あたしも風邪には気を付けないと。





「ゴホゴホッ」



「おっ?

イマっち大丈夫か?」



「うん…多分風邪だと思う」



「気を付けろよ?」



「うん」





…やっぱり気になる。


風邪には何が良いんだろう?


やっぱり睡眠とあっためること?






あたしは教室に掛けられたカレンダーを見る。


今は……12月。


プレゼントをあげるには…とっておきの季節。






カイくんにマフラーでも編んであげようかな。





そうと決まれば善は急げ!


今日の放課後、

毛糸とか必要なもの買いに行こう。


…その前に編み方の本を買わないと。






あたしは得意気にシャーペンをグルンと回した。







カシャンッ





「ちょっとハルナ?

あんた何しているの?」



「ごっめーんリナ」






ペン回しなど慣れないことをするもんじゃないな。


ぶっ飛ばしてリナに拾われちゃったんだから。





1時間目が始まる。




カイくんは課題を写し終えたみたい。


あたしも最終問題はリナに見せてもらった。


そしてカネっちはリナに借りて写していた。




…まぁカイくんの書き終わった後だと、


カネっちの提出が間に合わなかったもんね。






「それじゃ教科書153ページを開けー」





課題を先生に提出し、

授業がいつも通り始まった。


あたしも言われた通り教科書を開いていると。





「ゴホゴホッ…」





後ろから咳が聞こえて振り向く。


先生の説明し始めた声も止む。




「どうした今村。風邪か?」



「多分そうです…ゴホッ」



「じゃあ保健室行って来い。

今風邪が流行っているみたいだからな。


誰か付き添いー」



「あたし行きます!」





迷わず手を挙げると、先生に許可を貰えた。





「カイくん行こう?」



「うん……」






あたしたちは一緒に教室を出た。







「ゲホゲホッ…ゴホッ」





保健室には誰もいなかったので、


あたしが体温計を探して渡してあげた。


その間も体温計を挟んでいる間も、

カイくんは咳をしていた。





『ピピピッピピピッ』



「鳴ったね。見せてくれる?」





渡された体温計に表示された数字を見て


――思わず体温計を落としそうになってしまった。






「38度5分…。カイくん熱あるよ」



「アハッ…どうりで熱いはずだ」



「寝てて寝てて」






笑い事じゃないのに。


あたしはカイくんを寝かせて冷えピタを探す。





冷えピタは見つからず、

代わりに透明な袋と氷があったので、


中に氷と水をいれて氷のうを作ってあげた。





…何故こんな原始的なんだろうか?






初めて作った氷のうを


カイくんのおでこに乗せてあげる。





…どうしてもズリ落ちてしまう。





結局あたしが支えることにした。



ずっと持っていると冷たくてたまらないので、

見つけた軍手をはめて持った。






「……ねぇカイくん」



「ん?」



「定期検査の結果ってどうなの?」



「別に…異常なしですけど」



「そっか。

薬はちゃんと飲んでる?」



「飲んでますよ」






生まれつき心臓が弱かったというカイくんは、


退院した今でも、


月に1回の定期検査と、

1日3度の薬を飲むことは義務付けられている。





「……ただ…」



「ただ?」



「僕…元々体弱いんで。


もしかしたら…こういう風邪は何度もあるだろうって」






カイくんは寂しげに呟いた。






「これからも迷惑かけると思いますが…」



「気にしないでよ。

あたしがずっと支えて行くから」



「……ありがとうございます」





カイくんは嬉しそうに笑うと、


そっと瞼を閉じて眠ってしまった。





「おやすみ…カイくん」





氷のうを持つ手が辛いかも、と思ったけど


カイくんのこの寝顔見ながらだったら、


凄く幸せなのかも……。







「…早くマフラー編まないと」





何色が良いかな?


カイくんに似合う色は何色かな?


どんな模様が良いかな?


…あんまり難しくないけど可愛い模様が良いな。


今月中に間に合わせたいから、

あんまりゴチャゴチャした編み方だと時間がかかる。


あたしって不器用だからさ…。






色々と本読んで研究しないと。


あたしは今日の放課後本屋へ行くことを決意したのだった。






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