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愛する人からプレゼントを贈られるアレクシス嬢

「まままままさか結婚指輪!? おかしいですわ!? 指輪は三日後の結婚式で交換の儀式を経てからはめるはずでは!?」


 間違えるはずがない。アレクシスは指輪交換の儀式のために爪を切るのではなく砥ぎ、ささくれ一個出さないようにハンドケアクリーム塗ったり血行が良くなるようにマッサージを欠かしていない。


「そんなこと僕らの愛の前では些細なことさ……なあ、マリア?」

「はい、私も同じ気持ちです、カルロス様」


 見つめあう二人。仮に目をつむれば今にでも急接近しそうな空気。ありもしないはずの薔薇が幻覚として見える。


「待てええええい! ぽっと出の、どこぞの馬の骨も知らぬ女に、カルロス様の唇は渡せませんわ!」


 引き離そうとドレスのまま猛進するアレクシス。


「申し訳ございません、アレクシス様!」

「ここはお引き下がりください!」


 フルアーマーを身にまとった屈強な親衛隊二人が彼女の前に立ちはだかる。


「おどきなさい!」


 それを畑のカカシでも抜くかのように片手で放り投げた。


「許しませんわよ、マリアとやら! 私よりも先に指輪を貰うなんて!」

「なんだい、指輪が欲しかったのかい。それなら似たようなものをプレゼントしよう」

「ええ!? プレゼント!?」


 声のトーンの差が明らかに違う。


「なんでしょう、なんでしょう! カルロス様からのプレゼント!」


 ウキウキしながらプレゼントを待つ。その様はおやつ抜きを食らったがフリスビーを見せた瞬間機嫌を直し尻尾をぶんぶん振り出す犬のよう。


「腕を出して」

「指ではなくてですか?」

「そう、腕」


 マリアが懐から腕輪を取り出し、カルロスはそれを受け取り、アレクシスの左腕にはめた。


「まあ素敵な腕輪! マリアとかいう小娘が着けている指輪よりも数倍も大きいですわ! まるで愛の大きさに比例しているようですわね! おーっほっほっほ!」

「良かったですね、アレクシス様」


 マリアは見せつけられても悔しさを感じさせない笑顔を見せて祝福する。


「や~ん、素敵~! もう一生外しませんわ~!」


 上下縦横東西南北から愛する人からの贈り物を食い入るように見る。


「気に入ってくれたかい?」

「ええ、とても! そもそもカルロス様から頂いた物なら鼻をかんだハンカチだってお宝ですわ!」

「へえ、そう……」


 突然の発言にカルロスは軽く引く。


「でもどうしてでしょう、なんだか禍々しいオーラを感じるのですが」

「それもそのはず、それは魔封じの腕輪だからね」

「ほほう、魔封じの腕輪ですか………………………………魔封じの腕輪!?」

「それもかつて世界を混沌の闇に陥れた不滅の魔女の工房の一部を使った特級品だ」

「ちょちょちょガチじゃありませんか! というか外れませんけど、これ! ふんうぬぬぬううういだだだだだだだだ」

 

 頑張って抜こうとするが手首でひっかかる。それでも無理して引っ張ろうとすると手首から先が白色を通り越して青色になる。


「そりゃそうさ。一度着けたら外れない構造になっているからね」

「どうしてこんなことを……あ、わかりました、これを僕だと思って永遠に着けてほしい、そういうことですか?」

「つくづく君と会話をしていると嵐の日に感じるような頭痛が止まらないよ……いいだろう、特別に教えてあげるよ。その腕輪を君を捕らえ──」

「そんな捕らえてどうするおつもりですか? 私はどこにも逃げも隠れもしません。それにカルロス様がお望みなら寝台にだってきゃっ私ってば何を言ってるのかしらはしたない」

「──処刑台に送るためだ」

「もうカルロス様も白昼堂々と処刑台だなんて……………………処刑台って仰いました?」


 アレクシスはプレゼントを贈られるだけでなく、処刑台に送られようとしていた。

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