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イケメンに婚約破棄されましたが面食いなのでぜってえ復縁してみせますわ!  作者: 田村ケンタッキー
【第2章】物理的に飛ばされて未開の地。再会あり、バイオレンスあり、ロマンスあり

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番外編 城に戻ったイバン様

 半日かけて歩いて城に戻ったイバン。


「イバン様ー! ここにいらっしゃいましたか!」


 城門の前で腹心のペペ・エスコバルが慌てた様子で駆け寄ってくる。


「ってまたなんでそんなボロボロのお姿に!? さてはまた森へ行っていたのですか!? 何度も言いますが僕も連れて行ってくださいよ!」

「はー? 城の外周を走って一周もできない軟弱野郎が生意気言ってるんじゃねーよ」

「そこは箒に乗れば解決するじゃありませんか!」


 ぺぺ・エスコバルは魔法の名門エスコバル家の出身。幼少からの付き合いであり、南部に左遷させられたイバンについてきた数少ない王都からの忠臣だった。ただし魔法が得意だが運動はからっきし。おまけに極度の近視で眼鏡がなければまっすぐ歩けないほど。


「バーカ。マナが濃い土地での箒乗りはコントロールが効きづらくて危険だって魔法学校(バビロン)で学ばなかったか?」

「それはそうですが……」


 ペペは言い返せずにしょぼくれてしまう。


「それで、わざわざ俺を呼び止めたのはそんなつまらないことを言うためか? その持っている手紙には俺の名前が書かれているようだが」

「ああ! 忘れるところでした! こちらが本題です! なんとカルロス王からお手紙とお荷物が届いております!」

「なに、カルロスから?! それを早く言え!」


 イバンは手紙をひったくると読み始める。


「親愛なる我が忠臣……ああ、まどろこっしい前置きは読み飛ばすか……仲違いは続いていたがこれを機に正式に交友関係を正常化したい……だと?」

「ええ、贈呈品として、たくさんの水が届きましたよ。王都からの東の山で採れる名水らしいです」

「水……水だと!?」


 イバンはアレクシスの忠告を思い出した。飲み水には気を付けるようにと。


「まだ開けてないよな!?」

「いいえ、止めはしたのですが……みんな王都からの贈り物だって目を光らせて、イバン様の許しも得ずに開けてしまいました」

「まさか!? 飲んぢまったのか!?」

「えとそれが……中身が水だとわかるとみんな興味を失っちゃいまして……誰も指一本触れていません……お酒とかを期待してたんでしょうね」


 イバンはがくりと膝から落ちた。


「ったく、馬鹿野郎どもがよぉ……!」


 容易に目が浮かぶ。期待に胸を膨らませてからの一気に落胆する光景が。


「それでどうしましょう? 早速一口飲まれますが?」

「いいや、それなんだが、一本を残して全て廃棄してくれ」

「わかりました、一本を残して廃棄……え!? なんでですが、カルロス様からの贈り物ですよ!? 捨てちゃうのですか!? それも一本だけ残して!! 仲直りの印の記念品ではないのですか!?」

「なあ、ペペ。この手紙、カルロス本人が書いたものだと思うか?」


 ペペはインクが手に移らない程度に手紙を手のひらでなでる。


「魔法鑑定をしましたが……カルロス様直筆に間違いないと思います」

「なるほど、やはり、おかしい」

「おかしい、のですか?」

「ああ、そうさ。俺とカルロスはな、#喧嘩はすれど仲違いはしないんだよ__・__#」

「さすがはイバン様です。森から戻られてからますます元気を取り戻したようで」

「ああ、かもな。いや実はな、聞いて驚くなよ、森でなんとアレクシスと出会ったんだ」

「アレクシス!? アレクシス様とですか!!!?」


 ペペは大声をあげて驚愕した。


「おいおい、いい反応だが、そりゃ驚きすぎってもんだぜ」

「驚くのも無理はありませんよ! その、もう一つ、ご報告したいことがありまして! イタズラか、何かの間違いだとは思うのですが……」


 もう一枚の紙を取り出して見える。

 イバンはそれを確認して眉をひそめた。


「……おいおい、嘘だろ……」


 それは指名手配の令状。罪状は国家転覆未遂。名前と似顔絵もアレクシス・バトレそのもの。

 手紙をよこしたのに、婚約者が罪人扱いになっていることに触れないなんてますます怪しい。


「ここまで中枢がやれてるのかよ……やはり、城に籠っていられないようだな」


 イバンは着替えを始める。森の狩人から鎧を身に纏う騎士の姿へと変身する。彼は何事も形から入る。顔つきも騎士のそれへと変わる。


「ペペ。町中の部下たちを急いで招集しろ。サボってるやつも休日のやつも酔っぱらってるやつもだ!」

「一体何をなさるおつもりなんですか!?」

「決まっているだろう!」


 これは一人の女性のためではない。


「国を救いに行くんだよ!」


 れっきとした領主としての仕事である。

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