第10話【忠誠心】
ハブデビ!です!
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───────蓮王の銃口から放たれた『歯の弾丸』……それは空気を裂きながら、音速で圭理の元に突き進んで行く。
そしてその歯は……蓮王の望んでいたもの。
……『犬歯』である。
鋭く尖るその弾丸を、圭理は見た。自分の元へ飛んでくるその物体、それは尖った犬歯だと理解した。
(──────あれが言ってた『犬歯』か……。)
そう思考する圭理には、脳裏に離れない、とある言葉がある。
「犬歯ならば威力は高い」……先程聞いたこの言葉が、嘘か誠か分からない。しかし、一つだけ確かなことがある。
─────自分の『人間の部分』に当たれば、どの道ダメージを受けることになる。
思考する間にも、弾丸は進む。
圭理は選択を迫られる……そして一瞬、二つの未来を見る。
今この瞬間、鳶人の骨刀を挟むハサミを解き、硬質な『蟹の殻』の左腕で、その弾丸を『防御』するか。
それとも、弾丸が打ち込まれる覚悟で……
──────────鳶人を『確実に』始末するのか。
一瞬……ほんの、一瞬の逡巡。
だが、その一瞬こそが──────圭理自身の命を分ける。
圭理は、静かに……歯を食いしばった。
(……チッ。 選択を迫られるのも癪だが。)
選択の時は、もう終わりだ。
圭理は────────……『防御』を選んだ。
『確実』な攻撃よりも、それを優先した。
迫り来るそれを、排除することを選んだのだ。
鳶人の骨刀を挟む『蟹のハサミ』が、横薙ぎに振るわれる。
圧倒的な力。
そして遠心力……鳶人は吹き飛ばされ、壁に背中から打ち付けられる。
「──────うグォア!!」
鳶人は宙を舞う。
ドグォン!と、コンクリートの壁面には、網目状のヒビが入る。
鳶人は吐血した……バラの花びらのように、赤い血液は飛沫する。
───ビチャビチャ……と、鳶人の足元には赤黒い血溜まりが作られていた。
そして──────進みゆく『歯』の弾丸……圭理は、『蟹の殻』のような、硬質な腕で防御を成功させた。
身体の前に構え、その硬質な殻は弾丸を受け止める。
命中する瞬間、ガキィィイン!!という、金属同士がぶつかる轟音が、周囲に響き渡った。
さらに同時に襲う衝撃、それは『臼歯』の時と比べ物にならない強さ。
思わず圭理が、数歩押し戻されるほどの威力を誇っている。
「……なるほど。
言う通り、『犬歯』の威力は高いようだな……!!!」
圭理は感嘆した。
『犬歯』の弾丸の回転力。貫通力。推進力。
掘削機のように突き進むそれはとうとう、『蟹の殻』を破るまでのモノとなる。
ギャリギャリギャリ……という『削る』音。
──────ついに、圭理の腕にヒビが入り始める。
そして蓮王は、それを見逃さない。
さらにもう一発、『歯の弾丸』を射ち出した。
狙いは……圭理の腕の『ヒビ』である。
「ONE CHANCE……!!!」
歯の弾丸は、蓮王の狙い通り。
一発目に入れたヒビへ向け、キリモミ回転をかけながら突き進む。
しかし、思惑は『ヒビの数を増やす』ことでは無い……。
歯の弾丸をさらに……深くへと打ち込むために。
圭理は、さらに放たれた弾丸を見て、蓮王の狙いを悟る。
「ま、まさかコイツ……アレを狙って─────!!」
既に着弾している歯の弾丸。さらにそこへ、もう一発が命中する。
────────ガキュィイイイン!!
圭理の腕に陥没していた弾丸を、トンカチで釘打ち込むように……鋭く、中へ中へと押し込む。
ヒビの大きさは大きくなり、さらに深い穴を開ける。
そして……。
「バキバキィ!」っと、殻が砕ける音が、圭理の腕の中に響く。
「─────グァアアア!!」
圭理の喉から、獣のような叫び声が発せられる。
今までとは、違う反応。
『蟹の殻』に入ったヒビ、そこから更に『放射状』に亀裂が広がる。
そこからついに露わになるのは、血濡れた人間の皮膚。
圭理は、歯を食いしばり耐える。そして、左腕の傷を庇うようにして、右へ身体が傾き始める。
その瞬間────────鳶人は動く。
「待ってました」と言わんばかりに、地面を蹴った。
壁に叩きつけられても、血ヘドを吐いても……倒れなかった男がついに動き始める。
「……今だッ──────!!!」
掠れる鳶人の声。しかし、十分だ。
血溜まりを踏みつけ、直線距離で間合いを詰める。
鳶人は両手の中指に『外骨格の刀』を生成、二刀流の形となる。
そして、狙いはひとつ。
走行が剥がれ、露出した左腕の『内側』……。
「貫けェエエエエエエエ!!!」
骨刀は、迷いなく突き刺さる。
右手の骨刀による刺突……それは圭理へ、「ズブリ」とクリティカルヒットした。
圭理の絶叫は廊下全体を揺らす。
誤魔化しようのない『痛み』……人間の部分、生身へのダメージ。
「ギャアアアアアアアアアアアス!!!!」
刺突部位、そこから溢れんばかりの血液が、噴水のように流れ出す。
鳶人は骨刀を突き刺したまま、歯を見せて笑いだした。
「ざまぁみろ」……そんな目をしている。
「……どうしたよ。 さっきの威勢はどうした?
『自由の対価』はこんなに安価なのかよ……!!!」
圭理は、左腕の痛みに悶える。
しかし、まだ倒れはしない─────右拳……『人間の拳』で抵抗する。
「してやったつもりかよ……このチビ!!」
ブンッ! と空気を切ると共に、鳶人の顔面へ迫る。
だが、まともに受ける鳶人では無い。
左手の折れかけている『外骨格の刀』で、迫り来るその拳に対し……刺突を繰り出す。
───────……グサッ!!
鳶人の骨刀は、圭理の右手首を貫く。 ハナっから生身のその拳は、いとも簡単に防がれる。
圭理は左腕、右腕共に、鳶人の骨刀で拘束されてしまう……右手の感覚はもう無い。
───────圭理は膝を着いて倒れ込む。ちょうど、圭理の頭は鳶人の胸元まで下げられる。
「ハァ……ハァ……」と痛みに悶える息を吐きながら、コンクリートの冷たい床へ手を着いた。
「俺を……殺せよ……。」
圭理は捻り出したように声を出す。
左腕は、鳶人の骨刀が貫通しており、血液の滴りを流し続けている。
弾けた殻、裂けた肉、垂れ下がる血管。
常人なら痛みのショックで気絶していてもおかしくない……しかし、圭理の意識はしっかりとある。
「……殺さねぇよ。 少し質問に答えてもらうぞ。」
「殺せよ」という圭理の言葉に、鳶人は反応した。
鳶人は外骨格を解除した左手を、中指を立てる形で、圭理の顎の下に置く。
そして瀕死の圭理へ、脅すように話す。
「いいか……。
もし、マトモに答えなかったら、この中指から『外骨格の刀』が伸び、お前の頭を串焼き見てぇに突き刺す。
……これが本当の『FXXK YOU』だ。」
鳶人はグッグッと中指で圭理の顎を押しながら、淡々と質問を投げる。
「1つ、お前らの目的はなんだ。
『ACADEMY』について教えてもらおう。
2つ、お前が通話していたヤツは誰だ。 どこにいる。
3つ、俺たちに打ち込まれた『深緑の薬』は一体なんなんだ。」
圭理は「……ッチ」と舌打ちをすると、鳶人と蓮王を見上げながら話し始める。
その目からは、もう『攻撃の意思』は感じられない。
「まず……1つ。
答えは『知らねぇ』だ……俺は『組織への忠誠心』を無理やりねじ込まれたような、ただの兵士に過ぎない。
しかし、『ACADEMY』の支部は世界中に存在している。
その中から本部を探すのはひと苦労だぜ……?」
「それじゃあ次だ。」と鳶人は急かす。
「そんで2つ……。
話してた相手は『俺も知らねぇ』……。
ただ、渡された通信機で話してただけだ……何処の馬の骨か、全くわからねぇよ。」
圭理の息は依然として荒く、そのまま淡々と話し続ける。
「んで……最後だが。
針木のジジイに聞いた事がある。
生物の持つ『進化』のスピードを加速させるモノだそうだ。
投与された生物……人間は、どこかしらの『身体機能』が向上……進化する。
そして武良……お前は『最高傑作』だ……お前のみ、生け捕りを命じられてた。」
鳶人は話を聞き終えると、圭理の顎から中指を外す。
そして考える。少しでも内部に詳しい仲間が、蓮王以外にもいれば、どんなにいいことか。
『蟹の殻』や『蟹のハサミ』も、戦闘で優位に立てるかもしれない。
一か八か、鳶人は圭理に問いかける。
「─────なぁ。 ウチと組まねぇか。
一緒にそんな組織、ぶっ潰そうじゃねぇか。
ちょうど仲間が欲しかったところだ……どうだ?」
圭理は、床に垂れる自分の血を一瞥した。
赤黒い血溜まり。 もう、立ち上がれる精神的状態じゃない。
圭理は口角を上げ、笑った。
「……ハッ。」
それは嘲笑でも、虚勢でもない……ただ、乾いた笑いだった。
「組む、か……。」
圭理がそう呟くと、───ゴキリ……。
圭理の左肩が僅かに動く。
自分の身体へ引き寄せられる左手……『蟹のハサミ』
──────圭理自らの『首筋』へと伸びる。
「おい……─────やめろよッ!」
何をするかを察した鳶人。突如叫ぶ。
しかし、圭理は鳶人を見てはいない。
……その視線は、虚空。 まるで、誰か別の『何か』を見ているようだった。
「こうして戦ったヤツが『仲間』になるなら……素晴らしいことなんだろうな。」
ギチチチチ……と、蟹のハサミが……自分の首元に食い込む。
「忠誠か、死か……組織からはそう『調教』されてたんでな。」
鳶人の喉が、「ング……」と僅かに鳴る。
「ッ……それでも、まだ生きてけるだろ。 お前も俺たちと同じ──────」
「もう違ぇよ。」
圭理は、はっきりと否定した。
「一度……組織に忠誠心を『ねじ込まれた』のなら、お前たちの仲間になろうと絶対に『裏切る』ぞ。」
一瞬。ほんの、一瞬だけ──────圭理は鳶人を見る。
「それにな……俺は、そんなに安い男じゃあねぇ……。」
……次の瞬間。
───────ジャキン……。
音は、想像よりも小さかった。
……血が跳ねる。 そして床に、新鮮な赤が重なる。
首を切断された圭理の身体は、ゆっくりと……前に倒れた。
ドサリ─────と。
これで終わりだ。 鳶人は、動かない。
しばらくの間、ただ立ち尽くしていた。
「クソ……ガチか。」
それだけを、吐き捨てるように呟く。
その後ろ、遠くで、蓮王が歯を噛み締める音がした。
誰も、圭理の死を『勝利』とは呼ばなかった。
でも───────ただひとつ。
確かなのは……『ACADEMY』という組織が、
人間を『兵士』にする方法を……この男が、命で証明したという事だけだった。
読んでいただきありがとうございましたー!
絶賛連載中なので、次も読んでくれると嬉しいです!!




