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『いつかの思い出』

レックスとの戦いから数日が経過していた。

あれからゴートは久しぶりにベットに横になっていた。

「眠れないんだから休むのは無駄だ」と言ったが、マリアに無理矢理ベットに横にさせられた。

身体中が酷く痛んだ。

普通の人間なら気絶するか、痛みのあまり叫び続けるかどっちかだろう。

一応、人間らしく最初は叫んだり唸ったりしてみたが、横で寝てたレベッカから「寝てるか黙るかどっちかにしろ」と注意されて仕方なく目を閉じた。


何年ぶりかわからないが、ゴートは夢を見た。

鎧をつけていない幼い頃の自分と見たこともない誰かとがボール遊びをする夢だった。

次に見たのは厳格そうな男性、優しそうな女性、そして一緒にボール遊びをした誰かと四人で食卓を囲む夢だった。

しかし厳格そうな男性は消えてなくなり、残った女性の顔はみるみる醜く変わっていった。

夢の最後で泣き叫ぶ二人の子供に何かを植え付けるおぞましい女性の姿だった。


ゴートはベットから跳ね起きた。

「あら?お目覚め?」

横で寝てたはずのレベッカが何処からか盗み出したワインを煽っていた。

ゴートの横にはしっかりと手を握って看病してくれたのであろうかマリアが眠っていた。

ゴートは再びベットに横になった。

「ちょっと夢を見てた。」

「あんたも夢、見るんだね。」

「内容は覚えてないけどな...。ところで怪我は大丈夫か?」

ゴートは横になりながら、レベッカの方を見た。

「私はもう大丈夫だし、マリアも軽傷で済んだ。心配なのはあんたの方よ。そのー...、あれは大丈夫なの?」

「鎧の話か...。まだ痛むがレックスに剣刺してた時よりはましになった。お前は怖くないのか?」

「それは怖いに決まってんじゃない!あんなもんいきなり見せられたらね!でも、だからってあんたを...、ゴートを化物なんて言うことは出来ない。だってあんたは私たちを命懸けで助けてくれたんだから。」

「わからない...、何時か俺もレックスみたいにお前らに牙を剥くかもしれないぞ。」

レベッカはベットから身を乗り出してゴートを覗き込んだ。

「ゴートはさ、今手を握ってる女の子を裏切ることは出来るの?」

「そんなことしたくないに決まってる!」

「だったら今のゴートを信じな。私も、そしてマリアも今のあんたの言葉を信じるからさ...。じゃああたしは眠いから寝る。」

レベッカはまた眠り始めた。

ゴートはマリアを起こさないように静かに起き上がり、マリアをベットに寝かしつけて部屋を出ていった。


あの戦いから何日たったのかゴートにはわかっていなかった。

それでも町の活気やゴートに対する町民の態度を見ていると、少なくとも自分達がやったことは間違っていないという確証は持てた。

ゴートはそのままミナに会った教会に向かった。

教会はだけは町の活気から取り残されたのかと思えるほど静かだった。

ゴートは教会の椅子に座って茫然としていた。

「おじちゃん、大丈夫?」

ゴートの後ろから声が聞こえたが、ゴートは振り替えることなく応えた。

「ミナか?こんな時間に出歩いてちゃ町長に叱られるぞ。」

「うん、ちょっとお墓参りに来たんだ。もう帰るよ...。」

「そうか。なぁ、ミナ?お父さんとお母さんの思い出は大切にするんだ、そしてこれからの楽しいことはもっと大事にして生きていくんだぞ。」

ミナはゴートに近づいて手を握った。

「ありがとう、おじちゃん。」

「そうだ!言い忘れてた!俺はまだおじちゃんって年じゃないんだ。だからゴートって呼んでくれ。」

「じゃあゴートさん、私からも一つだけ...。」

ミナはゴートの耳元で囁いた。

「何か変な臭いするからちゃんとお風呂入った方が良いよ...。」

「え?えー!」

ゴートは鼻を自分の身体に近づけて臭いをかぐ素振りをとり、それを見て初めてミナはゴートの前で笑顔を見せた。

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