表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/64

第27.5話 スモークスクリーン

#第27.5話 スモークスクリーン



カジノへ向かう裏道、人気のない夜の路地。

足音が響く中、ふと足を止めたのは――臣だった。


「……着く前に、火ぃ入れさせろ。」


そう呟き、ジャケットの内ポケットからくしゃくしゃの煙草箱を取り出す。

ライターの火が灯り、ふっと、夜の空気に煙が混じった。


「……吸うか?」


臣が箱をルカとナオに向ける。


「吸わねぇ。」


ナオが即答した。

視線は夜景に向いたまま。


「……俺は、久しぶりに貰おうかな。」


ルカが手を伸ばし、指先で一本抜き取る。

軽く笑って、付け加えた。


「……意外だな。知らなかった。」

「ま、昔はたまに嗜むくらいにね。……ナオは?ここでデビューする?」


ナオは一拍置いて、少しだけ眉をひそめた。


「俺も昔は吸ってた。……けど、今は別に。」


ルカはわずかに目を細めたが、それ以上は何も言わなかった。


パチン、と音がして、臣が火を点ける。

二本の煙が、ゆらゆらと夜空に溶けていく。


「……それにしても、センパイ。

今回の軍資金、なかなか太っ腹じゃん。」


ルカが煙を横目に笑うと、臣はあっさりと答えた。


「兄貴の金庫から拝借した。」

「……は?」


ナオの眉がぴくりと動く。


「拝借って……絶対、許可取ってねぇよな?」

「あとで正論で言い訳すんのが、俺のスタイルなんで。」


くつくつと笑いながら、煙草をくわえ直す。


「……まぁ、また兄貴の胃薬の消費が増えるかもな。」


沈黙。


「……あんた、よくそれで、ヘリオスでやってこれたな。」


ナオがぼそりと呟いた。


「自由だねぇ。さすがに俺も、そこまでは出来ねぇ。ナオがカワイソウ。」

「絶対すんな。」


ナオが睨み、ルカが肩を竦める。

臣は笑ったまま、煙をふうと吐き出した。


「……必要経費だ。金は使わなきゃ、価値がねぇ。」


火の匂いが、夜風に溶けていく。

遠く、煌都のネオンが滲んでいた。


一拍、間を置いて――


「……さて。」


ルカが煙草の火をもみ消し、コートの裾を払う。


「お仕事に行きますか。」

「……あぁ。」


ナオも静かに立ち上がる。


「きちんと演じきれよ?“主役”さんよ。」

「ああ、ちゃんと踊ってやるよ。」


ルカがべっと舌を出し、一歩を踏み出す。

進む先は、“煌びやかな地獄”への入り口だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ