『狂王の肢体』
三人は元駐屯基地から西の町"オリビア"に向かっていた。
彼らが向かうオリビアは中規模都市である。
元々は帝国領だったが、帝国崩壊後に共和国が樹立してからは共和国領土ではなくなった。
代わりに七騎士の一人である"長槍のオセロット"が支配するリビエイラの領地に組み入れられていた。
特に資源という資源はないが、リビエイラの首都に行く道中の中間地点として使われている。
ゴートはずっと不思議に感じていたことがあった。
それは自分の今の状況にも関係していることだった。
「一つ聞きたいことがある。共和国に行きたいだけなら基地から直接南に下って港町で船でも借りた方が良いんじゃないのか?実際、俺はそうやって地下牢から運ばれて来たのだが。」
ゴートはオリビアに通じる道を歩きながらマリアに問いかけた。
「確かにそれが最短の近道です。でもそれでは駄目なんです。私たちは絶対に通らないといけない場所、絶対に倒さないといけない敵がいるんです。」
マリアは三人のなかで先頭をきって歩いていた。
ゴートからはマリアの姿ではなく彼女が担いでいた十字架がユラユラと揺れているのだけが見えていた。
「七騎士か?」
「ケインを倒してチャンチャンってことにはならないのよ。ケインがいる共和国の首都を護るために七騎士は自分達の国を配置した。しかもご丁寧なことに七騎士の全員が"狂王の肢体"を持っている...。」
レベッカはゴートの横を歩いていた。
「"狂王の肢体"って何だ?」
「ジント様を殺した後にケインと七騎士はその御体を腑分けにした。それが大体八つでその肢体の一部のことを奴等は"狂王の肢体"って呼んでる。それに細かい皮膚とか骨のかけらとか内蔵を入れたらもっと多くなるわね。」
「それが一体何なんだ?ただの肢体だろ。」
「力が宿ってるのよ。元から人外の力を御持ちになっていたから、恐らく遺体になってもその力が宿っているんだと思う。」
マリアは突如歩みを止めた。
「絶対に肢体を集めなければならないんです。亡き父の為に...。」
「じゃあ集めた肢体はどうするつもりだ?今度は君が狙われるかもしれないんだぞ。」
「まだ考えていません。でも何かしらの結論は必ず出すつもりです。」
「そうかい...。じゃ、とりあえずあの町に入りますか。」
そういうとゴートは前方を指差した。
そこには町が姿を現していた。