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第48話 海に恵みを




 夜半、雨の音で目が覚めた。


 葉の陰にいたので、私だけは雨には濡れなかったようだ。


 もぞもぞと起き上がると、アオが目を開けた。


 空を見上げると、雷を纏った雲たちが集まっていた。


 

「やばそうなのです」



 そう言った途端に、雷がナノダスの木に落ちた。


 もろに直撃の余波を受ける私たち。


 

「いてっ!」

「きゃあ!」



 飛び起きたリオンとマリー。


 まぁ、このくらいなら耐えられるはずだ。


 アオが一番心配だ。


 そんなアオと目が合った。目をパチクリさせている。



『わたし へいき!』



 平気そうだ。良かった。


 すぐに近くに漂っていた浮島を呼び、そこへ避難をした。


 その間にも、次々と雷たちがナノダスの木へ落ちていく。


 

「頑丈な木ね。葉が落ちることさえないみたいよ?」



 マリーの言う通り、生い茂る葉たちは、その一枚たりとも落ちている様子が見当たらない。


 試してなかったが、あの葉を千切ることはできたのだろうか?


 とりあえず、今は雷たちのせいで近づくことはやめておくが、そのうち試してみよう。


 さらに濃い雷雲が出来始めている。


 この調子なら、ナノダスは落雷を耐え切ってしまうだろう。


 日の出もまだではあるが、今日はやることが残っている。


 こうして、水の浮島で海中に木を植える場所を探しながら休むことになった。



「ナノダス! またね!」



 私たちは超大木ナノダスに手を振って、その場をあとにした。


 



 ナノダスの正反対の場所に、海中の木を植えようと思っていた。


 バランス良く環境を整えようと考えていたのだ。


 そんなことを伝えると、マリーから助言を頂けた。


 

「何が正しいとか悪いとかじゃないんだけど、命あふれるとこは正の性質のものが集まりやすいよ。逆に、負の性質のものは暗がりを好むね。負の性質のものたちのために居場所を作ってあげると考えると、正反対に植えるとかじゃなくて、少し偏った配置にした方がうまくいったりするよ」

 

「なるほーなのです」



 確かに生きものは多様だ。


 負の性質の生きものにも、星にとっては大切な役割があったりするものだ。


 

「ま、結局は生きものたちはどんな環境にも適応していくから、あんまり考えすぎなくてもいいんだけどね。一つの参考として聞くぐらいでいいよ」


「マリー、ありがとなのです!」



 こと星を育てることに関しては、マリーはエキスパートだ。


 きっとよく起こるトラブルの解消法として、教えてくれているのだろう。



「観察しやすい場所を考えると、転移の陣とナノダスの木との間かな? いいところがあるといいのです」



 頷いたマリーの指差す方向が転移の陣、つまりは南極だ。


 そして、海底の様子はアオが知っている場所も多い。


 これで場所探しは、概ね目処がたったといえるだろう。


 ということで、転移の陣までの間で比較的浅い海底地形の場所に木を植えようと思う。


 アオにそんな場所があるかと聞くと、少し不安気な顔だ。



『うみのなか まえとちがう だいち できたせい』



 そうか、大地の創造の影響は海底にも及んでいるのか。


 じゃあ、海底の調査から始めないと。


 

『でも だいじょぶ! おとのちから ある! から!』



 アオはそう言うと、浮島から海へ飛び込んで行った。


 そして、海中を進むアオについて行くように浮島を進める。加護の力のおかげでアオが何処にいるかは分かる。便利な力だ。


 南極がどっちにあるかを分かっているように正確な方向だと、マリーは感心していた。


 しばらくすると、アオはある場所で動きを止め、さらにしばらくすると、アオは浮島に戻ってきた。


 

『ここ どう?』



 さっそく海中調査用の魔力空間を作り出し、みんなで海へ。


 アオの先導で海中を進む。


 そこは海流も穏やかで、水深も浅いようだ。



『あっちに おおきいうねりある おかげで ここには つよいなみ こない』



 アオの小さな声には自信がこもっている。


 海流については、私より詳しいのは間違いない。


 マリーとリオンを置いて、魔力空間から出てみる。


 その海底に着くと、サラサラとした白い砂地が広がっていた。


 

「海の中の木かぁ。メルのとこで見たことあるけど、珍しいよな?」


「そうだね。でも、メルの星は木というより根だと思うけどね」



 二人が私の知らない星の話をしている。


 少し羨ましい気持ちがわく。


 早く私も他の星へ行ってみたいものなのです。


 おっと、今は海中の木のことを考えないとなのです。


 この木の目的は、酸の海の浄化と空気を作ることにしようと思っている。


 そして、環境が落ち着いたあとは海を見守ってほしい。ーーそうだ!


 アオにも何か希望はないか聞いておこう。



「アオ! 今から創る木にこうしてほしいとか、何か希望はないのです?」



 急な質問にアオは戸惑っていたが、すぐに答えが返ってきた。



『マーマ マリー リオン たべれる かじつ ほしい!』



 アオ! なんて優しい子!

 

 今すぐ抱きつきたい気持ちを我慢していると、リオンが飛び出してアオに抱きつく。



「アオーー! お前はなんて優しいんだ!」



 ぐっ! リオンめっ!

 ずるいぞ!


 

「ティア! リオンは後でお仕置きするから、始めていいよー!」



 そそくさと魔力空間に戻るリオン。


 マリーの言う通り、リオンには後で痛い目に遭ってもらおう。


 さて、食べれる果実か。


 私たちにとっても嬉しいが、アオが食べれる果実なら、もっと最高だ。


 うまくできるといいな。


 太陽の光が届く海の中。


 これから創る木のイメージを思い浮かべ、私は創造の魔法陣を作り始めた。


 激しい海流に負けないように、高さはほどほどで太く頑丈な木にしよう。

 根からは酸を吸い、葉からは空気を生み出す構造がいいだろう。

 アオが食べても無くならないぐらいの大きな甘い果実を実らせてほしい。

 この海を豊かにし、海の生命たちを導ける存在となるように。

 いつまでも、この星を見守ってほしい。


 そんな願いを込めながら、魔法陣を編み込んでいく。


 テンポよく魔力の糸を編み込んでいくと、星の力を見つけ、その輝きに目を奪われる。


 きれいなのです。


 まだ二度目の創造だが、魔法陣の作成は上手くなった気がする。


 魔力を操るのは好きだ。


 みんな驚いてくれるから、よけいに得意だと思い込んでしまう。


 私は特別な存在なのだろうか。


 時間が止まったかのような静寂。


 どこからか数を数える意識のカウントの音が聞こえてきた。


 星の力の光の中に、暗闇で泣いている人の姿が見えた。


 あれは私? そんなに泣いてどうしたの?です?

 あれ? 私は何をしているんだっけ?

 


「ーーア! ティア! しっかりしなさい! ちゃんと力を制御するんだよ!」



 マリーの大声で、はっと我にかえる。


 いつの間にか、マリーはすぐ近くまで泳いで来ていた。


 どうやら意識が朦朧としていたみたいだ。


 すぐに疲労感を探る意識を確認するが、特に大きな変化は感じられない。


 マリーに大丈夫だと目で合図を送り、創造の力へ意識を戻す。


 目の前には、すでに立体の魔法陣が完成している。


 大急ぎで魔法陣の確認を行う。


 意識を加速させれば、なんとでもなるはずだ。


 そして、確認の結果、特に問題のあるような箇所は見当たらなかった。


 よし! このまま発動させるのです!



「海を浄化し、星に空気を! 恵み多き海の礎となれ!」



 詠唱とともに、創造の力が発動する。


 魔力の糸に星の力が混ざり合い、木の形を描き実体化を始める。


 その木の幹は太く丸みを帯びており、そこからまるで海流のような枝たちが、螺旋を描きながら広がっていく。それに、大きな丸みのある葉が等間隔で生えていく。


 光がおさまると、そこには森ではないかと見間違えてしまう。そんな木が生まれた。


 

「ティア! なんともない? 大丈夫?」



 すぐに、マリーが私の心配をしてきた。


 マリーの手のひらに包まれ、魔力空間へ避難する。


 アオも心配そうな顔でこっちを見ている。


 海中に木を創造した影響で、すでに海が騒ぎ始めている。


 

「いやぁ、ティアはすごいなぁ。こんなでかい木を創れるなんてなぁ」


「リオンのバカっ! そんなことよりティアの心配をしてよね!」



 マリーに叱られ、しまったという顔をするリオン。


 すまない。リオン。

 私は大丈夫だから、存分にこの木のことを褒めて欲しい。


 と思ったが、口に出すのはやめておいた。


 きっとマリーはさらに怒るだろうからだ。


 

「何があったの?」


「え?」


「創造の途中で、ティアは急に光り始めたのよ? なんだか心がそこにはないって感じで」

 


 そうだったのか。

 自分では分からなかった。

 そういえば、星の力の光を見たら、なんだか気が遠くなっていって……

 

 その時のことは、はっきりと思い出せない。



「星の力に飲まれたってことかな? 分からないものはしょうがないね。ま、帰ったらユタに聞いてみよう」


 

 マリーに任せておけばいいかと、気楽な気持ちでいると。



「あ! しばらくはユタと私がいない時は創造するのは禁止だよ!」



 にっこりと笑うマリー。


 これを断ると恐ろしいことが起こる気がする。


 元気よく分かったと返事を返しておこう。

 

 しかし、また面倒な約束をしてしまった。


 しょげていると、リオンが私の肩に手をポンと置いてきた。



「仲間だな、俺たち!」



 歯を見せて微笑むリオン。


 なんの仲間だろう? マリーに聞こえたら大変なのになと思い、ため息が出た。


 ま、リオンとも妙な絆が生まれたみたいだし良しとするか。


 そんなことを思いながら、改めて創造された海の中の木に視線を向ける。


 

「アオみたいな枝だね。大きすぎるけど」



 ようやくマリーも、あの木へ興味を持ってくれたようだ。


 それから、恒例のマリーとの考察タイムが始まる。

 

 超大木ナノダスと比べると高さはないが、それでも充分に大きいだろう。特筆すべきはその幹の太さだ。実に極太である。


 その極太の幹からは、捻れながらこれまた太い枝が、その枝からまた枝が。そうやって無数に広がる枝は、確かにアオの身体のようにも見える。


 葉っぱもでかい。その丸みを帯びた一枚葉は海面に表を向けて等間隔で広がっている。


 そんな葉っぱたちは太陽の光を浴びて嬉しそうだ。


 

「ほら! さっそく空気を生み出してるよ!」



 マリーが指差した葉っぱが、空気の泡を吐き出している。


 それを見て、思わず笑顔になってしまう。


 海上へ向かって、次々に空気の泡が上がっていく。


 太陽の光が差す、海の中。


 アオが海中を泳ぎまわり、空気の泡に戯れたりしている。


 アオも嬉しいようだ。


 そんな光景を見ながら、私は良かったとひと息をついた。

 


 

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