1話
「陛下、西方より大軍が押し寄せています。」
玉座の似合わない王。
顔つきが普通の人という感じがして、普段の行動も王様らしい事はあまりしない。
そんな王に報告が入った。
「また戦争か?戦争ならやらないぞ。」
「いえ、侵略です…。大軍は装備や馬を見たところ"黒の国”と思われます。」
黒の国という名を聞いて不審に思ったのだ。
あの国は他の国に攻め入るような野蛮な事はしなかったはず。
そもそも、あの国は他の国との関わりをあまり持とうとはしない。
「黒の国が何のために…。
使いの者を送って国へ帰らせろ。この国は『産業資源ばかりで何もない』ってな。」
「わかりました。」
王は溜め息混じりに呟いた。
「念のため、護衛でも呼んでおくか…。」
大きな鷲の足に用件を書いた紙を括り付ける。
鷲は雲のない大空に飛び立った。
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「石の国の王め…ふざけた事を!」
石の国から使いの者として来た男の前で怒りを露わにする。
黒い鎧のせいで男か女かも判断できない。
そのくせ側近と思われる将軍が2人いるが、どちらも女だ。
「なーにジロジロ見てるんだい?」
「私たちの顔に何か付いてます?」
やばいと思って目を逸らす。
王様、自身たっぷりな感じがプンプンします。
肉食系女子ってこういう人をいうのでしょうか。
「こうなったら直接伺う。使者の言葉など聞かぬ!」
重そうな黒い鎧を動かし、黒い馬へまたがる。
ああ…俺、クビかも。
石の国の使者は顔を真っ青にしながらもその場を立ち去った。
黒い大軍はまた石の国がある西方へと動き出した。
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ステイルは茂みを掻き分けながら森の奥へ向かっていた。
実はつい最近、国境近くの森で遺跡が発見されたのだ。そこにはかつてこの地で繁栄した種族の遺跡があるらしく、財宝などもざっくざくあると聞いた。
それを目当てにステイルは奥へ進む。
うっそうとしてんなあ…
「ん?」
何かの気配がした。
人間のような、そうではないような。
少し様子を伺ってみると向こうから魔法が飛んで来た。
腰のバッグから宝石を取り出し、宝石から力を引き出しそれを相殺した。
そう、俺は宝石にもともと宿っている魔力を扱う事ができる人間なのだ。
ただ人じゃできないことらしく、一般的には宝石に魔力を蓄えて使用時に放出するという使用方法が用いられている。
宝石といえどただの石と思っている人がほとんどなので宝石自体に力が宿っているということを知る物は少ない。
(何だこの魔法…俺のと似てる)
考える暇もなく今度は魔法を使った本人が攻撃をし掛けてきた。
「うわっ、危ない!」
勢いよく出てきたのは長い髪を二つ結びにした少女。
左目の下に紫の宝石が埋め込まれ、首には自分が付けているブローチとそっくりな宝石が着いた首飾りをしている。
いくつか持っているとみられる宝石を手に持ち、宝石から魔力を引き出しながらパンチの体勢に入っていた。
避けられない…!
顔を目掛けて飛んでくる魔法付きパンチを腕で止めた。
「いってて…。」
思った以上に痛い。
魔力が込められているせいで常人とは思えない程の力だ。
咄嗟の事で理解ができないステイルは彼女に話を伺った。
「お前何者なんだ…、何で宝石から魔力を引き出せるんだ?」
彼女は険しい顔をしながら聞いた事のない言葉を話した。
それと同時にステイルの身につけている宝石たちが言った。
『出て行け、ですってよ。』
「言葉がわかるのか!?…それはともかく、出て行けってどういうことだ?」
宝石たちに聞き返したと同時にまた宝石から声がした。
『ここは神聖な場所。人間が入ってはいけない場所。だから…出ていけ!』
彼女の声だろうか。
目の前で意味のわからない言葉を発したかと思ったら次は宝石を通して話をし始めたようだ。
訳がわからない。
宝石そのものの魔力を使って魔法を放ったり、宝石を使って会話したり。
こんな事ができるのは自分だけだと思っていた。
彼女が何者なのかはわからないが同類がいたということには喜ぶとしよう。
彼女と対峙してすぐ周辺からたくさんの声と足音が近づいて来た。
「いけない!入るな!!」
突然彼女が声を荒げたと思ったら森の奥へと走って行った。
後を追ってみると、そこには信じられない光景があった。
向かった先には大きな崖がそびえ立っている。
しかもそれだけではない。
その崖にはとてつもなく大きな宝石が埋まっていた。
その周りにも大きめの宝石がバラバラに付いている。
まるで宝石の王様のようだ。
そして、真っ黒な鎧を着た人間たちが彼女一人を取り囲んでいた。
本当にどうなってんだよ…!!
そんなステイルの元に一羽の大きな鷲が舞い降りた。




