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第1章 カイside

続編です。






ガラッと音をたて教室へ入る。


誰もいないこの空間が僕のお気に入り。





机と机の間を縫うように歩き、

自分の机へと辿り着く。



机の上に肩にかけてある鞄を置いて、

中から教科書やノートたちを取り出して仕舞う。



重たくて、

学校のロッカーに仕舞いっぱなしの資料集たちを取りに、


教室の後ろに設けられたロッカーに取りに行く。



全ての授業の教科書たちを揃え終え、

そこでやっと席に着く。






あぁ…なんて幸せなんだろう。


ハルナさんたちは毎回こんなことをしていたのか。



何てことのない行動が嬉しくて、思わずガッツポーズを決めていると。






「何しているの?」



「ぅわっ!?」





いつの間にか教室に来ていて、

クスクスと僕の傍で笑っているのは。





「脅かさないでくださいよ…ハルナさん」





僕の大事な彼女である。






辻村つじむら晴菜はるなさん。


僕こと今村いまむらかいの彼女。


笑顔が可愛らしい優しい自慢の彼女である。






「早いですねハルナさん」



「たまにはね?

そうしたら良いの見られて良かった」



「わ、忘れてくださいよ~!」



「忘れること何て出来ません~」



「ハルナさ~ん!」



「あっそうだ。

カイくん今日の課題終えてきた?


もし良ければ、

最後の問題見せてほしいんだけど…」





パンと両手を合わせてお祈りしてくるハルナさん。





「え…?か…だい……?」



「ん?

……まさかとは思うけど、カイくん?」



「や、やってません……」



「だ…誰か最後の問題教えてー!」





僕はハルナさんから

課題であった数学のノートを見せてもらう。



ハルナさんは

登校してきたクラスメイトにノートを頼んでいる。






頼りない彼氏で申し訳ないです…本当。




急いでハルナさんから借りたノートを写していると。






「コホコホッ」





ほんの少し咳が漏れた。


一旦手を止め溜息をついていると。





「カイくん風邪?」



「え?

ええ…まあ……多分…」



「まぁ今の時期寒いもんねぇ」





今は12月…冬真っ只中の季節。


雪は滅多に降らない季節だって言われているけど、

いつ降るかわからないほど


ここ最近の天気は安定していない。






「風邪引かないようにね。無理しないで」



「わかりました」





再び右利きなので右手を動かし、

課題を1時間目に間に合うよう写す。



何で1時間目が提出期限なんだろう?


どうせなら今日中とかにしてほしかった。




文句ばっかり言っても仕方ない。


僕は余計なことは考えず、ただ写すことに専念した。







僕とハルナさんが出会ったのは、


桜が綺麗なある春の季節。





僕は生まれてすぐに心臓に異常が見つかり、

学校には行けず入院ばかりの毎日を送っていた。



窓から見える通学風景を

いつも羨ましさを秘めながら見ていた。



だけど僕にとって、

それは叶わない…難しいことで。



ただ憧れて、

いつか死ぬであろう未来を待って過ごしていた。





そんな僕の真っ暗な毎日に光を差し込んだのが、

現在の僕の彼女・ハルナさん。



大げさな言い方かもしれないけど、

ハルナさんとの出会いが


僕の毎日を変えてくれたんだ。





ハルナさんは事故に合い、

足を骨折してしまったため入院が決まった。



そして神様のイタズラなのか、

僕はハルナさんと同室になった。



同年代の…しかも異性と話したことなど、

皆無に等しかった僕だけど。



ハルナさんは面白い話題などない僕に、

様々な楽しい話をいっぱいいっぱい聞かせてくれた。



そして僕の中にある決心が芽生えた。






ハルナさんが見ている風景を、


僕も一緒に…隣で見てみたいと。





それから病状が悪化したり、

色々と困難があったけど、



僕の病気は手術の結果、完治に近いほど治り。



現在こうして、

ハルナさんと付き合えたり、


ハルナさんと同じ景色が見えている。






「イマっち!

今日昼休みサッカー約束な!」



「わかった!」



「やりーっ!

イマっちがいれば百人力!!」






今では

今村という名字から


クラスメイトからは“イマっち”とあだ名を付けられ。



休み時間のサッカーに誘われている。






「イマっち~」





情けない声を出してやってきたのは


数多くいる友達の中で最も仲の良い


通称カネっち。






「何?どうかした?」






ハルナさんがいてくれたから


僕はこうして多くの友達と出会い、


ずっと憧れていただけだった風景に


僕も仲間入り出来たんだ。








「お願いだ!

課題のノート見せてくれ!!」



「あ~…ごめん無理」



「イマっちひでぇ!

お前それでも俺の友達か!?」



「だって僕だって忘れたんだもん」



「……?じゃあこれは?」



「ハルナさんのノート」



「あぁ辻村ちゃんの。

可愛いよなぁ辻村晴菜」



「……カネっち?」



「あぁーやめろ!

その笑顔はやめろイマっち!


わーってるって!

辻村ちゃんはイマっちのだって」



「……まぁ話を戻すと。


僕も今日課題を忘れてね。

ハルナさんに見せてもらっているんだ。


つまりこのノートはハルナさんのを写したんだ。


僕のを借りたいのなら、

ハルナさんに許可を取ってね」



「わかった!」





カネっちは元気良くハルナさんに話しかけに行く。


何を話しているかわからなかったけど、

カネっちは元気良く戻ってきたから、


大体のことはわかった。






「辻村ちゃんから許可貰った!」



「じゃあ僕の写し終わったら見せるね」



「心の友よーっ!」






有名なアニメの台詞を叫んだカネっちは


かなりテンションが高い


面白いムードメーカー的存在の


僕の大事な友達だ。









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