主のなすがままに…手紙。
お気に入り登録ありがとうございます。
なんとか親指姫を絡めつつ書き上げました。
もう2日になる…
文通しようと決めてから。
家族には心配させないようにしていたつもりだったが
あまりにもいつもと違う様子に誰もが気付いたようだ…
そう…私は未だに手紙を書けていない。一つの文字もだ…
どう書けばいいのか全くもって分からない。
最初の掴みはどうしたらいいんだ?
季節の挨拶とか入れないといけないのか?
初めて会う(?)人に手紙なんて書いたことないよ〜
そうして私が悶々としている間に2日たち
その姿にどこか悪いのではないかと勘違いされ、もう少しで不安になった家族に
国のお偉いマッドサイエンティスト治療師の所に連れていかれるところだった。
すんでのところで我に返った私はどこも悪くないと家族に伝えるため
迫真の演技で乗り切りました。
ヤバイよ!危ないとこだったよ〜
そんなとこ連れてかれて私が前世の記憶持ちだってバレたら何されるか判らないよ!
そのマッドサイエンティストは『記憶』についてのヤバい論文出してるんだよ〜
お兄ちゃんの勉強の資料の情報誌に載ってるの見たんだよ!最新号だったよ!
そんな方とは出来れば一生お知り合いになりたくないんだよね〜。
しかし…このままでは
また、いつ連れていかれてもおかしくない。
早いとこどうにかしなくては…命の危険を感じる。
私は「お休みなさい」と家族全員の頬にキスして挨拶を交わすと、
いつもより早めに自室に戻りペンを持つ。
さぁ…がんばろう。
はぁ。
1時間が経過しています。
手紙は雪のように真っ白です。
いっそ紙で折り紙を作ってみるってのもいいかな。いや…いいかも!!そうしよう!
取り留めもなく浮かんだ考えだったが、とてもいい考えのように思える。
そこには折り紙の『鶴』が2つできていました。
我ながら自信作です。
折り目も美しいし、バランスもいい!!
職人技ですよ〜前世で折りまくった甲斐がありました。
そうです。
私は追い込まれるとよく『鶴』を折っていたんです。
わかってるんです。わかっちゃいるけど…
皆さんもテスト前になると部屋の模様替えや掃除がしたくなりませんか?
読まないといけない本を読み始めると睡魔に襲われませんか?
現実逃避だとは解っているのです。
「我が主。それはなんですか?」
ん。親指姫が折り鶴に興味を持ったようです。
「紙で造ったのよ。鶴という鳥。」
親指姫は初めて見るんだろうな〜とても興味深そうな触りたそうな顔をしている。
「それ、ひとつあげるわよ。」
2つあるうちの1つをつまみ、ふと思い立った。
作品に名前を書こう。
折り鶴の翼を広げ、『リコ』と署名する。
私を見上げる親指姫は未だに信じられないのか、まだ惚けている。
おまけだ…反対側の翼に『親指姫へ』と書いてあげる。
「これは今から親指姫の物よ〜私から親指姫へのプレゼント。」
親指姫は今にも泣きそうな顔をしている。
何だそんなに欲しかったのか?お手軽なやつだな〜
作った甲斐があるじゃないか。
ちょっと嬉しくて恥ずかしい。
思いがけず笑顔になっちゃうゾ。
親指姫はいつも大袈裟だがいつもにまして喜んでくれた。
「我が主が笑っている…なんと可愛らしい…美しい…主が私の為に…私の名前が…私の物。」
繰り返しぶつぶつ呟いていますがスルーしましょう。
しかし…親指姫がこんなに喜ぶなら、曽祖父も喜ぶかな?
そうだ手紙は私には荷が重すぎたんだ!プレゼントに変更しよう!
残った方の折り鶴に『お爺様へ』『リコより』と書いてみる。
「親指姫。私、曽祖父と仲良くなりたいんだけど、これ喜ぶと思う?」
親指姫に聞くのは間違いかな?力強くうなずいているんだが…
まぁ。考えてもしょうがない。
文通はヤメヤメ〜
曽孫からの手作りプレゼントでメロメロパ〜ンチ作戦に変更だ!!
私は持って行けないので
当初の予定通り。親指姫に運び屋になってもらおう。
賄賂の折り鶴も渡したことだし、変更もあったがなんとか計画も軌道に乗りそうだ!
本当によかった。よかった。
親指姫。これ届けてきてね〜。
ついでに私が仲良くしたい。よろしくねって言ってたって伝えてきて。
「はい。我が主がなすがままに…」
親指姫は速攻行って速攻帰ってきたようだ。
翌朝目覚めると、居ましたよ。
もしかして、一晩かかりませんでした?
大丈夫か?ちゃんと届けられたのか?どっかで捨ててきたわけじゃないよな?
「親指姫。どうだった?渡せたの?」
「はい。邪魔されそうになりましたが、主の事を知っている方が
私に付いた主のニオイで察したようで、渡すことが出来ました。」
「そう。何か言ってた?」
「はい。これを預かりました。」
そこには、立派なそれこそ正真正銘の手紙がありました。
リコへ
プレゼント受け取ったよ。
とっても嬉しかった。ありがとう。
本当は今すぐにでも飛んで行ってお礼を言いたいが
今は行けそうにないのが残念だ。すまない。
お母さんにもこの前伝えたが、私の誕生祝いが今度あるので
その時には是非一緒においで
プレゼントのお返しと美味しいものをたくさん用意しておく。
会えるのを楽しみにしているよ。
ラインハルト・アドルフ・ハインリヒ・クラフト
曽祖父の手紙を読む限り私の印象はいい感じだ。
第一段階は突破した感じだな。
プレゼントも好評みたいだし、次は何を折るかな〜。
レパートリーはかなりあるんだ…職人並みに
リコちゃんは折り紙のマイスターです。
前世で現実逃避の数だけひたすら折り紙を折っていたのです。
次話も視点を変えてみようかな〜
先に進むべきか、お手紙騒動を視点変えて補足するべきか…しばらくお待ちください。