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5話

「お邪魔しまーす。」

「邪魔するわ。」


二人の女性がマルクの運営する店に入ってきた。

片方の女性は青緑の髪で背中に大きな斧を背負い、もう片方の女性は薄紫の髪で腰にレイピアを着けている。

物騒な客だ。


「いらっしゃい、注文は?」

「ごめんなさい、私たちはご飯を食べに来たわけじゃないの。」


薄紫の髪をした女性は一枚の写真を出してマルクに見せる。


「この子を知らないかしら。」


その写真にはマルクも見たことがある姿が写っていた。

この地域ではあまり見ない服装に桃色がかった長い二つ結びの髪。

そして顔には宝石が付いている。

これって、まさか…


「何でまた突然…」

「で、知ってんの?知らないの?」


斧を背負った方の女性が返答を急かす。

まずい。なんかやべぇ雰囲気だな…。

ここにくる前にルフィアは何かやらかしたのか?


「えっと、そいつは…

「マルク!お腹空いた!」


「「あっ」」


ルフィアが空腹に耐えられなかったのか店の奥からひょこっと出てきた。

とたんに二人の女性の目が鋭くなった。


「見つけた!!」

「隠してたな!?」

「別に隠していたわけじゃあないが…。」


二人はマルクに刃を向けた。

一方、ルフィアはこの二人に見覚えがあるのか嫌そうな顔をしながらマルクの後ろに隠れる。


「その子をこっちに渡しなさい。そうすれば無傷でいられるわよ。」

「渡さないと死んじゃうかもよ!」


武器を構えた二人からの脅迫にひるむ事無くマルクは二人に言い返す。


「こっちはコイツに約束した事があってだな、今渡すのは無理だ。

力尽くでって言うなら相手してやってもいいぜ?

お前らなんかに殺されるようなマヌケじゃないんでな。」


ニヤリしながら二人を挑発した。


「たかが一般人に何ができる!」


挑発が効いたのか斧を持った方の女性が今にも飛びかかろうとしていた。


「待った待った、そんなもん振り回されたら店の中が大変な事になっちまうじゃねえか!…外に出ろ。」


斧を持った女性は無言で外へ出る。そしてもう一人も。

それに続いてマルクも外に出た。

その後ろからルフィアがとてとてとついていく。


「ルフィア、危ないからそこらへんに隠れてろ」


コクンと頷き、物陰に隠れながらマルクを見る。


「私の名前は武装隊隊長のパシャ、お前も名乗れ!闘いの礼儀だ!」

「闘いに礼儀ねぇ…。料理人、マルク。これでいいか?」

「ふん、いざ…参る!!」


パシャと名乗る彼女はジャンプしながら斧を上に振り上げ上から一撃を繰り出す。

マルクはそれを横に避け、パシャに向かって何かを数個投げた。

その何かをを斧を振った風圧で落とす。

落ちてきたのはフォーク。

マルクはフォークを投げていたのだ。


「舐めてるの?ねえ、おちょくってるの?」

「これが俺のやり方なだけで舐めてるのつもりはねえよ。

料理に使う物が俺の武器ってわけだ。

それとも、本気がいいか?」


イタズラをしている子供のように笑ってみせた。

それが癇に障ったのかパシャは声を荒げる。


「本気でこい!!お前、ほんっと腹立つ!!!」

「お、じゃあちょっと待ってろ。」


そう言うとマルクはゴソゴソと服の中を探す。

取り出したのは鉈のような形の大きな刃物。


「なんて物を服の中に入れてるんだよ!

その前にそんなデカいやつ、どんな料理に使うんだよ!」


さすがの彼女も驚きを隠せない。


「お、いい質問だ。これは大きな獲物を割いたり、仕留めたりするもんだ。結構使い勝手がいいんだ。」


刃を片手で構え、マルクはまた楽しそうにニヤリと笑った。


「俺の本気を誘ったのはあんただ。

そう簡単にやられるんじゃねえぞ!!」


急に走りだしパシャの目の前にまで迫った。

パシャも驚きマルクの刃を防ぐので精一杯だ。

マルクが刃を何度も斧に叩きつける。


「くそっ…!」


思わずパシャが声を漏らす。

叩きつける力は強いがそれはなんとかなる。

だが動きが速すぎて防ぐのがやっと。

こんな動き、一般人には無理だ。


「やられて、たまるかぁ!!」


斧に光が集まり爆発を起こし連撃を繰り出すマルクを吹っ飛ばす。


マルクは着地と同時に姿勢を低くしながら走り出す。

また来る!何でこんなに強い!何でこんなに速い!

何で


笑ってられる!


「おい、さっきまでの勢いはどうしたぁ!?手が止まってんぞ!」


パシャが斧を振るおうとした瞬間、マルクが斧を踏みつけ動かせなくする。


「終わりだ、じゃあな!」


そして、パシャに向かい刃が振り下ろされる。


「そんな…」


死を覚悟した瞬間、マルクの刃に何者かが放った魔法が当たり、刃が吹き飛ばされた。


「あ?邪魔すんなよ。」

「魔導隊隊長、アルミラティ。相方が殺されては困りますので手を出させていただきました。」


先ほどから見ているだけであったアルミラティと名乗る女性

彼女は腰のレイピアを抜き近づいてきた。


「名乗ったからにはアンタも闘うんだよなぁ、コイツみたいに弱いのか?」

「闘う気ではありますが、あなたは強い。寧ろ強すぎる。

もしかしたら私も負けるかもしれませんね。

何か強さの秘密でもおありで?」


「こんな時に何言ってんのアルミラ!」


呑気に質問をするアルミラティにパシャは焦り、怒った。

そんな呑気な質問にマルクは怠そうに答える。


「秘密ねぇ、過去の仕事柄のせいだとだけ言っておく。」


アルミラティはマルクの返答を聞き何かを察した。

過去に聞いた噂の人物にそっくり。


だが、これ以上の質問は怪しまれるだけなので質問する事をやめた。

あの通りの話なら…私は勝てない。


すっ、と軽く息を吸い考えを止めた。


「やはり、一般人ではないのですね。

そうとなればこちらも全力でいかせて頂きますわ。」


顔の前にレイピアを構えるとレイピアの周りがキラキラと光と冷気を帯びる。

そんなこともお構い無くマルクは刃をアルミラティに向け走り出した。

アルミラティがレイピアを振るうとその軌道に合わせて氷柱が数十個ほど出現し、マルクに向かって飛んでいく。


そのうちの幾つかがマルクの足元に当たる。

マルクの足元が凍りつき、身動きが取れなくなる。

そして、アルミラティの方を見ると彼女の持つレイピアは赤く色を変え火の粉が散っていた。


「終わりよ、マルクさん。」


アルミラティは冷たく言い放つと赤くなったレイピアを振るう。

その軌道から数十個ほどの火球が現れ、一斉にマルクに向かって飛んでいく。


避けられない。

目を瞑り、持っている刃で火球を防ごうとする。


「だめ!!」


途端に物陰に隠れていたルフィアが両手を広げマルクの前に飛び出した。


「バカ、やめろ!!」


マルクが叫んだ瞬間ルフィアの前に光の壁ができた。

その光の壁は火球を弾き、マルクとルフィアに当たるのを防いだ。


アルミラティとパシャはそれを見ていた。


「防いだ…?」


アルミラティは驚きを隠せず、パシャは呆然としていた。

守られたマルクも呆然とそれを眺めるしかなかった。


それを一人走りながら戦闘を見たステイルがやっと現場に着いた。


「うわっ、間に合わなかったか…。」


そして、最悪な状況に陥る。


「何事だアルミラ、パシャ。」

馬に乗った黒の国の王女。

さらに

「また何かやらかしたのか!?」

騒ぎを聞きつけ、駆けつけたセヴィオ王とその部下達。


ややこしいことになった。

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