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誤字報告下さった方、ありがとうございました。

「──ローズ! 君との婚約を破棄する!」


 ここで、時は舞踏会に戻る。


 ミツキの言った通り、ジョシュアはわたくしに婚約破棄を言い渡した。


 広間の貴族達が好奇な目で私を見て来る。


 その中に私の父もいる。


 宰相である父はとても心配そうにこちらを見ている。


 ああ、お父様。心配かけてごめんなさい。


 でも私は戦いますわ。私が悪役令嬢と言うのなら、私はその立場を利用して運命にあらがってみせます。


 けれど──。


 "大丈夫? ローズ、震えてるみたいだけど"


 頭の中のミツキが心配そうに尋ねた。


「だ、大丈夫。む、武者震いですわ」


 本当は怖い。けれど、負けるわけにはいかない。


 私は口を開いた。


「ジョシュア様、理由をお聞きしても?」


 するとジョシュアが答えた。


「君は、シャーロットに日頃から冷たく接していた。そしてこともあろうか毒殺を企てた。

 君がシャーロットに贈った紅茶には毒が含まれていた。調べはついている」


 私は思案する──。


 私はやはりめられたのね。


「ジョシュア様。確かに私はシャーロットに嫉妬しておりました。

 なぜなら、シャーロットは可愛らしく、誰からも愛される存在。

 素直になれない私の性格とは正反対でしたから」


 私がそう言うと、ジョシュアの隣に立つシャーロットはうつむいた。


 私はシャーロットに向かって口を開く。


「シャーロット。この場で言うには遅すぎるわね。けれど言わせて下さい。

 私が貴女に嫌味を言ったことは、私の未熟さゆえの過ちだったわ。

 貴女を傷つけてごめんなさい。心から謝罪いたします」


 私は深く頭を下げた。


 "ローズ……"


 ミツキが呟いた。


 と、そこでジョシュアが叫ぶ。


「ローズ! 謝ったところで殺害未遂の罪は消えない。君を逮捕する! 憲兵隊、ローズを捕らえよ!」


 ジョシュアの命により、広間に控えていた憲兵隊が私の元へ駆けつけて来る。


 私はキッとジョシュアを睨んだ。


「ジョシュア様。私がシャーロットに嫌味を言ったのは認めます。

 ですが、私はシャーロット殺害未遂には関わっていません。

 私は紅茶など贈っていません」


「見苦しいぞ! ローズ!」


 私はジョシュアの迫力に圧倒されそうになる。


 憲兵隊は私を取り囲むも、事態を見守っているようだ。


 "頑張って、ローズ!"


 ええ、ミツキ。私は負けないわ。


「ジョシュア様、これは私を陥れようとする罠ですわ」


「はぁ? 何を根拠に」


「では、なぜ、私がシャーロットを殺す必要があります?

 私とジョシュア様は婚約しております。

 シャーロットを殺害しても私に利益などございませんわ」


「君はシャーロットが嫌いだ。だから感情的になったのだろう」


「私はそんな浅い人間ではございませんわ。

 たとえジョシュア様がシャーロットのことを寵愛していても、私は何とも思っていませんし」


 まあ、ジョシュアに対して恋愛感情はないって意味ですけれど。


「な! 僕は別にシャーロットを寵愛なんかしていない」


 ふっ。見苦しいわね。


「では、私と婚約破棄した後、ジョシュア様はどなたと婚約されるのです?」


「そ、そんなことは未定だ! 話をらすな! それとも僕がシャーロットと婚約するために君を陥れたとでも言うのか!」


「いえ、そんな風には考えておりません」


 だってジョシュアにそんな機転が利くとは思えないから。


「君は何を言いたいんだ!」


「私が捕まって、一番得するのは誰でしょう?」


「何……?」


「私が捕まったらブラッドレッド家の名は地に落ちますわね。

 当然、私の家族も職を追われるでしょう。

 宰相の父も職を辞するしかありません。

 となれば、宰相の座を継ぐのは副宰相。

 副宰相殿には美味しい話ですわね」


 私は、周囲の貴族達の中から副宰相を見つけた。その男の表情はけわしい。


「副宰相が君を陥れたと言うのか? だが、証拠はあるのか?」


 さて、ここが正念場ね──。




 一時間ほど前──。


 わたくしとミツキは事前に副宰相の件を話し合っていた。


 ミツキが言う。


 "ゲームでは、正ヒロインのシャーロットのルートでも副宰相は悪なんだ。

 副宰相は宰相を毒殺し、その罪をシャーロットになすりつけようとする。

 馬鹿な皇太子はシャーロットを捕らえようとするんだけど、憲兵隊の隊長がシャーロットのヒーローで、シャーロットを救うんだ"


「なるほど。副宰相が犯人だと言う証拠はあるのかしら?」


 "憲兵隊の隊長が、副宰相の執務室を調べると、毒の紅茶と、封蝋に使うための、偽のブラッドレッド家のハンコが出て来るんだ"


「分かったわ。それを使わせてもらうわ」





 ふたたび、広間に戻り──。


 わたくしはジョシュアに証拠を突きつける。


「──副宰相殿の執務室に、毒の紅茶と、偽のブラッドレッド家の印章がありますわ」


 私がそう言うと広間はざわめいた。


 ジョシュアはいぶかしげに聞く。


「出まかせにしか聞こえないぞ、ローズ。君がそんなこと知り得るわけがない」


 確かにね。ミツキが見た光景でしかないもの。


 しかし、ここはハッタリで行くわよ。


「では、私の家から毒の紅茶が出たとでも?

 私の嫌疑も、副宰相殿の嫌疑も状況は同じでは?

 私を断罪するなら、副宰相殿の執務室を調べてからにしていただきましょう!」


「むむ……」


 ジョシュアは口をつぐんでしまう。


 すると、広間にいた副宰相が声を上げた。


「くっくっくっ。馬鹿馬鹿しい。逆恨みもここまで来ると哀れですなぁ。

 いいでしょう。どうぞ私の部屋をお調べになって下さい。

 絶対に、ぜーったいに、何も出ないでしょうからなっ!」


 ふっ。自信満々ね。


 あんたのその自信を打ち砕いてやるわ!


 すると、私のそばにいる憲兵隊長が口を開いた。


「殿下。レディローズの言は的を射ております。

 と、言いますか、実は舞踏会が始まる前にレディローズから相談を受けていたので、先ほど、副宰相殿の執務室を調べさせていただきました」


 それを聞くと副宰相は驚いた。


「何ぃ?」


「……それで、結果はどうだった?」


 ジョシュアが聞いた。


「レディローズには残念ながら──。

副宰相殿の部屋からは何も見つかりませんでした」


 そこでまた広間はざわついた。


「ふっ。だから言ったでしょう。人に罪をなすりつけようとするとは、ブラッドレッド公爵令嬢殿は度し難いですなぁ」


 副宰相はほくそ笑んだ。


 "な!? やばいよ、ローズ!"


 ミツキからは焦っている様子がうかがえる。


 大丈夫よ。ミツキ。見ていて。


「──ですが」


 と、そこで、憲兵隊長が続けた。


「レディローズによると、念のために副宰相殿の部下の部屋も調べるようにとのことでしたので、副宰相補佐の部屋も調べました──」


「な、なっ!?」


 副宰相が声を荒げるも、憲兵隊長は続ける。


「補佐の部屋からは、毒の紅茶と偽のブラッドレッド家の印章が見つかりました。

 そして、補佐は副宰相殿が犯人だと白状しました」


「ば、馬鹿なぁ!」


 副宰相の顔は真っ青だ。


 すると、憲兵隊長が指示を出した。


「憲兵隊員、副宰相を捕らえよ!」


「ま、待て!」


 副宰相はじたばたするも、憲兵隊員に取り押さえられた。


 そして、私のそばにいた憲兵隊長は、直に縄をかけに行った──。


 そこで、私は呟く。


「ふっ。これで解決ですわね」


 "やるじゃんローズ! さすがあたしの推し!"


 ミツキが歓声を上げた。

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