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イケメンに婚約破棄されましたが面食いなのでぜってえ復縁してみせますわ!  作者: 田村ケンタッキー
【第3章】盗賊退治も淑女の仕事ですわ! ちょっと寄り道ソボク村

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ピンチは乗り越えたけど猛省するアレクシス嬢

「おお、でかした! なんかしらんがそのジジイのおかげで化け物の動きが止まったぞ! いまだ、態勢を立て直せ!」


 出っ歯は素早く起死回生を図る。


「……」


 アレクシスは動かなかった。そして動じてもいなかった。


(どうしましょう? 跳び蹴り? それとも矢を拾って投げる? それとも……)


 トイレに比べればこれしきはピンチのうちに入らない。熟考するがしかしそれは悠長。


「……すまねえな、嬢ちゃん。俺はあんたを勘違いしていたようだ。貴族だからって、女だからって……つまんねーことで威張ってばっかで、そんで人質になっちまって足を引っ張っちゃってよ……」


 村長が脅しをものともせずに喋って動くのでてんぱる盗賊、


「おい、人質! しゃべるな! 変な真似をすると突き刺すぞ!」


 刃物を見せつけて脅すがそれを出っ歯は叱る。


「バカ野郎、突き刺すなよ! 絶対に突き刺すなよ! 大事な人質を傷つけるな、宝石のように扱うのだ、宝石のように!」


 絶体絶命のピンチにもかかわらず村長は余裕たっぷりとニヤリと笑った。


「だが安心しろ……これ以上は厄介にならねえよ……」


 そう言って隠し持っていた短刀を自分の腹に突き刺した。


「ぐああっ!!」


 突き立てた短刀を抜くと血が噴き出す。その傷の深さから本気の覚悟が伺える。


「こ、こいつ、自分で腹を!? 俺は何もしてねえのに! 俺はわるくな──」


 人質を取っていた盗賊は突然気を失ってその場に倒れる。

 その盗賊の後ろにはいつのまにかアレクシスが立っていた。

 まさに秒で人質を解放した。彼女からすれば人質解放もお手の物。

 ただしアナベルを救出した時のような高笑いはなかった。


「……申し訳ございません、村長。私が未熟なばかりに、あなたに深手の傷を負わせてしまいましたわ。これは私の甘さが招いてしまった結果ですわ」

「なに、嬢ちゃん、気に病む必要はない。これは男の向こう傷みたいなもんだ。痛くもかゆくもねえ……ってあれ、本当に痛くねえ? ってえええ!? 傷が塞がっている!!??」


 撫でると傷穴は塞がっている。叩いても痛くはない。


「治癒魔法を施しました」

「お、おう、それなら問題ねえな」

「いいえ、大ありですわ……傷は消えても、あなたに傷がついた事実は消えません」

「……嬢ちゃん?」


 どんなに罵っても緩んでいた口元が、極限まで引っ張った紐のように緩みがない。


「……無辜の民を傷つけて何が淑女ですか! アレクシス・バトレ! なにをやっているの!!!」


 至らない自分に対し激昂する。


「お取込み中のところ悪いが、あとはあの世でやってくれ!」


 出っ歯が態勢を立て直し横一列に即席の弓矢隊を成していた。


「死ねー!!!」


 合図をするも矢は一本も放たれなかった。


「……気を失う前に一つお尋ねしたいことがありますわ」


 そしてアレクシスは出っ歯の後ろに立っていた。


「い、いつの間にいいいい!!!??? お前ら、こっちだ!! 早く殺せ!!!」

「まだお気づきになりませんの? あなた以外とっくに全滅ですわ」

「は、はあああああ!!!??」


 全員が気を失い倒れ込んでいた。


「お話しする気になりましたか?」

「なりましたなりました! だから命だけは、命だけはお助けください!!」


 出っ歯は言われてもいないのに服を脱いで全裸土下座する。


「私らは盗賊ですが、そこらへんの盗賊とは違って、情のある盗賊なんです!」

「……情のある?」

「ええ! 金目のある物は盗っても命までは獲らない! つい昨日だって商人を逃がしましたでしょう!?」

「おかしいですわね……一年前、近くの村に住む若い夫婦を殺したと聞きましたが」

「一年前……? あー、あはは! 滅相もありません! あれは事故ですよ! 俺たちはいつも通り仕事で追いかけまわしていたんですよ! そしたら手綱を握っていた男の馬の扱いが悪かったのか、道を逸れて、近くの木にドッスーンですよ! そんで馬車もバラバラ! 即死ですわな、ありゃ! あはは! あはは!」


 必死に逃げるさまが盗賊には滑稽に見えたようで、つい思い出し笑いしてしまう。


「なるほど……よくわかりましたわ」

「ねえ、もうわかったでしょう? 俺たちは情のある──」

「……あなたたちは顔だけでなく魂までブサイクだってことが」


 アレクシスは出っ歯の後頭部にカカトをかけて顔面を潰した。


「……どうぢて……」


 激痛に出っ歯改め歯なしは気絶した。

 これにて一件落着。しかし気分は一向に晴れないし、お決まりの高笑いもなかった。

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