第29話 ケイローの問題
引き続き、神々の学校シロモナリエ、とある部屋にて。
昼食も済んで、午後もケイローによる星についての授業だ。
「本日学んだことについて、最後に簡単な質問をします。期待していますよ」
「簡単な問題なんて出してこないよ。いっつも難しかったんだから」
マリーがこっそり教えてくれた。
午前中に教わったことは全て覚えていると思う。
正解して、マリーを驚かしてやろうと決めた。
ケイローの話は、まだ基礎中の基礎ばかりだという。
また、星についての話が始まった。
星にとって、星の力という力はとても重要なものだという。
星の力を好き放題に使い、放っておくと、星の力を使い果たしてしまうことがあるらしい。
星の力が減ってしまうと、さまざまな問題が起こるという。
降臨の身体を保てなくなったり、生きものや植物が住めない星になったり、はぐれ星になったりするらしい。
星自体が消滅してしまうこともあるという。
それでは、どうするのかというと、星を育てて星の力を蓄えるのだそうだ。
星を育てると生きものが住める星になるという。
生きもの誕生は最初は星たちの導きを必要とするが、ある程度の進化を遂げると勝手に増えていくらしい。
そして、生きものの命が終わる時に、星の力を星へ還元してくれるという。
他にも、生きものたちの祈りによって星の力を集めたり、植物を媒体に星の力を回収するなど、いくつかの方法があるというが、生きものたちの死をもって星の力を集めるのが最も調和がとれていて良いという。
生きものは限られた命だという。
星たちにとっては、一瞬に感じられるほど短い命。
「ケイローもそうなのです?」
「私はユタ様から特別に継承の力を頂いております。この身体は千年ほどしか持ちませんが、私の子供に、私の記憶や力を継承することが出来るのですよ。そうやって、私は永い時をユタ様に仕えているのです」
なんだか悲しそうな顔をするケイロー。
「永い時を生きるというのは、良いことばかりではありません。むしろ、辛く哀しいことの方が多いでしょう。生まれたばかりのティア様にも、すぐに分かることとなるでしょう」
「ケイローは永く生きることが辛いのです?」
「辛いこともありますが、ユタ様を支える役割は誰かが担わなければなりません。永い時を経ると、誰にでも心変わりが起こります。ユタ様を愛していたものでさえ攻撃する側になることもあります。星たちでさえ、そうなのです。ユタ様を傷つけるわけにはいきません。この役割は、ユタ様の生み出した私たちにしかできないと考えています」
ケイローは優しい言葉で答えてくれたが、きっといろんなことがあったのだろう。
「私はユタ様に仕えることを誇りに思っていますよ」
ケイローは優しく微笑む。
きっと心からの本心だろうと、素直に信じられる気がした。
星の死についての話に変わる。
星にとっても、死は必ず訪れるのだという。
星にとっての死とは、星の力をなくすことだという。
星の力をなくした星は、静かに朽ちていくこともあれば、爆発して星くずになることもあるという。
いずれも、この無限ともいえる宇宙に漂うだけの存在になるそうだ。
他にも、星同士の衝突、生きものたちの暴走などによる星自体の破壊による死などもあると教わった。
この辺りは、また詳しく教えてくれるらしいので、簡単な説明のみで話は進んでいく。
「この身体は死んだら、どうなるのです?」
気になっていた質問をしてみた。
この身体で死んだら、星ごと消えてしまうのかと不安があったのだ。
「降臨した姿は死ぬことはありませんよ。まさに不老不死といえるほど、永い時を星と運命を共にするのです」
「ほ? たとえば、潰されたり燃えたりして身体がめちゃくちゃになったらどうなるのです?」
「降臨して受肉した身体は、たとえ身体そのものが無くなってしまっても復活します。大きな怪我などは、自然に治ってしまうでしょう」
それを聞いて、安心をする。
なにか失敗をしてしまっても、こんな楽しい日々を続けることができるからだ。
ケイローが少し怖い口調になった。
「それは素晴らしいことなどではないのですよ。痛みはあるのです。例えば、燃え盛る火山に落ちたとしましょう。身体は再生を繰り返し、燃やされ続けるのです。自力で脱出するか、誰かに助けてもらうまで」
なんて恐い話を!
想像するだけで、背筋がゾッとした。
「病気にも気をつけなければなりません。治療法が見つかるまでは、苦しい思いをしますよ。なかには、自力で克服してしまうこともあるのですが」
ケイローは、分かりやすく気をつけることを例を挙げて教えてくれる。
「きっとティア様はユタ様の大切な人になると思います。しかし、それとは関係なく、私もティア様に期待をしています。この非情な世界に救いを与えてくださる存在になるではないかと。ティア様に必要な知識は全てお伝えいたしましょう」
ケイローはいい人だ。
表情からは感情を読み取りにくいが、それでも、私に分かりやすいように真剣な表情を作ってくれているのが分かる。
でも、私はそんな立派な存在なのだろうか。
期待を受けても、どうしていいか分からない。
「ティアは自分らしく生きていいんだよ。周りのことなんて、余裕がある時に気を遣う程度でいいんだよ。私がいるから大丈夫。好きに生きなさい」
マリーか声をかけてくれた。
困っていたのが分かったのだろうか。
「まぁ、そんな私もティアにはとっても期待してるんだけどね!」
マリーの笑顔はすてきだ。
マリーのためになるなら、なんでも頑張れる気がする。
いや、マリーだけではない。
良くしてくれたユタやケイロー、オルローフやドイルのためにも頑張ろうと決めた。
この世界には、まだまだ知らないことが多すぎる。
もっとたくさんの知識を身につけなければ。
その後も、日が暮れるまでケイローの話を一生懸命に聞いた。
それほど、覚えるのが難しい話はなかったと思う。
全て、ティア自身に関係する重要な話だった。
「それでは、最後に今日の話から問題を出しますね」
ケイローが壇上の黒板を消し終わり、こちらを向いてにこりと微笑む。
マリーが嫌な顔をしていたやつだ。
絶対、正解してやるのです!
「星の歴史は、何によって進化してきたのでしょう?」
ほ? そんな話あったのです?
今日はたくさんのことを教えてもらったから、全然思い出せないのです。
悩んでいると、ケイローのカウントダウンか始まった。
うわぁ! 急かされると慌てちゃうのです!
ティアは思考を加速させて、一瞬の間にたくさんのことを思い出す。
午前中の話だったような。
たしか、星の歴史の話をしていたはず。
あ! そうだ!
星は記憶を持って生まれるって話だったのです!
身体を動かす感覚と言葉……
思い出したのです!
ケイローのカウントダウンが終わる。
「さぁ、答えてください」
顔を上げて、指を立てる。
「星は記憶を持って生まれてきて、その新しい知識によって、歴史は進化してきたのです!」
ケイローは微笑みながら拍手を始めた。
「その通りです。よく覚えてくれましたね」
「やったー! マリー! 見てたのです!?」
喜びながら、飛び回ってマリーにしがみつく。
「さすがティア! やるじゃない!」
マリーが頭を撫でてくれる。
褒められて、気分がいいのです。
今日もとってもいい日だったのです。
私がなんなのかは全然分からないけど、誰かの役に立てるなら立ちたいのです!
「明日からも、頑張るのです!」
ティアの意気込みを聞いて、ケイローもマリーも優しく頷いてくれたのであった。




