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第27話 魔法陣




 引き続き、広大な草原にて。


 

「そうだな。力を使うには手順があるな。まずはどんな力を使うか決めて、身体に宿る力で魔法陣を描き、その魔法陣が星の力へ命令を出して力を操るといったものだな」


「言葉にするのはどんな意味があるのです?」


「詠唱のことだな? 力の発現のきっかけだな。……言葉に出すと上手くいくんだ。確かに、慣習で詠唱していたが、深く理解はできていないかもしれない。ケイロー、どう思う?」


「詠唱なしでは、力を使えないのが当たり前だと思っておりました」


「だろうな。星の力は神秘の力。解き明かせるわけもないと思っていた。もしかしたら、基礎理論すら見直す必要があるのかも知れんな」



 私たちは、力についての意見交換をしている。


 そう。すでに授業ではなく、意見交換といった方がいいだろう。



「先ほど、平面の魔法陣と言ったな? どういう意味なんだ?」


「力の発動を簡単にするために、陣を描いてるのだと思うけど、普通の魔法陣だと描ける内容が限られてくるのです?」


「そうだな。一人の力は限界があるかもな。大きな力の発動は複数人がかりで行ったりもするがな。だが、どういうことだ?」



 ユタの質問だが、マリーとケイローも真剣に話を聞いている。


 立体の魔法陣を説明しようとしたが、どう説明すれば良いだろうと悩む。


 地面の砂地に適当な陣を描いてみることにした。


 

「水の力だな」



 描いた模様を見てユタが即答する。


 水の塊を生み出す魔法陣を描いた。


 これに勢いよく飛ばすとか、壁のように使うだとか模様を付け加えて、水の塊の使用方法を組み込んで陣を描く。


 しかし、複雑な使用方法となると、平面の陣では、大きくなりすぎて発動するまでに時間がかかるし、途中で使用方法を変えたい時などは、また最初から描き直すほうが早いほど修正に手間取る。


 

「複雑な力の発動は身体が持たないぞ? 狂ってしまうぐらいならまだしも、暴走という危険な状態になるのはダメだ。で、平面の魔法陣というのは何だ?」



 思いつくまま話していると、ユタから返答があった。


 ユタたちが目を輝かせて、ティアに詰め寄る。


 

「ユタたちが使っている力が、平面の魔法陣なのです」


「やはり! ティアの魔法陣は平面ではないな! どうやってるんだ!?」



 ユタのテンションが高くなった。


 

「私は立体の魔法陣を描くのです」



 三人とも頭にハテナがついた顔をした。


 平面の魔法陣とは違い、立体で魔法陣を描くと自由度が段違いに広がる。


 平面では魔力の流れが交差しないようにしなければならないことが多い。また、魔力の流れが途切れないように描かないと無駄な力を使ってしまう。


 水の塊の形を変えたり、色を変えたり、硬さを変えたり、温度を変えたり、数を増やしたりと見本を示しながら説明してみた。


 ティアの話に熱心に聞き入っていた三人は、次第にため息をつき始めた。



「ティアは感覚派の天才だよね。真似できる気がしないよ」



 マリーが苦笑いしている。



「あれ? 分かりづらかったのです?」


「いや。まず、ティアみたいに力を繊細に操ることが普通はできないんだよ。力の発現には集中力が必要だからね。複雑な陣を作ろうと思っても、途中で維持できなくなっちゃうよ」


「そうなのですか」



 マリーがユタとケイローを見て、また笑う。


 ユタとケイローも、真剣な表情で立体の魔法陣を描こうとしているが上手くはいかない。


 魔法陣を立体で描くのはかなり難しいようだ。


 しかし、新しい情報も手に入れられた。


 平面の魔法陣を重ねて、より複雑な力を使うことは出来るそうだ。


 層の魔法陣と呼んだら、その呼び名はいいなと褒められた。


 しかし、層の魔法陣は扱いが難しいらしく、ユタでも七層が限界らしい。


 見せてほしいとお願いしたら、星を壊す気かと言われてしまった。


 四層まで重ねた力を見せてもらったが、単純により威力の強い力というだけだった。


 木を燃やす程度の炎が、どでかくなって森を燃やすほどの炎になるといった具合だ。


 炎を操るユタは得意げな顔をしていたので、ちゃんと褒めておいた。


 同時発動も見せてもらったが、これも同じようなものだ。


 ここで使われる魔力は、攻撃的なものばかりのようだ。


 生活を便利にするような使い方はほとんどされないらしい。


 一体、何と戦う必要があるのです?


 そんなことが疑問に浮かぶが、次々とくる質問に受け答えするうちに忘れてしまった。



「ティアも勉強になった?」


「もちろんなのです!」



 三人の魔力の扱い方には、個々に個性があり、思いつかないような考えもいくつも見られた。


 素直に勉強になったと思うし、まだまだ知りたいことや試したいことができた。



「私は、まずは力の流れが見えるようにならなくちゃだよ。こういう力は資質によるみたいで、最初からできる人もいれば、いくら練習してもできない人もいるんだよね」



 マリーは遠い目をしている。


 資質かぁ。

 魔力の操り方の問題だと思うけど、何が足りないのです?


 自分が、魔力を見るにはどうしているのかを確認してみた。


 目にレンズのように魔力を宿して、魔力を見ているだけだ。


 魔法陣としても簡単な部類だと思う。


 しかし、マリーに説明してみても実現はできないようだ。


 イメージの問題かなと思い、水の魔力を操りゴーグルのような形の水のレンズを生み出してみた。魔力の流れを可視化できるレンズだ。


 その水のゴーグルを通して、マリーに魔力の流れを見てもらった。

 


「す、すごいよ! 力の流れが見える!」



 一度見えてしまうと、実現はそれほど難しくなかったようで、日が暮れる前にはマリーは自力で魔力の流れを見える力を手に入れていた。


 もちろん、ケイローもできるようになった。


 二人はホクホク顔だ。


 かわって、ユタの背中は少し寂しそうだ。

 

 元から、魔力の流れを見ることができていたユタは思うところがあったようだ。



「たった一日でこれだ。ティアの危険性が分かったか?」


「充分すぎるほど分かりましたよ。知識がばら撒かれるとしましたら、確実に面倒な事件が起こりますね」



 ユタとケイローは、マリーとティアが戯れているのを見ながら頭を抱えるのであった。




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