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第46話 酸素




 太陽が顔を出し、世界を明るく照らし始めた。


 朝日を浴びて、目が覚めた。


 一瞬、ここはどこだか分からなかったが、すぐに思い出す。


 昨日はそのままアオの頭の上で寝たのだった。


 アオが静かに鳴いた。


 私が起きたのに気付いたようだ。



「おはよう」


『おはよう?』



 マリーたちが起きるまでは、アオに言葉を教えてあげた。


 アオは頭が良い。


 教えた言葉はすぐに覚えてしまう。


 私たちの笑い声で、マリーとリオンも起きてきた。


 二人とも、朝はかなり弱い。


 今日も寝ぼけた声を出して、あくびが止まらないようだ。


 

『マリー リオン おはよう』



 アオの挨拶で、目が覚めたようだ。


 挨拶の後の雑談を終え、朝食をとる。


 持ってきた食料はこれで底をついてしまった。



「次に来る時は、もっとたくさん持ってこないとだね。何か方法はないかなぁ」


「俺なら、どんなものでも持ってみせるぜ!」

 

「リオンが持てても、大きすぎると転移できないんだよ? まったく」



 今日も、リオンのマリーへのアピールは効果がないようだ。


 たくさんの荷物を運ぶ方法か。


 確かにアオの体格を考えると、私たちが持て来た量では足りなすぎる。


 アオに味わってほしい食べ物はまだまだたくさんあるのだ。


 しばらくは優先順位の高い悩みになりそうだ。


 

「アオは毎日どれくらいの食事が必要なのです?」



 何気なく質問をすると、アオは言葉に困った様子で、私を海に誘ったのだった。


 新しい大地を観察しながら、海岸線へ。


 気になる風景も多かったが、今はアオのことが最優先だ。


 そうして、昼前には海が見えてきたのであった。


 マリーとリオンも見たいと言うので、海中用の魔力空間を作り出す。



「うわぁ。簡単にこんなものを作り出すなよな」


「ね? ティアはすごいでしょ?」



 展開された空間の中で驚くリオンに対して、なぜか自慢げなマリー。


 まぁ、この調子ならリオンもすぐに慣れてくれるだろう。


 アオが私たちを待って、海中を泳ぎ始める。


 

「何を見せてくれるのです?」



 私の声が聞こえたかのように、アオが不思議な行動を取り始めた。


 大きく口を開けると、水の魔力を操り渦巻いた海水を呑み込み始めたのだ。

 

 すごい勢いで呑み続けている。


 

「あんなに飲んでも、身体が膨らまないのはおかしいよね」



 マリーの疑問にそれもそうだと目を配ると、アオのお腹の辺りから水が吹き出しているように見える。



「あ! あそこから水が出てるのです」


「本当だ! 産まれた時からあったとは考えにくいよね? 環境に適応して身体構造を変えたのかな?」



 球体の魔力空間を近くに移動させて観察する。かなりの激しい海流が生み出されているが、私の魔力空間はこれぐらいは平気だ。


 お腹のエラのような穴たちから、透明度の高い海水が流れ出している。



「酸ではないわね」



 マリーとの生きもの観察談義が始まる。



「これを見せてくれるってことは、ああやって海水から栄養を摂ってるってことだよね?」


「なるほーなのです。でも、酸に栄養なんてあるのです?」


「いくつか仮説は立てられるよ。酸を浄化する際に出るエネルギーを栄養にしているとか、もともと産まれた時から莫大なエネルギーを持っていて、しばらく食事からエネルギーを摂らなくてもいいとか。何にせよ、興味深い生態だよね」


「出たな。生きものオタクたちが」



 マリーと早口で考察していると、リオンがボソリと呟く。


 マリーがリオンを睨んだので、真似をしておいた。


 しばらくすると、満足げなアオがこちらを向く。


 

『わたし これが しょくじ』



 どうやらこうやって栄養を摂取しているようで、アオがこの酸の海を浄化してくれているのは間違いなさそうだ。

 

 えらいぞ! アオ!


 今のが一食分だとしたら、この数ヶ月で小さな湖ぐらいなら酸を食べ尽くしてしまったかもしれない。


 この大海の酸を食べ尽くすには、長い年月がかかりそうだが。

 

 三人でアオを誉めていると、機嫌を良くしたアオ。



『これも みて!』



 海上に向かうアオについていく。


 海面に出ると、アオは魔力を操りだす。


 魔法陣の編み方から分かるが、雷を呼んでいるようだ。


 シンプルな魔法陣だが、独学で考え出したとしたらすごいのかもしれない。



「風と水を混ぜた力だね」


「え!? マリー? 星の力の動きが見えるのか? いや、そんなわけないよな。そうだよな。は、ははっ」



 驚くリオンに、マリーがニンマリとしている。


 リオン! マリーが喜んでいるぞ!

 もっと褒めるのです!


 しかし、リオンはアオの魔法がどう発動するのかを注視している!


 リオンのバカ!

 チャンスが逃げていくのです!


 そして、アオの魔力が発せられ、海に雷が落ち始める。


 あ! やばいかも。


 リオンに構っている暇はなさそうだ。


 それを見て、魔力空間にいる私たちが感電しないように急いで対策を施す。


 少しだけ痺れたが、間に合った。


 リオンが不思議な顔をしているが、私が何かしたことには気付いてないみたいだ。


 さて、アオは何をしたいのだろう?


 落雷した海面から水蒸気が上がっている。


 広範囲に及ぶ、落雷が終わると周囲は霧のように湯気が立ち込めていた。



「もしかして、呼吸に適した空気が生まれてる? こんな原理は知らなかったけど」


「生きものが過ごせる空気が生まれたのです?」


「そう……みたいね」


「アオ! すごいのです! お手柄なのです!」



 このあと、アオをめちゃくちゃ褒めた。


 おかげで、アオはご満悦だ。


 ふと、この星を覆う分厚い雲を消し飛ばした時、とびきりの雷が落ちたことがあったことを思い出す。


 あの時も、大量の空気が生まれてたのかもしれない。


 アオもどこかでそれを見ていたのだろうか。


 ちょっとした運命みたいなものを感じながら、考察は進む。


 そして、マリーとある程度の検討を終える頃には昼前になっていた。



「じゃあ、酸の海から生まれたこの空気を、酸素って呼ぶのです」



 酸素。

 何だかしっくりくる。


 こうして、なんだか既視感のある言葉ができたのであった。




 雲が空を覆っている。


 しかし、以前の分厚い雲とは違い、そのうちにいなくなるであろう雲たちだ。


 雨の降る場所を避け、海岸の上空に浮島を浮かばせている。


 そして、浮島から離れ空に浮かぶ私たち。


 大地と海が接する場所を観察中だ。


 酸の海が大地に触れて、灰色や黄色、少し赤い煙をあげている。


 

「きっと、星の環境に必要な空気が生まれてると思うよ。正直に言うと、こういうのは私の専門分野外だから分からないけどね」


「詳しい人がいるのです?」


「すごいのがいるね。ま、嫌でもそのうち会うことになるよ」



 どんな人かなと興味がある。


 そのうち会えるなら、早く会いたいものなのです。


 

「おい。これ、毒ガスだぞ。もっと離れた方がいいぜ」



 毒ガスと言いながら、みんなに緊張感はない。


 この程度の毒では、私たちに影響などないのを分かっているからだ。


 嗅覚の鋭いアオだけは臭いと言って、少し遠くで私たちを見守っているが。


 

「植物はどうしよっか? 最初は、海の中から始めるのが一般的だけどさぁ」


「海と陸、どっちにも創ってみたいのです」


「ティアの好きなようにしていいと思うよ」



 マリーの許可も得れたし、さっそく植物を生み出してみることにする。


 生きものの創造に比べれば、植物の創造は簡単だ。


 それは、単純に生体構造が生きものほど複雑ではなく、魔法陣の書き込みが少ないという理由もある。


 環境に合わなければ、すぐに死滅してしまうし、合いすぎても地上の栄養を吸い尽くしてしまう。


 しかし、そんな植物に進化してしまっても、別に心配はない。


 そういう場合は、その植物の天敵を創り出してしまえばいいし、他にも対応策はいくつもある。


 いきなり最初から、完璧な環境を作ることなどはできはしない。


 ひとつ生み出せば問題が出てきて、それを対処すると、また何か問題が出てくる。


 それを繰り返して、星は自分の星の環境を整えていく。


 全てマリーの授業で教わったことだ。



「大丈夫だよ。植生なんかは、生きものに夢中になってるうちに、勝手に上手くいっているもんなんだから」

 


 マリーの声かけに笑い返しはしたが、それでも初めての体験で不安である。


 星の力とやらを操ったことがないのも気になる。


 マリーの話では、魔法陣と詠唱さえ間違えなければ発動できるから問題はないとのことだが。


 さて、どんな植物を創造するかは、もうすでに決めてある。

 

 マリーの星で見た木のようなのが良い。


 それも果実のできる木だ。


 今回は海底にひとつ、陸上にひとつの二本の木を植えようと思っている。


 

「え? たった二本だけ? もっとどーん! と、たくさん創造しないの?」



 マリーは首を傾げていたが、好きにしていいと言ったのはマリーだ。


 一気にたくさん創造するということを思いつかなかったことはバレないように、自信のある顔をしておこう。


 さて、場所はどこにしようか。


 まずは陸上の木を、先に創ろう。



「木を植えても良さそうな場所を探すのです!」



 こうして、水の浮島に戻った私たちは、また大地の探検を再開するのであった。


 


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