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アイリーン・バートレット公爵令嬢

愛してる、愛してる、『あの人』だけを愛してる____



私は、二つの世界での異なる記憶があります。

一つは、この世界での。

もう一つは、この世界とは異なる技術が発展した場所『地球』と呼ばれるこことは異なる世界のもの。

どのようにして死んだのか分かりませんが、ただ『あの人』を愛しているのだけは心の底から覚えているのです。

この記憶を思い出す前の私は、ごくごく普通の我がまま貴族令嬢でした。

親に甘え、欲しい物が何でも手に入ると思う、傲慢な少女。

他者を傷つけてもお構いなし。そんな、少女だったのです。

私がこの記憶を思い出したきっかけは、正妃様が主催する、それも高位貴族の子どもが参加を義務付けられた『お茶会』でした。

そのお茶会で私はいつものように、正妃様のご子息である第一王子様ラディスラフ・ブディンスキー様に婚約者だからと言って纏わりついていました。

あまりにも傍若無人に振舞い、五月蠅く纏わりつく私にキレた第一王子様は、私を蹴り付け池に落としました。

私は、溺れてショックで気絶してしまいました。

気が付けば、自宅のベッドに寝ておりました。

執事アルバートによると、三日間目が覚めなかったようです。

両親はというと、弟の我がままにいつも通り、つきっきりで我がままを叶えているそうです。

記憶を思い出した手前、両親が私を心配しないのにどうとも思いません。

アルバートは私を心配そうに見て、私の父と母を呼んでこようかと訊いてきたのですが、私はそれを断りました。

そして、休みたいから一人にして欲しいと言いました。

今でも趣味なのですが、記憶の中の私も小説を読むのが好きでした。

その記憶の中で、『悪役令嬢に転生』というのがありました。

現在の状況を鑑みるに、私はきっとその『悪役令嬢』という立ち位置なのだと思います。

記憶を思い出す前の私に、その悪役令嬢の幼少時がそっくりでしたから。

記憶を思い出した私は、第一王子様など眼中にありません。愛してるのは、『あの人』ただ一人だけ。

記憶の中の私の読んだ小説では、悪役令嬢がいい子になると興味を持ち近づいて来て、婚約破棄ができないや目をつけられて迷惑をこうむるなどがありました。

それだけは、私は避けたい。なので、今までと同じ態度を続けましょう。

貴族令嬢としてはどうかと思うのですが、国と王家に狂信的な忠誠を誓う五家の令嬢として、第一王子を見限ろうと思うのです。

貴族としては、政略的な婚約は避けられないでしょう。

ですが、国と王家に忠誠を誓う身としてはあんな危うい人を次期国王として考えると吐き気がします。

私が邪険に扱われたことは関係ありません。現に、邪険に扱われても仕方ない態度を取り続けていたのですから。


数日後、国王様と正妃様が直々に私に謝罪に来ました。

そこまでして頂かなくてもと思いはしたのですが、せっかく来て下さったのに拒否することはできません。

偶然なのか必然なのか今日は両親が王都まで、弟のための買い物に行っています。

記憶を思い出してから、考えていたのです。

両親は、我が家の財政状況に似つかわしくない金遣いをしていないかと。

アルバートに頼んで、隠居したお祖父様に尋ねてもらいました。

そしたら、お祖父様の隠居に着いて行った前執事長セバスチャンが来ました。

セバスチャンが言うには、お祖父様は現在の我が家の状況に大変ご立腹である様子。

「隠居を先延ばしすればよかった」と怒っていると。

セバスチャンが、現在お祖父様が把握している我が家の状況を教えてくれたのですが、なるほどなと思いました。

こうして、両親と弟を見限ることに私は決めたのです。

そして、応接間に行くと来ていたのは国王様と正妃様以外にもいました。

お祖父様と前国王様もいたのです。

これは、腹を括らなければなりません。

私は思い切って、『見限りプラン』を話しました。

お祖父様と前国王様は嬉しそうに笑って、この『見限りプラン』を成功させろと言って下さいました。

国王様と正妃様には、自分たちが説得すると言って。

これは、正直私にとって『生き残るか死ぬかのか分からない』作戦。

失敗すれば死です。

でも、それでもいいかと思ってしまいます。

だって、『あの人』に会えないのですから。


作戦決行から数年経ちました。

国王様と正妃様の予想を裏切り、うまくいっています。

国王様と正妃様は、作戦が失敗する方を願っていました。

だって、作戦が成功すれば自分たちの息子の罪がすべて明らかになり、自分たちの息子がその罪の責任を取らなければいけないのです。


私は、正妃様が主催するするお茶会の席で第一王子様の思い人メリア・エモニエ侯爵令嬢に嫌がらせをしました。

第一王子様の耳に確実に入るようにです。

彼女には恨みがありませんので、私がする以外の嫌がらせは確実に妨害して、裏から手を回したりしました。

両親と弟がグルになってしている不正などの証拠も確実にアルバートが掴んでいます。

第一王子様の権力に群がる貴族たちの不正などは、お祖父様とセバスチャンが。もちろん、メリア様が関わっていない証拠もです。


そして来る、第一王子様とその権力に群がる貴族たちが主催する『私の断罪の日』。

私は問答無用に地下牢に監禁されました。

私がやってもいない不正の証拠を自慢げに言い断罪し、少々辟易しました。

あいた口が塞がらないほど呆れるって、こういうことを言うのですね。

私のことを心配した、メリア様が私の様子を見に来ました。

メリア様の目を近くで見て、確信しました。

あの記憶の中の『あの人』だって。

涙が溢れて止まりません。やっと、『あの人』に会えたのですから。

メリア様も私が誰なのか分かったのでしょう。

「必ず助けるから、待っていろ」

と私の手を握り言って下さいました。

なので、私は最後の仕上げとしてこれからすることを頼むことにしました。


数日後、メリア様が私を迎えに来て下さいました。

私を地下牢から連れ出し、警備兵たちを倒し、ここから私を連れ去ってくれたのです。

これから向かうのは、我が領の新しい中心地で屋敷。

ここには、弟の癇癪や我がままで止めさせられた使用人たちがいるのです。

もともとの屋敷にいた、優秀な人材もここにいます。

どういうわけか、みんながここについて来てくれたのです。



ここには、みんなや『あの人』いえメリア様がいるので、ここからが私の本当の人生が再び始まるのです_____

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