第11話【死闘の余韻】
ハブデビ!です!
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初作品なので、気軽に読んでいただけると嬉しいです!
────────2040年……7月16日。時刻は17時……針木研究所。
鳶人と蓮王の二人……彼らは圭理との戦闘を終え、廊下の床に腰を置いていた。
目の前には、自ら首を切断した圭理の遺体と、血生臭い空間が広がっている。
鳶人自身、殺意こそあれど、最後に殺すつもりは無かった。
現在……二人は沈黙している。
「組織について知るヤツを仲間にできる思ったが……。」
鳶人はそう呟いた。
初めて別の『BORN ARMS』との戦闘を経験し、自分たちを追う刺客がどれほど手強いのかを思い知らされた。
同時に、「鳶人だけは生け捕り」という圭理のワードも気にかかっていた。
「まぁな……。
だが、ここで立ち止まっても仕方ない、先を急ごう。
追っ手も来てしまうし、俺の『歯の弾丸』の残弾数はあと二発……武良のオッサンしか対処できないぞ。」
圭理の死体を眺める鳶人に、蓮王はそう言うが、鳶人も言葉を返す。
「先を急ぐ……? どこにだよ。」
「ふーむ……」と、顎の下に指を置き、蓮王は考える。
二分ほど思考した後、答えを出した。
「とりあえず、『服屋』に行かない?
こーんな目立つ囚人服じゃ、元も子もないよ。
『ZU』か、『ユニ・ホワイト』みたいな、安いチェーン店行こうよ。」
鳶人はそれを聞くと、「そうすッか。」と、賛成する。
幸い、18年の服役で得た『作業報奨金』が、あと『40万』残っている。 服など余裕で買えるだろう。
二人はこれから、『外界』へ足を踏み入れる。
────────鳶人は、圭理が入ってきた鉄扉へと足を向けた。
血の残り香が、まだ鼻の奥に残っているまま。
「──────こっちだな。」
誰に言うでもなく、そう呟く。
蓮王も「だな。」……と頷き、鳶人の背中に続いた。
鉄扉は、思ったよりも軽かった。
ギギギィ……と、錆びた金属の擦れる音を立てて開く。
その先にあったのは、無機質で人の気配のない……白い廊下。
足音だけが、コォーン……とやけに大きく響く。
「……なんともまぁ……静かだな。」
蓮王が小さく呟く。
この通路の天井には、15個ほどの監視カメラがある。
しかし、『録画中』を示す赤ランプは全て沈黙している。
既に機能を止められているのか、それとも────。
鳶人は、黙ったまま歩き続けた。
この通路を圭理が通ってきた……つまり、何かしらの『出口』に繋がるはず。
──────やがて、通路の突き当たり。
『関係者以外立入禁止』と書かれた、一つの白い扉が現れる。
鳶人は、取っ手に手をかけ……一瞬、動きを止める。
「……ここから出たら、多分外だ。
そんな気がする。」
「開けて見なきゃ分からんよ。」
蓮王の声は、淡々としていた。
鳶人は、鼻で笑い──────肩で扉を押し開ける。
────────ガチャン……。
外気が、肌を刺した……夏場特有の、ムワッとした暑さ。
上を見上げれば……蒸されるような暑さはそのままに、空は赤く燃えていた。
ここは─────研究所の裏口。
出てすぐ左側には、非常階段、そして錆びたフェンス。
人の気配は、いずれも無い。
「……ただいま、だな。」
「うん。
でも蓮王は3年ぶりって所かな。」
鳶人と蓮王は、小さく呟く。
二人はフェンスの隙間から外を覗く。
遠くで聞こえるのは、車の走る音。生活音。鳥のさえずり。
二人は、言葉を交わさず裏口を後にする。
研究所へ、もう振り返らなかった……背後で、鉄扉が静かに閉じる音がした。
──────二人は、フェンス沿いに伸びる細い舗道を歩いている。
アスファルトは昼間の熱を溜め込み、それは靴越しにじんわりと伝わってくる。
「……外ってのは、こんなにうるさかったか。」
鳶人がぽつりと呟く。
遠くで鳴るクラクション。交差点の歩行者信号の音。遊ぶ子供たちの笑い声と泣き声……。
研究所の静寂とは、あまりにも対照的だった。
慣れない鳶人の耳にとって、ほとんど騒音に近い。
「そりゃあそうでしょーよ。
俺たちみたいな『反社』とは無縁の世界だよ。
いやぁ〜それにしても、久々だなぁ外なんて。」
蓮王はそう言いながら、目を光らせて辺りを見回す。
幹線道路沿いに並ぶ看板。コンビニ。ファミレス。カフェ。
そして──────少し先に目をやると、赤地に白文字、正方形の看板。
「お、アレだよ『ユニ・ホワイト』……低所得層お墨付きの、安くてイマドキのブティック。」
夜でもないのに、店内の照明はやけに明るく見えた。
鳶人は、自分の服装を今一度見下ろす。
番号の入ったオレンジ色のシャツ。色褪せたズボン。
誰がどう見ても、この街に溶け込む格好じゃない。
「……この格好で入るの、正直キツくねぇか。」
「しょうがないじゃん。」
蓮王は、無愛想な鳶人の横顔を見る。
「この格好のままいるよりかはマシでしょ?」
「だよなぁ……。」
二人は、信号を渡る。
横断歩道の白線を踏むたび、鳶人の胸の奥がざわついた。
刑務所でも、研究所でもない。 やっと手に入れた『誰にも縛られていない一歩』を踏む……。
そしてとうとう到着した目的の服屋。
自動ドアの前で、鳶人は立ち止まる。
「……なぁ、蓮王。」
「……ん?」
「……服、どれ選べばいいか分かんねぇ。」
蓮王は一瞬だけ目を見開き、「ハハッ」と歯を見せて笑った。
「そんなの、好きなの選べばいいじゃん。
割と武良のオッサン、顔は悪くないし……なんかハリウッド顔だよね。」
──────「ティロンティロン〜」という、客が入ることを知らせる電子音。
同時に、自動ドアが開き、冷房の風が二人を包み込む。
白い光と、整然と並んだ衣類。
鳶人と蓮王は、無言のまま───服屋へと足を踏み入れた。
こういう日常回もいいですよね。
絶賛連載中なので、次も読んでくれると嬉しいです!!




