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第47話 植物の始まり




 日が暮れようとしている。


 今日は、ほとんど移動で終わってしまった。


 まぁ、ただ移動していた訳ではなく、気になった地形を見つけるたびに調査に出ていたのだが。


 おかげで分かったことがたくさんある。


 まずは、この大陸はかなりの大きさであるということだ。地平線の様子から楕円形であるようだが、この浮島の速度では一周するには数日かかってしまいそうだ。


 私の速度に自信のある翼で飛んだとしても、一日で周ることは難しいだろう。


 星の大きさから考えると、星全体の三分の一程度が大地に変わったようだ。


 マリーの言う通り、ちょっとやりすぎたのかも知れない。


 急激な環境変化によって、空も荒れ始めていて、風は強くなり雲も増えている。


 それでも、最初の風や雲に比べたらかわいいものだと思うし、この水の浮島の結界の中にいると、いまいち緊張感はないのだが。



 大地は、岩のような硬い地盤が続く。


 その地形は様々で、もともとの海底の地形がそのまま海上に上がってきたという表現が近しいかもしれない。


 以前の気候が比較的穏やかだった場所は、海底が浅く山のようになっていたのかもしれないと考察することもできた。

 

 アオの方向感覚や空間認識能力は、マリーも驚くほど高いようだ。


 アオに聞くと、ここには海底火山があった、深い海溝があったなど、大地の創造前の姿を知ることができたのだ。


 こういうのは私の苦手な分野だから、助かる。


 すごいぞ、アオ!


 どうやって分かるのかは、今度聞いておこう。


 さて、陸上に植える木について、もう少し考えていこう。


 育ちやすいように柔らかい土壌を探したが、そういう場所は雨によって沼になってしまうそうだ。観察していくには不向きかもしれない。


 となると、硬い地盤でも育つ木だが、そもそも植物は、創造の際に力を込めれば込めるほど生命力の強いものが生まれる。


 今回は二本の木だけを創るつもりなので、特別な木にしようと思っている。


 きっと硬い地盤でも、元気に育ってくれるだろう。


 一番高い山が見える範囲に、大きな湖が出来そうな窪んだ地形を発見した。


 その底には、雨によってすでに池が出来始めている。


 近くに火山も見当たらない。



「この辺りがよさそうなのです!」

 


 すぐ近くに高台の開けた場所を見つけた。


 私たちは浮島を離れ、その場所に降り立つ。



「いいんじゃない? 湖となりそうな水源も近いし、いい所を見つけたと思うよ」


「マリーもそう思う? じゃあ、ここにするのです!」



 これだけの広さなら、上手く育てば豊かな森になるだろう。


 さぁ、初めての植物の創造だ。


 これからどうなるかを想像して、胸が高鳴っているのが自分でも分かる。


 不安もあるが、期待の方が大きいかな?


 ぜひとも豊かな星になってほしい。


 

「これからが、ティアの星の始まりだよ。良い星になりますように」



 マリーが手を合わせて祈りを捧げてくれる。


 リオンもマリーに続いて、目を閉じた。


 アオとは目が合った。



「アオ! 上手くいくかは分かんないけど、一緒に頑張ろう! これからもよろしくなのです!」



 アオと頷き合う。



「私たちの星の始まりなのです!」



 アオが大きな雄叫びをあげた。


 それを合図に、私は植物の創造を始める。


 魔力に集中し、大木をイメージした魔法陣を編み込んでいく。

 

 マリーに教わった魔法陣だ。


 平面ではなく、私流の立体魔法陣だが。


 魔法陣の構造自体は同じだが、これならより複雑な生態や願いを編み込められる。


 丁寧に慎重に魔力を編み込んでいく。


 この大地を豊かな緑であふれるように。

 これから生まれてくる生きものたちの糧となるように。

 くり返される生命たちを導ける存在となるように。

 いつまでも、この星を見守ってほしい。


 そんな願いを込めて、魔法陣は完成した。


 我ながら、なかなかの出来だと思う。


 

「星に豊かな恵みを!」



 私の詠唱とともに、創造の力が発動する。


 どこからともなく強い力が現れた。これは星の力だ。


 初めて扱う力だと思っていたが、違った。

 ずっと一緒にいたんだ。

 私は、いつもこの力と共にあった。


 優しく光るその力。


 その力が魔力と混ざり糸となり、その糸が大きな木を象っていく。


 えっ……と、ちょっとでかすぎたかな?


 山と同じぐらいの高さ、太さも相当な大木が創造されようとしている。


 そんな木を覆っていた優しい光りがしだいに消えていく。


 そこには、見たこともないほど大きな大木。いや、大木どころではない、超大木が生まれたのであった。



「で、でかすぎるんじゃないか?」



 リオンが上を見上げて、震えた声で言う。



「やっぱりティアって、いつも想像を軽く超えてくるよね。逆にもう驚かなくなってきたよ」



 マリーはそう言っているが、あの顔は絶対に驚いている時の顔だ。


 強がっても、お見通しなのです。


 というか、たぶんこの超大木を見て引いているはずだ。


 だって、なぜそう思うかというと、この木の大きさに一番驚いているのは、私だからだ。


 念のため、自分でも驚いていることを知らせておこう。


 ちょっと、いたずら心が騒いだ。


 両手をワナワナと振るわせる演技をしながら真剣な顔で言う。



「自分の才能が恐ろしい。……とんでもない大きさの木を生み出してしまったのです。想像を超えた大きさなのだす」


「……だす? なのだす?」


 

 一瞬間を置いて、マリーとリオンが吹き出している。


 くっ、変な感じになってしまった。



「ねぇ、ナノダス? もしかして、ナノダスは、こんな大きな木を生み出すつもりはなかったの?」



 ナノダス? へ、変なあだ名で呼ばれてる!


 

「誰がナノダスなのです!」



 抗議はしたが、すればするほど笑いが起きてしまう。


 不真面目なマリーとリオンは放っておいて、この目の前にそびえ立つ一本の木を見る。


 やはりとんでもなく大きい。


 アオが頭に乗れと催促してきた。


 この木を一緒に見てまわりたいみたいだ。


 それから、アオとこの木に登り始める。


 アオは器用に幹の窪みや枝に絡みつきながら、この木の先端を目指す。


 アオの身体に触れて、揺れる葉たち。


 その葉は、生まれたての新芽のような柔らかさと色合いで、太陽の光を受けて輝き、風に揺られ、まるで産声をあげているように騒がしい。


 少し時間がかかったが、この木のてっぺんにまで来ることができた。


 アオは満足そうだ。


 下を見下ろすと、改めてかなりの高さであることが分かった。


 

「なんとか成功したかな?」


『すごい き! マーマ すごい!』



 アオも喜んでくれたようだ。


 頭を撫でておこう。


 アオの頭の上で、一緒に頂上から夕日を眺めていると、マリーが飛んできた。


 ぴょこんとアオの身体に座るマリー。



「リオンはどうしたのです?」


「そのうち来ると思うよ。この木を見てたら、登りたくなったんだって。男ってよく分かんないよね?」



 こうして、マリーとこの木についての考察タイムが始まる。


 さすがに、これほど大きな木は珍しいらしい。


 マリーの星のどれよりも高く大きいと教えてくれた。


 

「きっと、この星を見守ってくれるいい木になるよ」

 

「そうなのです? 良かったのです!」

 

 

 マリーにも褒められて、今日は素晴らしい日なのです。


 つい鼻歌がこぼれてしまう。


 

「お〜い!」



 幸せな時間を過ごしていると、リオンが登ってきた。


 

「いやぁ、この木はすごいな! 他の星に自慢できる難易度だったぞ!」


「リオン? 他の星に言ったらダメだって言ったよ? 怒るわよ!」


「う、分かってるよ。それに、もう怒ってるじゃん」


「なんか言った?」



 リオン、がんばれ! 強く生きるのです!


 

「この木、なんて名前にするんだ?」



 リオンの質問で、名前をつけることを思い出す。


 なんて名前にしよう。


 そういえば、この大地にも名前をつけてあげないとだった。


 しばらく悩んでいると、アオが口を開いた。



『なのだす』



 それを聞いて、マリーらの思い出し笑いが始まる。


 

「ちぇっ、せっかくいい気分だったのにです」


「ごめん、ごめん。でも、名付けには何か由来があるといいかもだよ? 悪くない名前だと思うけどね」



 マリーの言葉から、みんなのフォローが続いた。


 結局、他にいい名前は思い浮かばず、四人での思い出となった、この言葉をつけることにした。



「この木の名前は、ナノダス! 超大木ナノダスなのです!」



 命名の言葉に、三人の歓声が上がる。


 これからたくさんの名前をつけていかないいけない。


 名前のストックを作っておかないとね。


 ふとナノダスの葉を見ると、なんだか喜んでいるように感じた。


 

「分かる? 創造した星には植物の声が聴こえるのよ。永く生きればお話しができるぐらいになることもあるんだから」



 マリーの話では、そういうこともあるらしい。


 だが、今はマリーの星にはそんな植物は存在しないという。


 植物と話せるというのは、楽しいことばかりではない。


 生きものたちの世界は弱肉強食。


 これは、マリーが何度も何度も教えてくれる教えであった。



 今日はナノダスの樹上で就寝する。


 持ってきた食料の関係から、明日には帰らないといけない。


 アオとはまた少しの間、離れ離れだ。


 今のうちに、できる限り一緒にいよう。


 私は、アオの頭を撫でながら目を閉じる。


 空には、満点の星空が広がっていた。


 


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