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混沌とした世界の中でSS~静寂のアンダーワールド~

誘拐計画

作者: 山本正純

 2012年6月25日月曜日。午前6時。4人の男たちは廃墟となったカフェの中に集まっていた。

 4人の男たちは全員同じ黒いスーツを着ている。身長も同じ。同じサングラス。同じ髪型。唯一の違いはネクタイの色。


 彼らは『鴉』と呼ばれる少数精鋭グループのメンバー。主な仕事は退屈な天使たちのメンバーであるウリエルの警護。彼女を守るためなら暗殺も平気でするという危険な存在。

 コードネームがないため彼らは不便な思いをしている。


 赤いネクタイをした男はカウンター席に座り、残る3人のメンバーに話しかける。

「退屈な天使たちの活動が再開されるまで一週間を切った。そのタイミングで敵対組織沈黙の四聖獣がウリエルを拉致するために動き出すらしい。活動再開となると活動資金の調達を担当するウリエルに大金が舞い込むのは確実。ウリエルに舞い込んでくる大金を横取りするのが狙いらしい」


 その話を聞いた青いネクタイ男と黄色のネクタイ男は一斉に手を挙げた。

「その拉致計画の詳しい日時はいつですか」

「その情報源はどこですかっと」

「一度に聞くな。まず日時は今日午後12時45分。あの時間帯は彼女がイタリアンレストランディーノで食事をするために移動する時間。その通り道を襲うらしい。情報源は奴らのアジトにラグエルが仕掛けておいた盗聴器からだ。間違いない。ということで我々は沈黙の四聖獣と戦う。意義はないな」


 満場一致。鴉たちは横浜中央大学からイタリアンレストランディーノまでの道のりを警護することにした。


 午後12時30分。ウリエルこと宮本栞は横浜中央大学を出発。その様子を4人の男は見ていた。彼らは退屈な天使たちの敵対組織沈黙の四聖獣のメンバーだ。右腕に白虎の入れ墨をした大柄の男は呟いた。

「あの女か。どこから見ても普通の女子大生じゃないか」

「白虎。私語を慎め。あいつを拉致したら大金が手に入る。いいから仕事しろ」


 緑色のライダースーツを着た男の一言を聞き黒色のスーツを着た男は煙草を吸いながら呟く。

「それにしてもガードが緩いよね。あれならすぐにでも拉致できそうだけど」

「確か彼女の周りを凄い連中が囲んでいるんでしょう。だからすぐに手が出せないのよん」

 

 紅一点の髪が長く赤いスーツを着た女は黒色スーツの男玄武を注意した。そしてリーダーの青竜はメンバーに指示を与える。

「始めるぞ。俺は車を走らせるから白虎、朱雀、玄武は彼女を追いこめ。そうすれば密に護衛している連中をあぶりだすことができる。あぶりだしに成功したら戦闘開始。その隙を付いて俺が彼女を拉致する」

「了解」

 沈黙の四聖獣のメンバーは散り散りに動き出す。


 その様子を遠くのビルの屋上から双眼鏡でピンクのネクタイの男が覗きこんでいた。彼は仲間である赤いネクタイの男に電話する。

「沈黙の四聖獣の連中が動き出したっす。白色の半そでシャツを着た大柄の男に黒色のスーツの男。長髪の赤いスーツを着た女の3人。全員バラバラに動いてるっす」

『その方が都合がいい。一人一人片付ければすぐにでも終わる。俺は大柄の奴を殺す。後は黄色と青に任せる。お前はウリエルの尾行を開始しろ。もしかしたらその3人以外にも仲間がいるかもしれないからな』

「了解っす」

 ピンクのネクタイの男は電話を切った。

 

 その5分後路地裏で大柄の男白虎は赤いネクタイの男を対峙した。

「兄ちゃん。そこどけよ」

 白虎の一言に赤いネクタイの男は動じない。業を煮やした白虎は拳銃を取り出す。

「撃ち殺すぞ」

「物騒な物を持っているけど隙だらけだ」

 溝内に一発。それだけで白虎は昏睡した。赤いネクタイの男は彼の手から拳銃を奪い取り銃口を彼の頭に向ける。

「相手が悪かったな」

 銃弾が白虎の頭を貫通し、彼は息を引き取った。


 一方青いネクタイの男は黒色のスーツの男玄武と路地裏で対峙していた。玄武は煙草に火を付ける。

 早速玄武は蹴り技を青いネクタイの男にお見舞いさせる。間一髪で青いネクタイの男は攻撃を回避した。

「凄い蹴り技ですね。この技をまともに受けたらタダでは済まないようです。でも当たらなければ意味がないし、君より凄い蹴り技が使える奴を知っているから怖くない」

 青いネクタイの男はポケットからダーツの矢を取り出す。

「飛び道具か。今日の風向きは東から西。君の方角からダーツを放ったとしても逆風になるからダーツは刺さらない」

「誰がダーツを飛び道具だと言ったのでしょうか。こんな使い方があってもいいのに」

 玄武は首を傾げる。それは一瞬の出来事だった。ダーツの矢は玄武の心臓に突き刺さったのは。

「何をした」

「簡単なことです。一瞬の隙を付いて君の心臓にダーツの矢を突き刺しただけですよ。僕はダーツの矢を飛び道具ではなくナイフと同じ感覚で使う。覚えておいた方がいいかもしれませんね」

 

 その頃長髪に赤いスーツを着た女性朱雀はウリエルに近づこうとしていた。その寸前彼女の前に黄色いネクタイの男が現れた。

「彼女には指一本触れさせませんよっと」

「あら。変な喋り方だね。でもこんな人前で拳銃は使えないはずでしょ。どうやって私を倒すのかしらん」

「その喋り方も変ですねっと」

「人のことは言えないのよん。この近くにゲームセンターあるからそこで対戦ゲームでもしない。その方が安心安全なのよん」

「へえ。あっち側の人間なのに健全な対決方法を選ぶんですねっと」

 黄色いネクタイの男と朱雀は近くにあるゲームセンターに移動した。


 2人がゲームセンターに到着した頃ウリエルの背後に緑色のライダースーツを着た青竜が現れた。密に尾行しているピンクネクタイの男。そして2人の構成員を殺害した赤いネクタイの男と青いネクタイの男の3人は厳重体制に入る。

「全く。殺気がすると思ったら尾行されていましたか」


 ウリエルは静かに背後を振り返る。その視線の先にはナイフを構えている青竜が立っていた。

「悪いが一緒に来てもらおう」

「大金目当てですか」

「ああ。大丈夫だ。怖くない。資金調達ルートについて拷問したらすぐに楽になってもらうから…」

 

 一瞬の出来事。青竜は一瞬で気絶した。意識が遠のいてゆく中で青竜の視界にウリエルがスタンガンを手にしているのが見えた。

「すみません。防犯用にスタンガンを持ち歩くようにしているので。それに退屈な天使たちの構成員は単体でも強いですよ」


 その様子を見ていた鴉たちは拍手をしながらウリエルの前に現れた。

「すばらしい。さすがウリエル。体はなまっていないようだ」


 赤いネクタイの男は事情を話した。その話をウリエルは頷きながら聞いている。

「へえ。こいつの魔の手から私を守るために尾行していたのですか。所で黄色いネクタイの方はどこにいるのでしょうか。あなたたちの話ならどこかで戦っているのでしょう」

「さあ。どこで何をやっているのかは知らないが、あいつは簡単には死なない」

 ウリエルと鴉たちはイタリアンレストランディーノで昼食を楽しんだ。テレビではニュースが報道されている。

 黄色いネクタイの男と朱雀の対戦ゲーム対決は1時間に及ぶ長期戦となった。

 青いネクタイの男から『沈黙の四聖獣の構成員3人を撃破した』というメールが届くまで対決は終わらなかった。


 

 


一人生き残った沈黙の四聖獣の構成員朱雀さん。本編に登場するかも。

次回はシノのプライベート回ね。


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