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空を飛ぶアレクシス嬢

「まあ、かわいいハネツキペンギンさん。ごきげんよう」


 アレクシスはお嬢様らしく鳥に手を振って挨拶している。なおその鳥は絶賛羽ばたき中。八羽ほどで三角形の陣を作り風の波に乗り山を越えて海を渡ろうとしている。

 彼女は檻に閉じ込められたまま厚い雲の上で鳥に並んで空を飛んでいた。


「うーん、今の季節のあの星座。そして渡り鳥であるハネツキペンギンと同じ方向に飛んでいるということは南に向かっているに間違いありませんわね。問題は今現在どこの上空にいるか。落下地点に人や家、畑があってはいけませんわ」


 目下は運悪く途切れることのない分厚い雲海が広がっている。

 アレクシスは元王妃である前に淑女。いくら自分が助かるためとはいえ、他人の命を危険には晒せない。されどこれ以上王都から離れてもならない。


「うーん、どうしましょう」


 頭に指を突き立てくるくるとまわしながら考えた結果、


「そうですわ! この近くにセーラーンーム山があるはずですわ!」


 セーラーンーム山とはカスターニャ王国南部最高峰の山。頂上が雲の上よりも突き出ている可能性がある。

 また山頂には巨大な丸岩が鎮座し、良い目印となっている。丸岩はもとより自然に山頂にあるわけではなく、何者かの手で運ばれた。かつての異民族の王の墓という伝説が残されている。


「あ、ありましたわ!」


 九時の方向にセーラーンーム山を発見。特徴的な巨大な丸岩も確認した。


「って、もう通り過ぎようとしている!? いけませんわ、早く降りないと海に落ちてしまいますわ!」


 アレクシスは足裏全体で鉄檻を踏んだ。

 グワイーン!!

 鉄が軋ませて落下を促す。

 突然の轟音に鳥たちの列がにわかに乱れたがすぐに冷静さを取り戻す。

 鉄檻は急降下を始める。


「お騒がせしましたわ。それではハネツキペンギンさん、良い旅を~」


 瀟洒な白ハンカチを振ってひと時の旅の友に別れを告げた。

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