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第31話 生命とは




 マリーに連れられ訪れた砂浜にて。


 繰り返し押し寄せる波、波打ち際に海藻や流木、貝殻が見える。


 

「大きな貝殻だよ。ほら、ティアが入れそうなくらいだね」



 マリーが見せてきたのは、渦を巻いた白い貝殻。


 でかい。


 本当に中に入れそうだ。


 地面に置かれたその貝殻、なんとなく入ってみた。


 穴からぴょこんと顔だけを出してみる。


 きっと滑稽な姿だろう。


 マリーは声を上げて笑ってくれた。


 誰かを笑わせるということは嬉しい。


 これまでも、私を見て喜んでくれることは何度かあった。


 きっと、私のような小さな身体の生きものは人気があるのだろう。

 もしも、マリーが私より小さかったらかわいすぎるのです。

 気持ちはなんとなく分かるのです。

 これからは外見だけじゃなく、行動でもサプライズを提供したいのです。


 そんなことを考えていると、マリーが指を指した。



「あ! あれだよ! 今、ティアが入ってる貝殻はあれだよ!」



 指差された方を見ると、貝殻からウネウネと動く生きものが身体を半分出している。


 しかも、足とかいっぱいあって、めちゃくちゃ動いてる。



「ぎゃあぁぁあ!」



 驚くべき速さで貝殻から飛び出た。


 くっ! やられたっ!

 まさかあんな気味の悪い生きものが、この綺麗な貝殻の持ち主だったなんて!

 逆にサプライズを提供されたのです!


 マリーは転げ回って笑っている。


 気味の悪い生きものは、ティアより少し大きい。


 波打ち際に落ちている海藻を食べているようだ。


 突然、その生きもの目がけて、海からさらに大きな生きものが飛び出してきた。


 気味の悪い生きものは噛みつかれ、そのまま海へ引きづり込まれてしまった。


 目を丸くしたマリーと目が合う。


 

「弱肉強食ってやつだよ。よし、今の生きものを追っかけて行こう! ティアはしばらく潜っても大丈夫? 息を止めてね」


 

 頷いて、肩に乗ると、二人は息を吸い込み海へ飛び込む。


 手や足で水をかくこともなくマリーは海の中をスイスイと進んでいく。


 空を飛ぶ力と同じようなものだろうか。


 先ほどの気味の悪い生きものを捕まえた生きものを発見する。


 それは、マリーぐらいの大きさの魚で大きな口と鋭い牙を持っている。


 海底でバリバリと音を立てて食事中だ。


 あんな気味の悪いやつを美味そうに食べている。

 

 周りに魚たちが集まってきた。


 サイズはバラバラだが、あの魚より大きな個体は見当たらない。


 集まって来た魚は、流されていく食べこぼしの肉片を食べている。


 食べ残しを巡って、魚たちの競争が始まった。


 マリーが指差していく方を見ると、たくさんの生きものがいた。


 中には海底や海藻に擬態して見つけづらいものも。


 近寄ろうとすると、逃げていくものもいれば、呑気に近づいてくる魚もいる。


 海の中は、生命にあふれていた。


 マリーに促され、空気の補給に浮上する。



「どう?」


「生きものたちが、たくさんいるのです! すごいのです!」


「自然の生きものは、最初は海から生まれて進化していくよ。後で何に気づいた聞くから、いろいろ観察してみてね。じゃ、さっきの魚を追いかけてみよう」


 

 元気よく応えて、また海中に戻る。


 目を光らせながら観察すると、今度はティアの星の海との違いにいろいろ気づくことができた。


 海中には、ポコポコと海底から空気が生まれている。


 いや、海底や海藻から生まれる空気や、生きもの動きから空気で出ていることもある。


 よく見ると、とても小さな空気の泡はそこら中にあり、泡は海流に流されながらも海上へ上がっていく。


 泡だけでなく、小さな生きものたちにも気づくことができた。


 半透明のとても小さな生きものたち、小さなティアでも見つけることが難しい大きさの生きものもいる。


 ふいに現れた小魚が、その小さな生きものを飲み込んで通り過ぎていった。


 ここにも、マリーの言った弱肉強食が起こっている。


 先ほどの気味の悪い生きものも捕食した魚がゆっくりと泳ぎ出した。


 海底をのんびりと進むその魚。


 沖の方へ向かうようだ。


 少し付いていったが、特に何も起こらない。


 マリーは少し悲しい顔をして、その魚を魔力で捉えて締め殺してしまった。


 マリーは死んでしまったその魚を手に取り海上へ。


 マリーの行動が分からず、動揺してしまう。



「この魚をもっと大きな魚が食べないかなって期待したけど、ダメだったよ。ま、自然は思い通りにならないってことだね」



 なんで殺しちゃったのです?

 理由なく干渉してはいけなかったのでは?

 あの魚を食べるような生きものもいるってことを見せようとしたのです?

 分からないのです。

 でも、弱肉強食という言葉はよく理解できたのです。


 砂浜まで戻って来た。


 濡れた服を気に止めることもなく、向かい合って座った。


 

「何か知りたいことは見つけたかな?」


「なんでこの魚を殺しちゃったのです?」


「かわいそうだけど、私たちの食事になってもらうんだよ。この星においては、弱肉強食の頂点に立つのは私たち。私たちも食事を摂らなければ、次第に弱っていく。これは生きていくために必要なことだよ」



 マリーは、食事の重要性を教えてくれた。


 生きものを仕留める時は、できる限り苦痛を与えないようにするそうだ。


 あの優しいマリーが、残酷な行いをしたように感じて不安になってしまったが、説明を聞くと納得できた。



「他に気づいたことはある?」


「うん! とても小さな生きものを見つけたのです。それを食べる小魚も。きっとその小魚もまたもっと強い生きものに食べられてしまう?」


「そうだよ。それが弱肉強食だね。どの世界でも起こっている自然な現象だよ」


「生きものは、生きものを食べると進化できるのです?」


「良い質問だね。でも、進化とはちょっと違うかな」



 マリーによると、進化の話はもう少し後で教える予定だったそうで、いきなりこの質問が来たことに驚いたそうだ。


 驚いてもらえて光栄なのです。


 まずは、生きものの生態についての話が続く。


 生きものには必ず役割があるそうだ。


 無駄な存在などないという。


 それは、この星の環境を整えたり、生態を整えたり。この世界の自然は、生きものたちの絶妙なバランスで成り立っているらしい。


 生きものたちは、この弱肉強食の世界で常に死と隣り合わせだという。



「生きものが死なない、争わない世界は作れないのです?」



 マリーは微笑んで、頭を撫でてくれる。



「ティアは優しいね。そんな世界ができたらいいよね。でも、安全で平和な世界の生きものは堕落してしまうよ。堕落してしまった生きものは哀しいことばかりしてしまう。例えば、自分が楽しむだけのために誰かを傷つけたりね」



 マリーは寂しそうだ。


 きっと過去に何かあったのだろう。


 悲しい顔をするマリーを見ていたくないので、その話には触れないことにした。


 生きものの話は続いた。


 気持ちのいい風が吹き、陽射しも心地良い。いつの間にか、服が乾いてきた。



「さぁ、食事にしようか!」



 話の区切りで食事をとることにした。


 さっきの魚を食べるみたいだ。


 マリーの指示に従って、落ちていた木を拾い集める。


 マリーもテキパキと動いている。


 こんなこともできるなんてと、マリーをまた少し見直した。


 大きな葉っぱに包まれたさっきの魚の蒸し焼きが出来上がった。


 湯気の上がる魚から、とてもいい匂いがする。



「食べる前に、この魚の命に感謝するのがいいかもね」



 なぜか分からないが、手を合わせていた。



「いただきます」



 自然に口に出てきたその言葉。



「それ、いいね」



 マリーも真似してくれた。

 

 魚は美味しかった。


 あの魚が、今日の私の力となる。


 この世界は残酷だけど、素敵なこともたくさんある。


 今までの食事は騒がしかったティア。


 それが、今日の食事は黙々と食べたのであった。


 マリーは私を見て、嬉しそうに微笑むのであった。




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