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第36話 魔力のすすめ




「意識を分ける方法? どういう意味かは分からんが、聞いたことはないな」



 ユタなら知っているかと思ったがダメみたいだ。


 詳しく教えてくれと食いついてきたので、簡単に説明してみたが、そもそも意識を複数持つということが理解できないようだ。


 言葉での説明も上手くいかず、お互いに混乱しただけで、この話は広がりはしなかった。



 見渡す限りの草原。地平線に見える山々。


 ユタとの授業では、いつもここに来る。


 私の星を探すが、昼間には視認できない。


 アオは元気にやっているだろうか。


 加護の力で繋がっている私には、アオが生きているということと、どこに居るのかだけは分かる。


 次に会う時までには、危険を予見できる能力ぐらいは付与できるようになっておきたい。


 マリーは何かの揉め事が起こったらしく、どこかに出かけて行ってしまった。


 マリーがいないと少し寂しい。

 でも、がんばるのです。



 今日はユタの魔力の授業だ。


 ユタのいう初歩の力の使い方は、全て使いこなせるようになったと思う。


 例えば、光を作ること。


 夜などの暗闇で視界を確保するためなどに便利な方法だ。


 これは、単純に魔力を集めて『照らす光を』などと詠唱をして光を作る。


 魔力を扱えるものなら、大抵は使用できる力だ。


 足元を照らす程度の光量から、広い範囲をまるで昼のように明るくするほどまで、発動者の力量によって差はある。


 手をかざした方向を照らす。光の球にして空中に浮かばせて光源とする。簡単に考えつくような発動方法はいくつかあるようだが。


 だが、それだけだ。


 ただ光を作るだけで、輝き方を変えたり、少ない魔力で光量を増やしたりするなどの工夫は実践した例がないという。


 以前に暗い海の中で、水の魔力をレンズのようにして光量を高めたことがある。


 あれは、あの時に思いついたなかで最も効率の良い光の作り方であって、改めて考えると他にもいくつかアイデアは思いつく。


 水ではなく、火を使うとしたら単純に火の明るさを保つ方法を考えるし、風を使うとしたら雷の光を生み出せないかも実験してみたい。土で光を作る方法はすぐには思いつかないが、きっと土でも光源を作り出すことはできると思う。


 初歩と呼ばれる光を作るということも、追求すると方法はたくさんあると思う。

 

 しかし、この世界ではそういった力の使い方を考えるものは少ないという。


 まず、魔力を扱えるものが、星たちと一部の生きものたちだけであるということ。


 しかも、魔力の流れを視認できるものはかなり少なく、魔力を感覚で感じられるの程度というのが一般的であるとのことだ。


 魔力が見えないものにとっては、魔力の操作は簡単ではなく、私が考えるような使用方法はできないし、考えも及ばないだろうとのことだった。


 魔力を使えるものはそれだけで一目置かれる存在だそうだ。


 初歩の魔力は他にもある。

 

 ほとんどは攻撃的な使い方ばかりで、火水風土はその性質の力を相手に向けて扱う感じだ。


 火の魔力を例に挙げると、初歩は小さな火の球で、その後は段階的に熱や大きさが強力になっていく感じだ。


 単純に火の魔力をたくさん集めれば強くなると考えていいだろう。確かに、強い力になればコントロールは難しいかも知れない。


 しかし、真似して試してみたが、暴力的な使い方はあまり好きになれなかった。


 それよりも、熱くない火を作ったり、なかなか消えない火を作るといったことが、次の可能性に繋がる気がする。



「ティアの考えは面白いな。確かに、そんな力を扱えていたら……など、思いつく過去がある」



 ユタはそんな私の考えを聞くと、しばしば動きが止まることがある。


 ユタも魔力の操作はかなり上手いと思う。


 私が思いついたままに魔力を操作し始めると、再現しようと真似をする。


 操作が簡単なものは、私より上手く綺麗に再現することもあった。


 この数ヶ月で、ユタの魔力の扱い方は段違いに向上したと思う。


 もちろん、私もだが。


 今までに、魔力をこんな風に扱うという発想が少なかったのだろう。


 今までの魔力は敵対する相手を制するためにあると考えられていた価値観と歴史が問題だったのかなと予想する。


 しかし、そんな魔力の可能性を研究しているものもいるみたいだ。



「その人には会えないのです?」


「もう少し待ってくれ。ティアの力の使い方が広まると、星たちの均衡が壊れて、争いの火種となる可能性が高すぎるのだ。星たちも一枚岩ではない、長い歴史の中で恨みを持ち、互いに憎しみ合っているものも多い。そのあたりを汲んでくれると助かる」


 

 ユタは悲しそうな表情でそう話す。


 ユタのことは好きだ。

 

 できる限りの協力はしようと思っている。



「じゃあ、その時をゆっくり待つのです」



 そう答えると、ユタは申し訳なさそうに頭を撫でてくれた。



 五大元素と呼ばれる、宇宙に漂う魔力。


 これは謎に満ちた力だ。


 ユタたちにもよく分かっていないという。


 これも星の力と呼ばれているが、身体に宿る魔力も火水風土も星の力と呼ばれている。


 それぞれには全く違う性質があるので、別名称で呼んだ方がいいのではと提案したが、慣れ親しんだ呼称を変えるのには時間がかかるということであった。


 ちなみに、最近のユタは力のことを魔力と呼ぶことも増えてきた。


 そんな時は、ユタが私に影響を受けているのを実感できて少し嬉しい。



 そして、五大元素のひとつ、宇宙に漂う力は、他の四元素とは一線を画した強大な力を秘めており、扱うことは大きな危険を伴うらしい。


 私も、この力からは怖いというか、畏れ多いような別格の雰囲気を感じていた。


 この力は星だけが扱うことができるようだ。


 生きものが不用意に干渉すると、身を滅ぼしてしまうらしい。


 この力が原因で、過去に何度も事件があったとケイローの話で聞いたこともある。


 転移の力は、この宙域に漂う力で実現させている。光速に近い速度で移動する方法らしいが、詳しい話はまだ教えてもらっていない。


 ユタはこの力を操れるという。


 見せてほしいとお願いしたら、地上では難しいとのことだった。


 宇宙に出ての授業の時に機会があれば、と返事をくれたのは覚えておこう。



 また、魔力には不思議な性質もある。


 これは目には見えないぐらいの、とても小さな世界で起こっている現象で説明は難しいのだが、なんというか……



「愛と憎しみ、みたいな感じ?」


「いい例えだ。正と負の関係はそんな感じだな」


 

 魔力の性質を正方向で集めると光ができる。負の方向で集めると、暗闇ができる。


 そんな感じだ。


 これもまだよく分からない部分が多いので、これから色々教えてもらうのが楽しみだ。


 魔力の授業は、発見が多くて楽しい。


 あっという間に時間が過ぎていくのだ。


 今日中に、加護の力に付加能力をつけれるようにしたい。



「頑張るのです!」


「元気があってよろしい!」



 ユタに呼ばれて、翼を広げて飛び立つ。

 

 草原の花たちが、そんなティアを見送っている。




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