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うっかりアレクシス嬢

 処刑台送りの処遇にはアレクシスも動揺を隠せずに動きが止まった。


「今だ!」

「取り押さえろ!」


 これを好機と再び親衛隊二人がとびかかるも、


「どどどうしてですの!? ななななぜ私が処刑台送りに!?」


 彼女はこれをノールックでワンツーパンチで仕留める。あくまで視点は超絶イケメンのカルロスが中心。視界はなるべく好きなもので埋めていたいという気持ちは世界共通である。


「尻尾を出したね、アレクシス」

「ますます美しくなったね、と仰いましたか!?」

「全然言ってない……今、君の腕にはまっているのは何か覚えているかい?」

「これはカルロス様から結婚記念に頂いた魔封じの腕輪……」

「存在しない記憶を付け足すのはやめたまえ……そう、魔封じの腕輪だ。君のその圧倒的驚異的パワーは魔法だと説明していたよね?」


 この世界には古くから魔法が存在する。火や風といった自然を操る古代魔法があれば女性でも男性と並ぶほどの筋力を出せるようになる魔法も存在する。

 彼女の怪力は実は魔法由来ではない別の物であったが事情があり、結婚相手でもあるカルロスにも伏せていた。


「……あ、そういう設定でしたっけ!? 私ってばうっかり! すみません、じゃあそれはナシってことで!」


 そしてそれを今の今まですっかり忘れてしまっていた。


「しばしお待ちを! 今、別の説明を考えますので!」


 みっともなく足掻こうとするがカルロスは一蹴する。


「弁明はいい! つまり君は、この僕に嘘をついていたわけだよね? 隠しごともしていたというわけだ! これは裏切りと言わず、なんという!」


 婚約破棄に処刑台送りと物騒なワードを投げかけれても威風堂々(マイペース)だったアレクシス嬢がうろたえ始める。


「あ、あの、これにはいろいろと深い理由がありまして……あ、深いとは言っても私情なんですけど私情と言っても元をたどれば家族の事情も話さなくちゃなんですけど……」


 両手指先のキツツキのようにぶつけあい、視点もまるで合っていない。


「めちゃくちゃ狼狽えるじゃないか……」


 あまりの豹変ぶりに問い詰めたカルロスまで動揺してしまう。


「すー、はー」


 アレクシスは深呼吸した後に両頬を叩いて自身を気付けする。


「あ、あの! これだけは言わせてください! 確かに私は嘘も隠しごとも致しました! これは覆しようのない事実です! ですが、これだけは信じてください! 決して裏切るつもりはありません! あなたの私への愛がいくら揺らいでも、私の、あなたへの愛が揺らぐことは未来永劫ございません! お会いした時からそれは変わりありません! どうかそこだけは信じてくださいまし、カルロス様!」

「アレクシス……」


 心打たれるカルロス。真摯な声を聞くと彼女に対しての仕打ちが過ちだったのではないかと疑念が浮かぶ。


「そう、お会いした時、初めてあなたのお顔を見た時から! やっべ、この人めちゃくちゃ顔が良い超タイプと! そう思ってました!」

「アレクシス?」

「やはりカルロス様の魅力はなんと言っても顔! 顔顔顔! 一に顔、二に顔、三四がなくて五に顔といっても過言ではないほどの顔! カスターニャ王国の至宝ここにありですわ!」

「……アレクシス」

「多少思い込みが激しいところもありますが、それしきのこと顔でお釣りがきちゃいますわ!」

「アレクシス!」


 大声で呼んでようやく声が届く。


「あ、呼ばれましたか!? はい、あなたを愛しあたなに愛されるアレクシスはここにいますわよ! そんなに大声出さなくともあなたの声と愛はしっかり届いてましてよ!」

「そういえば聞いてなかったな……君が僕との結婚を決めた理由……聞いてなかったよなぁ……教えてくれるかい?」

「えー? そんなわかりきったことを聞きます?」

「大事なことなんだ、教えてくれ。嘘偽りなく」

「決め手ですか? そんなの決まってますわ! ()()()()()()()()()

「なるほど、これでようやくはっきりした……」


 カルロスの手にはいつのまにか宝珠付きの杖が握られていた。王家に代々伝わる正統後継者にのみ触れることが許される由緒正しき宝物ほうもつ


「アンテッス、カンソース、ミラロ、クーハッセス……」


 小声で呟いたのは魔法の詠唱。

 そして瞬きしてる間に現れる鉄の鳥籠──否、鉄檻。

 鉄檻がアレクシスを逃げる間も与えずに囲む。

 ガシィン!!!

 錠も固く閉ざされる。


「え、ちょ、なんで幽閉されましたの!? どういうプレイなんですの、これ!?」

「アレクシス……つまり君は結婚を顔で決めたのか?」

「え、そうですが?」

「なるほど、僕の聞き間違いじゃなかったみたいだ。つまり君はこう、言いたいんだね。僕には顔しか魅力がないと」

「えええ!? そんなこと言ってませんよ! 顔以外にももちろん魅力はございますよ!」

「ほう、それは一体何だい?」

「えっとちょっーとばかし待ってくださいね、一分! 一分くださいまし!」

「ほら、みろ! やっぱり嘘じゃないか!」

「嘘じゃありません! ちょっと時間が必要とするだけです! 一分といわず三十秒でも!」

「そもそも顔が決め手なんて、薄っぺらすぎる! そんなの真実の愛ではない!」

「んもー! カルロス様のわからずや! 人の愛の基準なんてバラバラなんですのよ! ちょっとそこで待ってください! いま、この檻を抜けますから!」


 アレクシスが檻に手をかけた瞬間、


「カルロス様、危ない! 風よ! コウモリに海を渡る力を! トッパーハロー!」


 マリアはすかさず強力な風魔法をぶち込んだ。


「ちょおおおおお!? なんてことしてくださるの、このマリアとかいう小娘はあああああ!」


 人が入るほどの巨大な鉄檻はアレクシスを閉じ込めたまま窓を突き破り空高く舞い上がる。


「覚えていらっしゃい! 私とカルロス様の仲を引き裂いた恨み、ぜってえ忘れませんわよおおおおおおおおお!!」


 悪役っぽい捨て台詞を吐いて遠く彼方へと飛んで行ってしまった。

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