プロローグ『帝国の落日』
初めまして、ロンロンと申します。
まずはお手にとって貰い(?)ありがとうございます。
前々から「何か書いてみたいなぁ...」と漠然と思い、初めてこういうかたちで書かせてもらいました。
その昔演劇の脚本は書かせてもらったことがあるのですが、こういうのはとても新鮮に感じました。
何分こういう文章を書くのが久々で誤字があったり、展開が面白くないとか、色々あるとは思いますし、お目汚しかもしれませんが、感想とか頂けると嬉しく感じます。
「皇帝を探せ!見つけ次第死刑だ!抵抗するなら殺せ!」
「皇帝は玉座の間だ!邪魔する奴は誰であれ親皇帝派だ!容赦するな!斬れ!斬れー!」
城内には誰とも知れぬ叫び声があちこちで響き渡り、興奮した兵士の中には略奪するもの、暴行をはたらくものも現れていた。
正にこの世の地獄だった。
ヴァレイン帝国...
初めて魔法を他国との戦闘に導入し、世界の殆どを手中に納めた国、しかし今その栄華が反皇帝派のクーデターにより終焉を迎えようとしていた。
玉座の間にただ一人ヴァレイン帝国三代目皇帝ジントは佇んでいた。
玉座の間と廊下を隔てる扉はバリケードが築かれていたものの、既に抉じ開けられるのは時間の問題だった。
「ここまでか...」ジントは呟いた。
巨大な扉は皮肉にも彼が作り上げた魔術師部隊によって開けられた。
最初に十数人の兵士が流れ込んできた。続いて七人の貴族たち、そして最後に一人の男が入ってきた。
「久しいな。我が兄ジント。...いや、狂王ジントよ!」男は叫んだ。
「やはりこの茶番を仕組んだのはお前だったか...。我が弟ケイン...。」
ジントは静かに答え杖を握った。そして続けた。
「お前もわかっているはずだ。こんなことをしても何も変わらん。ただ死体の山が増えるだけだ。それとも死体の山の上で王様ごっこでもしたいのか?」
「黙れ!お前のせいで何人もの罪無き人が苦しんできた!御託はそれまでにしてもらおう!覚悟!」
ケインが喋り終わるのと同時に兵士がジントに襲いかかった。
しかし瞬きする間もなく、ジントの杖から発せられた光は彼の回りに死体を作っていた。
ケインは焦っていた。
ジントはクーデター前の戦争で消耗しており、人を殺すほどの魔力は残っていないと践んでいたからである。
本来の彼ならばそのことを見越して行動を取るだろう。
しかし、このクーデターが引き起こした想像以上の興奮状態と王座を奪えるという高揚は、彼の冷静な思考を奪い去っていた。
「おのれ...!ジントォォ...!」
ケインは声無き声を上げたが既に遅かった。
ジントは再び杖を翳し詠唱した。
彼が詠唱した魔法は召喚魔法、通常の召喚魔法であれば精々一体が関の山だが、彼の人並外れた魔力は闇から何万という軍勢を呼び出すことが可能だった。
「さらばだ、愚弟ケインよ...。地獄で会おう。」
ジントが詠唱し杖を振るう一瞬の隙だった。
一人の貴族が彼の喉めがけて剣を突き刺した。
ジントは喉から血を吹き出し、そのよろめいた瞬間に残った六人が一斉に彼に剣を振りかざした。
容赦などあるはずがなかった。
このクーデターに参加した貴族たちは下級貴族、しかも世継ぎにはなれないもの達が主だった。
彼らにとって重要なのは親皇帝派か反皇帝派かなどではなく、自分達が領地を持ち、十分に出世することだけであった。
七人の貴族たちはかつて皇帝だったものの帰り血を浴び全身真っ赤に染まった。
それでも彼らは"それ"に剣を突き立て続けた、まるで餌を啄む雛達の様に...。
死を覚悟していたケインは我に返った。そしてかつて兄だった"それ"の首を持ち上げこう言った。
「終わった...、終わったのだ!狂王ジントの時代は幕を閉じた!これからは平和な世がくるぞ!誰もが望んだ天下泰平だ!フハハハハハ!!」
ケインと貴族たちが勝鬨を上げるなか、逆座の下、本来王族の脱出用に使われていた非常路に少女の小さな泣き声と、その少女を抱えながら逃げる女性の姿があった。
プロローグです。
タイトルに出てきた十字架担ぎも黒い騎士出てきません、すいません。
次回があれば恐らく出てくるとは思いますが、もしちょっと気になると思われた方は今しばらく待って頂けると幸いです。